2021年2月23日 (火)

歌コラム的要約千夜一夜物語0007 カモシカを連れた老人の話

商人は仔牛を生け贄にしようとしましたが,仔牛が泣いているのを見て不憫に思い,この仔牛を仲間の牛のところに返すことにしました。

あくる日,私が家にいると牛飼いがやってきまして言いました。「私の娘は,ばあさんから子どものときに魔法を覚えています。きのう,仔牛を連れて帰ると娘が泣いたり笑ったりするんです。どうしたのかと娘にたずねると,娘は『こんな見も知らぬ男を私のところに連れてくるなんてどうしたの』って言うんです。娘の話では,この仔牛は旦那さまの息子だと言うではありませんか。継母(ままはは)の魔法によって母子が牛になったためだと。そして母は旦那様が知らずに殺してしまったと。それを聞いた私は腰を抜かすほど驚きました」

それを聞いた商人は,さっそく牛飼いの家に行って娘に会い,娘の話が本当のことなのかをたずねました。娘はもちろんだとうなづきました。商人は「おまえさんがこの仔牛の魔法を解いてくれるならば,私の牛でも財産でも差し上げよう」ともちかけました。

娘は「私は品物など欲しくはありません。でも条件が2つあります。ひとつは息子さんと結婚させてください。もうひとつは,息子さんに魔法をかけた女に魔法をかけて自由を奪うことです。そうしないと,私もあの女の恨みでひどい目にあうかも知れませんから」

商人がすぐに承知すると,この娘はコップを手にとって水を張り,呪文を唱えて仔牛にふりかけました。仔牛はぶるぶると身を震わせると,たちまち人間の姿になりました。商人はこの娘と息子を結婚させました。そしてこの娘は妻をこのカモシカに変えてしまったのです。

それからしばらくはこの娘と一緒に暮らしましたが,しばらくして亡くなりました。息子もインドへと旅立ちました。私は息子を探そうとこのカモシカを連れてあちこちの町をたずねるようになったのです。

老人の話を聞いた魔神は言いました。「これは実に不思議な話だ。商人の血の3分の1はお前にやろう」

すると,2匹の猟犬を連れた老人が進み出て言いました。「魔神さま,こんどは私があなた様にお話しします。さきほどの話しよりもずっと面白く,不思議だとお思いなら,私にもこの商人の血を3分の1いただけないでしょうか」 魔神は承諾しました。

2021年2月22日 (月)

半年ぶりの靴磨き 靴の中の先っぽにはりついていたものは?

私は通勤はスニーカーを履いていますが,会社内では革靴を履きます。仕事をしているときはスーツなので革靴が正装だと思っているのですが,通勤は歩きやすい方がいいと考えています。ニューヨーカーみたいでしょ。もっとも,雨天はゴム長靴を履くので,周りがドン引きしていますが。

土曜日に出勤した際,革靴を履いたまま自宅に戻りました。半年ぶりでしょうか。スニーカーは会社のロッカーにしまっています。

会社に靴を置いたままだと手入れができません。今日はお天気もよかったので,縁側で靴を磨くことにしました。

靴紐をはずし,クリームをたっぷりと塗り,靴磨き用のクロスでクリームをのばします。縫い目のあたりにクリームがたまるので,このへんは特にしっかりとのばします。

クリームの白さがなくなったら,ワックスを塗ります。いつもは瓶のワックスを使用するのですが,液体用のワックスが残っているので,こちらを使うことにしました。キャップを外すとスポンジから液体ワックスが染み出てくる仕組みです。簡単に塗ることができます。

ひととおり塗るとブラシで磨きます。最初のうちはブラシの線が見えますが,何度も磨くうちに線も消えていきます。太陽の光を受けて光沢がはっきりするようになりました。残念ながら私には鏡のようにピカピカにすることはできませんけど。

普段は靴磨きは玄関の暗いところでするのですが,今日は太陽の光が降り注ぎます。何気なく靴の中をのぞいてみると,肌色の靴底のはずが,先っぽのほうは幅1センチ,長さ5センチほど黒くなっています。「これってカビ?」を思って指で触ってみても,よく分かりません。爪でこすって見ました。すると出てきたのはなんと繊維くず。

