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2022年4月

2022年4月17日 (日)

自動運転の実用化の最大の問題は「トロッコ問題」?

現代ではAIの進化によって、自動運転技術の実用化が間近となっているかのような印象があります。イーロンマスクは「来年は実用化する」と毎年発言しています(そう、毎年だったんです)が、実用化はまだみたいですね。

人間はロボットには完全無欠を求めます。日本では交通事故で年に3000人もの方が亡くなっていますが、自動運転になればこの死亡者数は激減するでしょう。にもかかわらず、自動運転が1件の障害事故を出してもと大騒ぎ。自動運転(ロボット)には絶対に事故を起こさない技術を求めているのが人間なのですね。

しかし、どうしても死亡事故を避けられないケースがあります。

例えば法定速度50キロで走行中、突然子どもが飛び出してきた。急ブレーキでは間に合わない。子どもを助けるためには対向車線側にハンドルを切るしかないが、対向車線は大型ダンプが法定速度を大幅に超過したスピードで走行していて、正面衝突となったら私(運転手)は即死する可能性が高い。ではどうする?

倫理学の問題に「トロッコ問題」があります。無人のトロッコ(路面電車)が暴走。このままでは線路上の5人をひき殺してしまう。線路の分岐点にあなたはいる。分岐点の操作をすればトロッコは別の線路を走行するので5人は助かるが、今度は別の線路にいる1人をひき殺してしまう。あなたはどうすべきか?

功利主義者の立場では、数量で考えるので5人を救い、1人が犠牲となることを選択します。助かる命が多いからという単純な理由です。しかし、人の命は平等と考えると、本当にそれでいいの? ってなりますよね。ハリウッド映画ではよく、こういうシチュエーションでどちらも助けるヒーローが出現して問題を解決しますが、自らの現実に置き換えると簡単ではありません。

そもそも、トロッコの暴走で5人死亡であれば事故(私は無関係で済んだはず)だったのに、分岐点の操作(線路の切り替え)は私の意志。分岐点を操作したばかりに殺人の疑いがかかります(刑法上は緊急避難が成立すると思いますが)。

この「トロッコ問題」をどう解決するかという問題を自動運転技術は抱えています。

この状況にどういう選択をするかの研究(Bonnefon,Shariff and Rawhan ”Delemma of Auronomous Vehiecles" 2015)があります。それによると、ほとんどの調査参加者は、そのような場合には自動運転車は所有者の命を奪うという代償を払ってさえ、その子どもを助けるべきだと回答しました。

いやあ、人間って素晴らしいですね。

ちなみに、この調査には続きがあります。では、あなたはそのようにプログラムされた自動車を買いますか?

大半の参加者はこの質問にノーと回答したのです。

いやあ、人間って本当に偽善が好きですね。この、人間は偽善的動物だという現実を受け止めることが大事なんだって、私は思います。

意思表示せまり声なきこえを背にただ掌の中にマッチ擦るのみ(岸上大作)