ストリートピアノ Feed

2022年11月12日 (土)

ストリートピアノ演奏旅行(東京編)

10月下旬に東京出張がありました。というわけで、東京都のストリートピアノを巡ってみました。

1 羽田空港第2ターミナルビル地下1階(メルセデス・ベンツ展示場前)

 羽田空港に到着。羽田空港には5階のスタバの隣と、地下1階のメルセデス・ベンツ前の2箇所にピアノが置いてあります。スタバ隣は過去に弾いたことがあるので、今回はメルセデス・ベンツ前のピアノに調整しようと第2ターミナルビルに向かいました。

 すぐに見つかりましたが、すでに30代ぐらいの男性がクラシックの曲を美しく弾いていて、カフェのお客さんが聞き入っていました。仕事に間に合わなくなるので、無理だと判断してすぐにモノレール乗り場に向かいました。

 それにしても演奏している男性のもっさいこと。グレーのパーカーにスニーカー。風采の上がらない30代とお見受けしました。「お前は平日からこんなところで、こんな格好で、ピアノ弾いていられるなんてたいそうな身分だな」と毒づく気持ちを抑えるのがやっと。こういう人が実はIT長者で日本を動かしているのかもしれませんが、どうも好きになれません。

2 JR両国駅(臨時第3ホーム)

 続いて両国駅に向かいました。こちらはプラットフォーム両側に第1、第2ホームがあるだけ。当然ながら第3ホームはありません。改札に降りていくと見つかりました。「臨時第3ホーム」は、過去のJRの歴史を目撃した写真の展示室になっていました。このフロアの中央に、黒いアップライトピアノが置かれていました。

 まずは宇多田ヒカルの「桜流し」を弾きました。現在、私が新たに挑戦している曲です。サビの部分が非常に難しいので、動きを省略して演奏しました。途中、団体客が声を張りげながら展示されている写真についてあれこれ言っているのが聞こえてきて気が散ります。それでも満足して弾き終えることができました。

3 JR有楽町駅(交通会館地下1階)

 そして、有楽町駅の交通会館の地下に直行。エレベーターホールに黒いアップライトピアノが置かれていました。ここのピアノはなんと午後2時から午後4時という1日2時間しか演奏可能な時間がないレアピアノです。

 誰もいないのを見計らって「戦場のメリークリスマス」を弾きました。観客はいないとはいえ、通行人の数は半端ない。それでも指先が震えることなく、最後まで弾きました。蓋を閉じると後ろから拍手が聞こえます。なんと20代の若い男性が私の背後の椅子に腰掛けていました。「うわっ、恥ずかしい」と思わずこぼし、すぐにピアノから離れました。するとこの男性はさっそくショパンを弾き始めました。身なりもしっかりしていて好感がもてました。どこかの音大生でしょうか? やはり東京ですね。

4 JR高輪ゲートウェイ駅

 最後はJR高輪ゲートウェイ駅です。こちらは過去に弾いたことがあるのですが、山手線の駅のホーム内にある上に、通行人もほとんどいないのでピアノの演奏をするにはうってつけの場所です。この日もやっぱり誰もいません。私は「戦場のメリークリスマス」、ケツメイシの「さくら」、宇多田ヒカルの「桜流し」を気持ちよく弾きました。「桜流し」は途中でなんどもミスタッチがありましたが、どうせ誰も聞いてやいません。

 ところが演奏を終えて振り向くと、男性が二人、私の後ろに立っているではありませんか。どちらももっさい、「お前仕事してるんか?」と尋ねたくなるような格好で、そっぽを向いていました。ふたりとも「おまえの演奏なんてアホらしくて聞いていられない」って感じで。

 私はマナーを守り、さっさと引き上げました。電車を待つ間、彼らのピアノの音は聞こえてきませんでした。

雨、ほくはぼくよりも不憫なひとが好きで窓から街を見ている(木下龍也)