おそらく,靴下の繊維が半年の間に少しずつたまっていったのでしょう。それが積もり積もってこうなったんでしょうね。びっくりです。月に一回は自宅に戻って靴を磨かないといけませんね。

春の日や庭に雀の砂あびて(上島鬼貫)

2021年2月21日 (日)

サンマは目黒に限る ギョウザは冷凍に限る

今夜の我が家の夕食はギョウザでした。しかも冷凍です。

結婚当初,今から20年ぐらい前のことですが,私たち夫婦はギョウザは手作りでした。ギョウザの皮(50枚)を買い,具材は白菜の千切りに塩を振って水気を取り,豚肉のミンチやニラ,すりおろしたニンニク,刻んだネギを混ぜ合わせ,一枚一枚丁寧に皮に包んで焼いていました。

そしてギョウザを焼くのもひと苦労。よく熱したフライパンで焼くのですが,こんがり焼けないことが多く,皮がフライパンにひっついて具材がこぼれることもしばしば。特に子どもができてからは2回に分けて焼くために,2回目はどうしても皮がフライパンにくっついて破れてしまう。ギョウザは大好きですが,家庭料理としては大変でした。

それが今では完全に冷凍食品オンリー。とにかく上手に焼ける。この一言に尽きます。油もひかなくていいし,蒸すためにお湯を差す必要もない。それで羽根つきギョウザが上手に焼けるとなると,手作りなんてやらなくなるはずです。

しかも美味しい。昔のぐちょぐちょした何が入っているか分からないような具材ではありませんし,値段も安い。12個で200円もしないわけですからね。手作りだと最低50個は作っていましたけど,コスパもほとんど差がありません。

先週,なじみの小料理屋でおばちゃんと話しをしたときに,冷凍ご飯の話になりました。

「私はね,土鍋で五合炊くのよ。そしてタッパーに入れて冷凍しておくの。タッパーは13個でちょうどいいみたい。そうしておけば,食事のときにいちいち炊飯をしなくていいでしょ」

「なるほど,一人暮らしだとそっちの方が経済的,合理的ですよね」

「しかも最近はレトルトもあるでしょう。レトルトも美味しいのよね。お店でご飯が足りなくなったときにレトルトを出すこともあるのよ。先日,ご飯がたりなくなって,お客さんにレトルトご飯を温めてだしたら,お客さんが「まあ,このご飯美味しいわ」っていうのよ。私はなんて言っていいのかわからなくなっちゃったわ」

冷凍食品の技術力はすごいですね。ファミリーレストランが繁盛するはずです。

注)タイトルの「サンマは目黒に限る」は,落語「目黒のサンマ」のオチです。知らない方は検索してみてください。

してもらうことの嬉(うれ)しさ君が作る四分半のボイルドエッグ(俵万智)

2021年2月14日 (日)

歌コラム的要約千夜一夜物語0006 カモシカを連れた老人の話

カモシカを連れた老人は,魔神に話を始めました。

『このカモシカは私の妻だったのです。30年一緒に暮らしておりましたが子を授かることができませんでした。そこで妾(めかけ)をとったところ,男の子を授かりました。

この子が15歳になったとき,私は都に出かける用事があり外出しました。ところが,妻は幼い頃から魔法や占いを習い覚えていて,その力で妾を牝牛(めうし)に,息子を仔牛(こうし)に変えて,牛飼いに売ってしまったのです。

私が旅から戻ると妻は「あんたの奴隷女は死んだよ。子どもは家を出て行ったさ。行き先なんか死なないよ」と説明し,私は悲しみに打ちひしがれました。

それから1年後のアラーのお祭りのときのこと。生け贄(いけにえ)用に牝牛を一頭買いました。私は包丁を手に取って牝牛の喉をかき切ろうとすると牝牛が涙をぽろぽろとこぼすではありませんか。可哀想で突っ立っていた私に対し,妻は「さっさと殺してしまえ。うまそうな牛じゃないか」と急(せ)かします。私はしかたなく召使いに牛を殺させました。するとどうでしょう。牛は皮を剥がすと脂肪も肉もありません。私はとても後悔しました。

