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2022年11月16日 (水)

「人新世の環境危機と21世紀のコミュニズム」(斎藤幸平)を読む

小論「人新世の環境危機と21世紀のコミュニズム」を読みました。論者はマルクス研究者です。

論者は言います。

コロナ禍は最後の危機でも最悪の危機でもありません。これから始まる人新世の危機の最終リハーサルです。その元凶が気候変動なのです。今後、世界は山火事や干ばつ、異常気象によって水不足と食糧危機が頻発し、紛争と難民が繰り返し発生して緊急事態が慢性化するでしょう。慢性的危機の時代には、政府はさまざまな形で介入せざるを得ません。それを思うと小さな政府を求めるアメリカ流の新自由主義は終わったのだと思います。と

そしてポスト資本主義について述べています。

「緑の資本主義」が欧米に起こりつつあります。そのポイントは、国の優遇措置や大型財政出動により、環境にやさしい技術に投資を誘導することにあります。それに比べ、日本ではSDGsのマークが各地でみられるほど環境意識が高まっていますが、日本の取組はほぼ無意味で有害でさえあります。SDGsは良心の呵責を和らげるための薬にしかなっていません。企業もSDGsをマーケティングの道具にしています。

これには私も納得です。ファーストフードがSDGsってどう考えてもおかしいでしょう。SDGsをやってます、だからうちの商品を買ってください、って。でも、これっておかしくない? 資本主義最先端の大量生産・大量廃棄のグローバル企業が環境保全なんていうなら、車に乗らないエコな生活をしている私はグレタ級になっちゃうよ。

結局のところ、「緑の資本主義」に転換しても、経済成長を求める限り、気候変動問題は十分に解決できないのです。市場メカニズムが機能する限り、大量生産・大量消費・大量廃棄の悪循環は断ち切れず、資源消費もエネルギー消費も減らすことはできません。本当に温暖化を防ごうとするならば、成長主義からの脱却、資本主義からの転換、システムチェンジしかありません。これが「脱成長」です。

では「脱成長」ってなんでしょう? 残念ながら小論はここで終わっています。

今日の朝日新聞は、日本の経済成長がマイナスだと紙面トップで報じていました。悲観的な見出しが踊っています。これがSDGsを推進している朝日新聞の紙面でしょうか。地球の温暖を防ぐためには脱成長というなら、日本のGDPのマイナスは喜ばしいことです。どうしてそういう紙面にならないのでしょうか? 

結局、SDGsなんて言ったもん勝ち。自己満足の世界でしかありません。それを象徴するのが朝日新聞の偽善ぶりです。他の企業も右に倣え。SDGsに取り組んでますというフレーズに踊らされている消費者は滑稽ですね。もちろん、わたしはそんなことを商品選択の基準にしたりしませんよ。

資本主義のとある街角必要に応じて受けとるティッシュペーパー(俵万智)

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