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2022年11月21日 (月)

「南極氷床 地球最大の氷に何が起きているのか」(杉山慎)を読む

小論「南極氷床 地球最大の氷に何が起きているのか」(杉山慎)を読みました。

南極氷床の体積は、日本海で20杯分に相当し、地球に存在する全氷河体積の90パーセントを占める特別な存在です。淡水の約70パーセントが氷河氷床の氷なので、その融け水が海に重要なインパクトを与えることになります。

なにしろ南極氷床が完全に融ければ、海水準は58メートル上昇します。こうなるといま私が住んでいる地域も海の底になっちゃいます。

今から20年前までは「温暖化で雪が増えて氷床が成長する」という仮説が主流でした。その後、人工衛星による地球観測技術が急速に発達して、氷の変化が正確にとらえられるようになってきました。その結果、1992年から2016年に毎年100ギガトンの割合で氷が減っており、この24年間に失われた氷は南極氷床全体の1万分の1、海水準上昇に換算して7ミリメートルに相当するというのです。

えっ、たったこれだけって感じですよね。

南極で氷が減少しているのは、氷が消失するプロセス、特に棚氷の底面融解が増えているからというのが小論の解説です。大気の温暖化は海洋にも大きな影響を与えていて、比較的水温の高い海水が棚氷の下に流入し、氷の融解を促進しているというのです。

まさに、氷床が海に浸食されつつあるというわけです。5メートルの海水準上昇で、日本の国土の3パーセントが失われます。そこには日本の総人口の16パーセントが暮らしているのですから大変な事態です。

「地球温暖化なんて嘘」といっていた某大学教授の武田氏も、南極の氷問題については逆に雪が増えるから氷河がなくなることはないと主張していました。この小論を読んで、少しは自説を修正しているのでしょうか? 科学者は事実、正確な観測データに基づいて主張すべきですよねえ。

君の言葉は硬い石だよ一つずつすりつぶされるぼくの細胞(俵万智)

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