次に,生け贄として仔牛が連れられてきました。仔牛は私を見るなり,甘えたり,涙を流したりするのです。可哀想になって召使いにこの仔牛を放すよう言いました。しかし妻が「何をやってるんだよ。さっさと殺して食べちまえよ」とけしかけます。

私は言い返しました。「お前のいうとおり,さっき牝牛を殺したが,骨と皮ばかりだったじゃないか。もう,おまえの言うことなんか聞きたくない」 しかし妻は「殺さないならあんたはもう私の夫じゃない,私はあなたの妻でもない,それでいいんだね」と脅します。私は仔牛を殺そうと思い,近づきました。』

(ここからはシェーラザッドとシャーリアル王の場面に戻ります)

ちょうどこのとき,夜が白々と明けてきました。シェーラザッドはシャーリアル王に「王様が私の命を助けてくだされば,明日の晩はもっと面白い話をすることができますわ」と許しを請いました。王は「後の話を聞くまで,断じてこの娘を殺したりはしない」とひとりごとをもらしました。

そうして二人は抱き合って眠り,日が高くなると王はベッドを抜け出して政務につきました。大臣は王がなぜ今日は次の娘を準備するように言わないのか不思議に思いましたが,黙っていました。こうしてシェーラザッドはセックスをして処女を捧げた最初の夜にシャーリアル王から殺されることなく,二日目の夜を迎えることができたのです。以後,シャーリアル王はシェーラザッドの話を夜ごとに聞き続けることになります。

(この後も物語ではシャーリアル王とシェーラザッドの会話がでてきますが,二日目からは省略します)

2021年2月13日 (土)

「ところさん大変ですよ」の大学生たち でも,みんながそうなることはない  

2月11日の夜,NHKの番組「ところさん大変でしょ」のテーマは「ワセメシが大変」。ワセメシとは早稲田大学周辺の飲食店のこと。コロナ騒ぎで大学がオンライン授業となったことで,大学周辺には大学生が来なくなり,飲食店はどこも閑古鳥が鳴く状態でした。

話題は更に広がり,ゴーストアパート(オンライン授業のため,アパートの賃貸借契約をしたものの上京せず,ずっと空室のまま),食料品の無料配布や野草採取(大学生のアルバイトが激減し,収入が大幅に減少した大学生たちが涙ぐましい努力をしている),就職活動の段ボール(オンライン面接で段ボールを背景の壁紙として使用)などなど。就職活動も採用数が少なくなって大変なんですね。

私の2人の娘も大学生。どちらも関西の大学に進学したので,それぞれアパートを借りて一人暮らしをしています。オンライン授業が始まっても,私は娘には自宅に戻らずにそのまま居続けるように言っておいたため,ゴーストアパートは我が家とは縁がありません。

アルバイトについても,コロナ不況の中,長女は飲食店でばりばり働いていて収入が年100万円を越えるかも知れないからと,税金のことを悩むぐらい。雇用調整助成金までもらっていますから正社員なみです。収入はもちろんですが,それより何よりまかないメシがいいんだとか。侍女は映画が好きだということで映画館でバイト。コロナ不況であっても採用してくれたようで,こちらも月7,8万円を稼ぐほど。どちらも「稼げるって楽しい」と口をそろえています。

就職活動は今のところ関係がありません。長女は2浪したことで今は大学2年生。次女は大学1年生ですから。もし長女が現役,あるいは1浪で大学に進学していたら,コロナ禍の影響ももろに受けて苦労したかも知れません。何が幸いするかわかりませんね。まさに「人間万事塞翁が馬」です。

「ところさんたいへんですよ」に出演していた大学生たちは,ほとんどが仕送りが0~5万円程度。生活費が大変です。だからこそバイトがないと暮らしていけないってことなんでしょうね。

