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2022年11月26日 (土)

「アベノミクスの功罪」(佐伯啓思インタビュー)を読む

令和4年11月25日(金)の朝日新聞に、「アベノミクスの功罪」と題して、社会思想家の佐伯啓思氏のインタビュー記事が掲載されていました。

朝日新聞は「アベノミクス」を批判し続けました。「昨今の円安と物価高、世界最悪の政府債務、そのもとで打ち出された巨額の経済対策、いずれものアベノミクスの遺産ともいえるような危ない現象だ」と記事の冒頭で反安倍を鮮明にしています。

しかし、佐伯氏は反論します(以下、抜粋)。

「政治はあくまで相対的なもの。アベノミクスの批判はいくらでもできます。だが他にどんな政策がありえたか。少なくともかなり世の中のムードは変えました」「結果はともなく、(アベノミクスの3本の矢を)やらないという選択肢はなかった」「雇用状況を良くし、経済を引っ張ったのはアベノミクスの功績というべきでしょう」

そして、問題を安倍政権に矮小化した結果、より根本的な問題である日本社会全体を劣化させたのは、左翼やマスコミの責任であると主張します。

「大事なのは経済の背後に我々の社会生活があり、おカネに変えられない何かがあるということです。問題は『カネをこえた価値』を認めるかどうか。日本社会は限界まできています。だから政治家は余計なことをしないほうがいい」

「(しかし)『成長はあきらめ、ゼロ成長でいい』とか、『世界に冠たる国ではなく、そこそこ満足できる普通の国に」なんて言えますか。メディアはそれを受け入れますか」「安倍さんにはそれを言ってほしかった。でも経済は民主党政権でも復活せず、日本政治そのものが世界からの信頼を失い、メディアは経済再生を求めている。やはり無理だったでしょう」

「本当の問題は日本社会が何をやってもうまくいかないところまで来てしまったことにあります。我々の本当の幸せは何か、文化や地方生活はどうあるべきか、そういう問題設定をすればよかった。野党やメディアは批判するなら代替案を出すべきです。それをせず状況をやり過ごそうとするなら、どの政権になろうと結果は同じです」

「(アベノミクスの結果)個人主義や金銭主義が拡散しました。近代主義を加速してしまったのです。これは安倍さんの罪というより戦後の日本社会全体の問題です」

私はこのインタビュー記事を読んで、悲しい気持ちになります。現在開会中の国会の議論も、統一教会や閣僚辞任のスキャンダルばかり。野党とメディアはこれらを連日取り上げています。しかし、日本国民の暮らしと関係があるのでしょうか? 少なくとも私の生活にはまったく関係がありません。だから、新聞の見出しをみるだけで中身を読むことはありません。時間の無駄だからです。

私は連日、ロシア・ウクライナ戦争の動画サイトをユーチューブで見ています。現在の世界的インフレやエネルギー、食糧危機などの原因は、この戦争の影響が大きいのは明らか。注目するのが当然だからです。

ヨーロッパやアメリカではインフレが蔓延し、物価高騰は前年比10%を超えています。日本は低金利政策をしながら物価高騰を3%程度で抑えています。それでも日本政府に失策があるかのような報道をして批判しています。マスコミや野党はバカじゃなかろうか? 私は、この世界的な経済苦境において日本経済はよく持ちこたえている、と思っています。

最後に佐伯氏のコメントで締めたいと思います。

「安倍さんだって何かに踊らされていたのですよ。状況に踊らされていると言うか、日本社会の構造に踊らされているというか。問題は西欧が生み出した近代社会をどう理解するか。それを本当に日本に持ち込めるのか。そのとき保守とかリベラルとか関係ありません」

さようならそれぞれに生き延びてまたいつかみんなで疎開しましょう(木下龍也)