歴史 Feed

2022年11月23日 (水)

ロシアは春秋戦国時代の息と同じ運命をたどるのか?

中国の春秋戦国時代を記録した古典があります。「春秋左氏伝」です。岩波文庫の上巻を読み直しているのですが、「隠公11年」に次のようなくだりがありました。

「鄭(てい)と息(そく)の間に言葉の行き違いがあり、息侯(息の領主)が鄭を攻めた。鄭伯(鄭の領主)は国境でこれと戦い、息軍は大敗して引き揚げた。君子はこのことによって、息がやがて滅亡することを察知したのである。相手の徳を考えず、自分の力の程を知らず、同じ姫姓の国に親しまず、言辞の是非を明らかにせず、罪否を調べず、この5つの過ちを犯して、しかも相手を攻める。息が軍を失ったのもの当然ではないか。」

2022年2月にロシアがウクライナへの侵攻を開始しました。首都キエフへの進軍が頓挫したことにより、ロシアはウクライナ南部4州の占領とこれらのロシアへの併合に目標を切り替えました。2014年に併合したクリミア半島への陸路を万全にしようとしたのでしょう。

しかし、ロシアが9月に併合した4州のうち、11月の時点ではヘルソン州の州都ヘルソンをウクライナ軍が奪還し、ルハンスク州でもウクライナ軍が攻勢を強めています。攻守逆転したロシアは部分的動員令を発動して30万人の人員を確保しましたが、これにともない70万人のロシア国民(おそらくほとんどが労働者として主要な年齢層)が国外へ逃亡しました。

「春秋左氏伝」が指摘する5つの過ちは、そのままロシアに当てはまります。

「相手の徳を考えず」 ウクライナのゼレンスキー政権は国民が正当な選挙の結果成立した政府です。NATO加盟の動きはありましたが、これはロシアとの条約等に反したものではありません。

「自分の力の程を知らず」 プーチンはロシア軍の強さを過大に評価していました。 

「同じ姫姓の国に親しまず」 ロシアとウクライナは歴史を共有するロシア系の国でありながら、プーチンはウクライナを属国扱いして対等な友好関係をつくろうとはしませんでした。

「言辞の是非を明らかにせず」「罪否を調べず」 ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ南部のロシア系住民がウクライナのナチス的勢力によって虐待されていると主張して、それを侵攻(特別軍事作戦)の理由にしていましたが、これがでっちあげであることは明白です。

ロシア軍は必ずウクライナ軍に敗れます。ロシアは戦場では10万人を超える成人男性を失い、100万人近い国外逃亡者たちはロシアにはもう戻って来ないでしょう。欧米の経済制裁がいつまで続くのかという問題もありますが、ロシアのダメージは深刻で、経済的な回復は少なくとも10年(子どもたちがロシア経済の担い手になるまでの間)はかかるでしょう。

「春秋左氏伝」をなぞるならば、経済が回復するころにはロシアは滅亡(プーチン政権の転覆、ロシア分裂)しているかもしれません。

クレムリン執務室なる暗がりに鉛筆研ぎて愉しみたる人(島田修三)