それに比べると私の場合,娘たちの家賃は私が直接支払っています。それぞれ6万円前後。そして生活費として3万円を仕送りしています。1日1千円の食費で暮らし,遊ぶ金は自分で稼げという方針です。娘たちはバイトで貯めたお金で,友だちとあちこち旅行にでかけ,自由気ままな暮らしをエンジョイしています。

不思議ですね。娘のような遊び目的に稼ぐというならバイト先が見つかって,番組に出ていたまじめな苦学生がバイト先に苦労しているなんて。よほど運がいいのでしょう。

ダーウィンの進化論では「強い者が生き残るのではなく,環境によく適応できたものが生き残る」という結論になります。大学生の暮らしは生存競争ではありませんが,適応しているのは間違いないようです。青春の貴重な時期に,一人暮らしやアルバイトや友だちとの旅行などをできている娘たちはたのもしいですね。

角砂糖なめて終わってゆく春に二十二歳のシャツ脱ぎ捨てん(俵万智)

2021年2月11日 (木)

歌コラム的要約千夜一夜物語0005 商人と魔神の物語

いろいろな都市で商売をしている商人がいました。ある日のこと,馬に乗った商人は,とある木陰に腰を下ろして朝食をとりました。食べ終えると商人は残った棗(なつめ)の種を力任せに放り投げました。すると,雲を突くほどの巨大な魔神が現れました。

「こらっ,俺の息子を殺すとは許せない」「どうして私があなたの子どもを殺すことができるでしょうか」「お前が棗を食って捨てた種が息子の胸に当たり,その場で死んだのだ!」「わざとではありません。それはほんの過ちです。どうぞお許しください」「だからどうだというんだ。お前の命を寄こせ」

商人は魔神にこのようにお願いしました。「私には払わなくてはならない借金があります。また,財産について,妻や子どもたちに分け与えなくてはなりません。ひとまず家に帰らせてください。これらのことをやり終えたら,アラーに誓って必ずここに戻ってまいります」魔神は約束した上で,商人をはなしてやりました。

商人は自宅に戻ると,家族にこの出来事を話しました。そして借金を返済し,家族に財産を分け与えると再び,この場所に戻ってきました。自分の身に降りかかった不幸を嘆いていると,一頭のカモシカを連れた老人がやってきました。

「悪霊がでるところにどうして一人でいるのですか?」と老人がたずねると,商人はこれまでのいきさつを詳しく話しました。老人は驚いてこう言いました。「わたしはここにいて,あなたと魔神がどうなるのか,そのいきさつを見届けましょう」 老人は腰を下ろして,この商人に寄り添いました。

しばらくすると2匹の犬を連れた老人がやってきました。「おふたりとも,この悪霊がでる場所になぜいるのですか」と老人がたずねると,商人はこれまでのいきさつを詳しく話しました。

商人が話し終えるとき,今度は美しい栗毛のロバを連れた老人がやってきました。「どうしてこんな場所にいるのですか」と老人がたずねると,商人はこれまでのいきさつを詳しく話しました。

商人と3人の老人が腰を下ろしていると,すさまじい砂嵐が砂漠の真ん中でおこり,やがて雲が避けると,巨大な刀を手にした魔神が現れ,怒りの形相(ぎょうそう)で4人のところに近づいてきました。

「立て! お前の命をもらい受けるぞ」と魔神が大声で叫ぶと,商人は嘆き悲しみ,3人の老人はため息をつき,泣いたり,悲しんだりしました。やがてカモシカを連れた老人が魔神の前に進み出ると,魔神の手にキスをしてお願いしました。

「魔神さま! 私がこれから自分の身の上話と,このカモシカの話をいたします。あなたさまがこの話を不思議だとお思いならば,この商人の血の3分の1を私にいただけないでしょうか?」「いいとも。お前の話が素晴らしいと思ったら,こいつの血を3分の1与えよう」 そこで老人は話し始めました。

2021年2月 7日 (日)

