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2023年5月 3日 (水)

小論「ペブロスカイト太陽電池」(宮坂力)と「日本の景気回復の道筋」(原田泰)を読む

小論「ペロブスカイト太陽電池」(筆者 宮坂力)を読みました。
 
筆者によると、日本は福島第一原発の事故以降、火力発電所由来の二酸化炭素が急増。日本の二酸化炭素総排出量の約46パーセントを占めています。
 
一方、同事故以降、日本では太陽光発電が増えましたが、問題が2つあります。
1つは発電コストです。太陽光発電の発電コストは1キロワット時あたり約12円。石炭火力発電所(約7円)の倍近くになっています。これは太陽光パネルに使われるシリコン半導体の原材料(高純度シリコンウェハ)が高額だからです。
もう一つの問題はシリコン結晶の製造過程で二酸化炭素は排出されることです。
 
ペロブスカイトとはチタン酸カルシウムという金属酸化物です。
チタン酸カルシウムは結晶構造が特徴的なので、現在では同じ結晶構造をもつ物質を総称して「ペロブスカイト」と呼んでいます。 今回の話は金属酸化物の酸素をハロゲンに置き換えた金属ハロゲン化物です。
 
現在はこのペロブスカイトによる太陽光発電の研究が進んでいます。シリコン太陽電池に比べ、ペロブスカイト太陽電池は曇天や雨天でも発電できるメリットがあります。
 
このため、年間発電量はシリコンよりも10パーセント以上上回ると試算されています。また、製造コストはシリコンの約半分です。このペロブスカイトは日本で生まれた技術ですが、世界的な研究に日本は立ち遅れています。残念ですね。
 
もうひとつの小論「日本景気回復の道筋」では、日本が経済成長できていない理由を解き明かしています。
 
まず俗論としてのGAFA欠如論をこき下ろしています。同論は簡単にいうと「アメリカにはあるが、日本にはない。だから日本の成長率は低いのだ」というものです。しかし、どうやったらGAFAが生まれるのか誰もわからない。しかも、ドイツ、イギリスなどもGAFAはないのに成長している。
 
筆者の主張する理由は、「PCR検査目詰まり論」と「競争嫌い論」です。
 
「PCR検査目詰まり論」とはPCR検査を自動機械でできるのに厚生労働省が邪魔していたというもの。この自動機械は全世界で使用されていたのに、厚労省は機械の導入を遅らせていたのです。
 
「競争嫌い論」とは、いわゆる護送船団方式です。能率の悪い自治体や企業に全体のレベルを合わせる(競争を回避してみんな一緒に)という体質です。競争がなければ全体の効率が低下するだけです。
 
成長するためには、生産性の上昇や競争の妨害を排除しなければならないからですね。
 
2つの論文を読んで思うのは、「政治とは弱者を救うもの」という発想が経済政策に持ち込まれていることでしょう。太陽電池のスキームも政治主導となった結果、リスクをとろうとしない企業が存続しています。私達の電気料金にはその経費が上乗せされているのを知っていますか? 関西電力の賄賂騒ぎではありませんよ。まったく!
 
硝子戸の中に対称の世界ありそこにもわれは憂鬱に佇(たたず)む (尾崎左永子)