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2023年5月 4日 (木)

講演録「脳で直接、機器操作(ブレイン・マシン・インターフェースの最新動向と今後の展望)」(平田雅之)を読む

講師は脳機能解析やBMIの開発をしている大学教授です。
 
BMIとは脳と外部危機をつなぐ装置です。講師はBMI技術を利用して、開頭手術をして頭蓋内にワイヤレス電極を置き、電極で頭蓋内から計測した正確な脳波をAIで解読し、「その人がなにをしようとしているか」を推定してロボットアームを操作する技術を開発しています。
 
2008年、ピッツバーグ大学がサルを用いたBMIの動物実験に成功したことを報告しました。
サルの両腕を動かないように固定し、脳の運動野(大脳皮質で運動指令を出す神経細胞が集中している領域)と呼ばれる領域に剣山状の針電極を刺入して、脳信号だけでロボットアームの操作を試みました。するとサルは、ロボットアームを自由自在に操作して餌をつかみ、口に運び、食べることに成功したのです。
2012年、同大学は患者を対象に臨床研究を行いました。ここでも患者は念じるだけでロボットアームを制御し、チョコレートを口に運び食べることに成功しました。
 
残念ながらこの研究は、脳に針電極を刺すので脳を傷つけ、有線での計測なので感染の問題もあり、日本では研究されていません。
 
現在はさまざまな研究が行われています。 BMIはロボットアームや意思伝達装置以外にも、様々な外部機器と接続が可能です。 ITと接続すれば、寝たきりの患者さんでも、メタバースやインターネットの世界で、健常者と同じように活動できます。介護ベッド、電動車いす、アシストスーツ、家電などを自在に制御することも可能です。最終的には機能的電気刺激(電気刺激で自分の筋肉を動かす技術)によって、ねたきりの患者が自分の体を元通りに動かせるようになるかもしれません。
 
講演録を読んで思いました。「これは本当にすばらしい世の中なのか?」と。
脳だけが活動し、身体機能がまったくない。これは映画「マトリックス」の世界です。私たちの未来は「マトリックス」の描く、ディストピアになりかねない。そんな感想を持ちました。
 
みどりごの欠伸(あくび)する口ほのぐらき人の子ゆえにわれはおそるる(河野愛子)