これで野良猫をシャットアウト 敷地に野良猫を入れないためには

先月,仕事帰りにタクシーに乗ったときのことです。タクシーの運転手が,近所にアナグマが住んでいることを話し始めました。

「アナグマが近所に住み始めたんですけどね,しばらくしたら猫の姿を見なくなったんですよ。妻が言うにはアナグマは子猫を食べてしまうらしいですね。そうして子猫が次々と食べられていくので結果として猫がいなくなったらしいんですわ」

私の庭にもよく猫がやってきてウンコをしたり,ひなたぼっこをしたりしていました。ウンコをするとその匂いが臭いのなんの。掃除をしてもきりがありません。園芸店で猫の忌避剤をいろいろ買って試してみましたがすべて効果なし。

そうこうしているうちに,庭の地面がほじくられることが多くなりました。「最近は猫が地面を堀ったくっているんじゃないの」と妻がプリプリ怒っていましたが,実はタヌキの仕業(しわざ)と言うことがわかりました。

なんと玄関の床下に穴をほっていて,そこをすみかにしていたんです。妻が気づいて水を撒き,タヌキを追い出しました。あのときはタヌキが棲みついていたけれど,猫はよく来てウンコを垂れていったけどなあ。アナグマはタヌキとは違うのかしら。

ネットで猫の天敵を調べると,カラス,ヘビ,タヌキ,キツネ,サル,アライグマなどが出ていました。ここ鹿児島市で期待できるのはカラスぐらいでしょうか。タヌキはダメですね,少なくとも我が家では効果がありませんでした。

猫のウンコに業(ごう)を煮やした妻は,物理的に侵入させない作戦をとるようになりました。猫がよく通る植え込みのところに,園芸用の支柱(太い針金)を埋め込んだのです。高さは15センチ程度。それを10から20センチの間隔で,少々斜めにして地面にしっかりと差し込むのです。知らずに侵入してきた猫にこの支柱が刺さるという仕掛けです。

さらに私はもう一つ物理的な方法をとりました。それは猫の通り道である塀の隙間にテグスを張ったことです。猫が通れないように蜘蛛の巣のように隙間なくテグスを張ったのです。

それ以後,猫は我が家の敷地でウンコをしなくなりました。ただし,おとといは,猫が植え込みの支柱を避けながら,ゆっくりと進入しているところを目撃したので,妻の方策は完璧ではないようです。

でも,効果なしとまでは言えないでしょう。ゆっくりと近づいてくる猫を脅かすと,驚いた猫はその植え込みを走って逃げていきました。そのときはきっと支柱の先端が猫の体を傷つけたはず。ゆっくりと進入してきたということは,きっと以前に支柱の先がこの猫の体に突き刺さって痛い思いをしたのでしょう。それに懲りずにやってくるとは見上げた根性ですが。

となると,猫の侵入を防ぐ効果があったのはテグスということになるかも。我が家は玄関まわりの植え込みと塀の隙間の2カ所しか進入口がありません。人間が通るところは猫は通らないようで,私たちが歩く通路を猫が歩く姿は見たことがありません。となると植え込みと塀の隙間という非常に限られたルートだけ猫が通るということになりますね。そのひとつを塞(ふさ)いだことが,結果的に猫の侵入意欲とウンチをしたい気持ちを失わさせたようです。

テグスは猫には見えないから,気味が悪いんでしょうね。

殺しのあと 特に用事もないので お庭にでて草引きなどする(間武)

歌コラム的要約千夜一夜物語0004 牝牛(めうし)とロバの話

大臣は娘のシェーラザッドに話を続けました。

その日,ヘトヘトになったロバに牝牛がお礼と言った。「ロバよ,あなたの助言どおりしたおかげで今日はゆっくりと楽して過ごすことができたよ。ありがとう」

それを聞いたロバは腹立たしさにこう言った。「牝牛よ,このことを明日もやるなんて馬鹿げたことをしてはいけないよ。お前がまったく働かないから,ご主人様はお前を殺して肉を食べ,皮はなめしてしまおうと考えている。そうならないよう,明日は元気に餌を食べ,喜んで働くんだ。そうすれば殺されずにすむ」

それを聞いた牝牛はロバの助言を聞き入れ,お礼をいった。そしてその様子を大金持ちの男はじっと聞いていたんだ。

翌日のこと。ロバの助言に従って牝牛は餌をもりもり食べ,喜び勇んで畑で働き始めた。その様子をみていた大金持ちは笑い転げた。一緒にいた妻がその笑いようを不審に思って理由を尋ねたが,秘密を話してしまうと命がない大金持ちは拒否した。すると妻はなぜ理由をいわないのかと怒りだし,夫が死のうとかまわないから理由を教えろと迫った。

困り果てた大金持ちは一人,にわとり小屋で思案に暮れていると小屋にいた雄鶏が犬に話しかけていたのが聞こえてきた。

「まったくご主人は女房の扱い方を知らない。こういうときは枝を切ってきて,その枝で女房を叩きのめすんだ。あばら骨が折れようと皮が破れようと。そうすれば言うことを聞くようになるのに」

それを聞いた大金持ちは妻に理由を打ち明けるからと二人きりで部屋に入った。扉に鍵をかけると用意していた木の棒で妻を何度も叩いた。痛みに耐えられない妻は「もう理由を聞くことはありませんから許してください」と泣きついたので,大金持ちは妻を叩くのをやめた。以後,夫婦は円満に暮らしたとさ。

大臣はシェーラザッドに言った。「お前が私のいうことを聞かず,どうしてもシャーリアル王と結婚するというなら,この話の妻のように痛めつけるぞ」 しかし,シェーラザッドは大臣の意見を受け入れません。大臣は説得を諦めて,これまでの経緯を説明した上で,娘をシャーリアル王に差し出しました。

シャーリアル王はシェーラザッドを迎え入れ,服を脱がせてセックスをしようとするとシェーラザッドは涙を流してこう言いました。「私には妹が一人います。夜が明けると私はあなたに殺されません。どうか妹に別れを告げさせてください」

シャーリアル王はシェーラザッドの言葉を聞き入れ,妹のドウニャザッドを呼びました。ドゥニャザッドが参上するとベッドの近くに侍(はべ)らせ,裸になったシェーラザッドとセックスをして処女を奪いました。そしてそのまま3人は眠りにつきました。

夜中のこと。かねて打ち合わせをしていたとおり,妹のドゥニャザッドが姉のシェーラザッドに話しかけました。「ねえお姉さま。どうか楽しくて聞いたことのないお話をしてください」 たまたま眠れなかったシャーリアル王もこれを許し,シェーラザッドはドゥニャザッドに話を始めました。これが「千夜一夜物語」の最初の夜のできごとです。

2021年2月 6日 (土)

沈丁花の開花 あとちょっと早ければ立春前に咲くことになったのに

午後,外出するために妻と玄関をでると,妻が「沈丁花がようやく咲いたね」と教えてくれました。

我が家の沈丁花は,正月には赤紫の蕾(つぼみ)をつけて今にも咲きそうな気配を見せていました。ところが寒の戻りがあったりして,ずっと蕾のままの状態。1月中に咲くかと思っていましたが,沈丁花もばかではないですね。だいじょうぶかな,だいじょうぶかな,と用心しつつ,今朝開花したのでしょう。

沈丁花はいうまでもなく春の花。我が家では例年は3月中旬頃,春分の日あたりに白い小さな花をつけます。沈丁花はアジサイや小手毬(こでまり)のように花がひとかたまりになっています。咲くととてもよい香りが漂うので,私はこの時期を楽しみにしています。

それにしてもこの冬は本当に暖かい。昨シーズンもそうでしたが,例年冷え込む小寒から大寒(1月中旬から下旬)にカイロを使うことがありませんでした。それどころかヒートテックさえ着込まずに済むなんて本当に信じられません。この暖かさはどういうことか,それこそ,地球温暖化の影響なんでしょうか。最近のNHKのニュースでは「地球温暖化の影響」というフレーズを聴かないのですが。

先週,私は大腸内視鏡検査を受けました。3日前から食事制限と下剤の服用で,検査当日は肛門から水がシャーシャー流れ出る体験をしました。便の色(というか,固形物は見えない)がおしっこのように黄色くなったところで内視鏡を肛門から差し込みます。事前に鎮静剤をうつのですが,気づいたときには検査が終わるところでした。

検査後の医師の説明では,大腸に1センチのポリープがみつかったため,切除したとのこと。しかも経過観察として一晩入院することになりました。検査後はすぐに帰宅できると思っていた私は大ショック。仕事を終えた妻に,コンタクトグッズと着替え,ラジオを届けてもらいました。

手術をしたために今週も食事制限が続きます。しかもアルコールもずっと禁止。つらい日々が続きます。幸いと言うべきか,鹿児島県内ではコロナ対策として飲食店の営業時間短縮などがあり,居酒屋などは店を閉めています。不思議なこともあるもんですね。私の食事制限と飲食店の営業時間短縮時期がぴったり重なるなんて。

この2週間で体重が2キロ落ちました。便はゆるいままで固さや太さが元に戻らないのが気になります。2月8日の月曜日には医師から今回の検査結果について説明があります。切除したポリープの病理検査には1週間もかかるんですね。異常がないことを願います。やっぱり食事は普段どおりに食べて楽しみたいからね。

白飯につきるとおもう飲食の喉もとくだるきわのうまみは (沖ななも)

歌コラム的要約千夜一夜物語0003 牝牛(めうし)とロバの話

大臣は娘のシャーラザッドに牝牛とロバの話を始めました。

昔,大金持ちの男がいた。その男はおおぜいの召使いを雇い,牛などを飼っていた。その男は動物の言葉がわかる能力をアラーの神から授けられていたが,そのことを他人に話すと命を失うとアラーに脅されていたので誰にも秘密にしていた。

ある日,この男は牛舎のそばで子どもたちと遊んでいると,牛舎にいた牝牛とロバが話をしているのが聞こえた。

牝牛「ロバよ。あんたはいいな。住まいもきれいに掃除されているし,食事の面倒もいい。ご主人をのせて町にでかけることもできる。それに比べて私はこの汚い牛舎でまずい餌を食わせられ,朝から夜まで畑で鋤(すき)や軛(くびき)をつけて働かされる。あんまりだ」

ロバ「牝牛よ。ではいいことを教えてあげよう。明日は鋤や軛をつけられそうになったら抵抗して横になるんだ。どんなに殴られても起きちゃいけない。そして餌も絶対に食べちゃいけない。それを3日も続ければ,ご主人も心配して大切に面倒を見てくれるよ」

それを聞いた牝牛はロバにお礼を言い,さっそく実行した。牛飼いに殴られても軛をつけずに横になり,餌も口にせず,牛舎の中で仰向けになって寝転んで。心配した牛飼いは,主人である大金持ちの男にこのことを報告した。

大金持ちの男はロバと牝牛の会話を聞いていたので,そのことだなと察し,牛飼いにこう命じた。「牛のかわりにロバを使え。ロバに軛をつけて朝から夜まで畑仕事をさせればいい」

それを聞いた牛飼いはロバを畑に引っ張り出し,いうことを聞かないときは棒で殴りつけた。こうしてロバは朝から夜まで働きづめ。寝床に戻ったときにはへとへとの状態になっていた。そうとは知らない牝牛はロバに対して,「ありがとう。あなたのおかげで楽ちんな一日だったよ。あなたも神の幸いがありますように」と言うもんだから,ロバは悔しいやら情けないやら。牝牛に入れ知恵をしたことを後悔した。

話を終えると大臣は娘のシェーラザッドに言いました。「お前がシャーリアル王に嫁ぐというが,そんなことをしたら,お前はこのロバと同じ目にあうぞ」 それでもシェーラザッドは王に嫁ぐと言って聞きません。「これ以上さからう気なら,私はこの話の大金持ちの男が自分の妻をこらしめたようにこらしめるぞ」と言って話を続けました。