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2022年10月 2日 (日)

論語とプーチン・ロシア大統領の動員令

ロシアの大統領が9月30日にウクライナ東部南部の4州を自国領に併合しました。しかし、ウクライナ軍が反転攻勢を強めており、ロシア軍はハルキウ州から撤退した後もルハンスク州、ドネツク州の確保が危うくなっています。

そもそも今回のロシアによるウクライナ侵攻は「東部2州の住民を集団殺害から守る」ことを根拠としていました。しかし、今回の併合によって、ウクライナ侵攻の目的は嘘であることを皮肉にも証明した形となりました。

ウクライナ侵攻開始時、ロシア軍は20万人弱いましたが、そのうちの半数近くが死傷していると報道されています。損害率が40パーセントを超えるとなると、一般的には部隊は壊滅と表現します。

この兵力不足を補うべく、プーチン大統領は予備役の部分動員(30万人)を命じましたが、これによりロシア国内には大きな混乱と不安が広がっているようです。私の情報源であるNHKラジオや朝日新聞は、ウクライナ国民の悲惨な状況を熱心に伝えますが、肝心の軍隊に関するニュースはほとんど報じないため、ネットで最近の「ゆっくり解説」を見てみました。

それによると、新たに動員された兵士はほとんど訓練も受けずにウクライナの前線に送られているようです。予備役とはいえ、長年訓練を受けていなかった人たちです。

ヒトラーとスターリンによる独ソ戦では、ドイツ軍の精鋭部隊に対して、ソ連軍はウンカのごとく押し寄せ、殺されても殺されても前進し、最終的にベルリンを占領してナチスドイツに勝利しました。このときの戦いではソ連人は約2000万人が亡くなっています。(ちなみに第二次世界大戦における日本軍の死者は600万人と言われています。)

ソ連軍は兵士が離脱しないよう、各部隊において政治委員が監視していました。フルシチョフ(スターリンの死後に、ソビエト共産党書記長となり、スターリン批判演説を行った)が有名ですね。ほかにも督戦隊というのがありました。この部隊は、逃亡しようとする兵士たちを撃ち殺すので、前線の兵士たちはその恐怖に怯え、ドイツ軍に向かっていきました。

当時ドイツ軍は投降したソ連軍兵士を皆殺しにしていたため、ソ連兵士に投降という選択肢はなかったので、ソ連軍の兵士は文字どおり決死の覚悟で戦いました。しかし、ウクライナのゼレンスキー大統領はロシア軍捕虜を厚遇すると何度も呼びかけてロシア軍兵士に投降を促しています。ナチスドイツとの戦いとはまったく環境が異なります。

論語の子路第十三に「子の曰く、教えざる民を以って戦う。是れこれを捨つと謂う」とあります。現代語訳をすると「先生が言われた。『教育もしていない人民を戦争させる。これこそ捨てるというものだ(負けるに決まっている)。」

ロシアがウクライナ侵攻に失敗するのは決定的になりました。プーチンは核戦争の恐怖で国際社会を恫喝し続けるので戦火が拡大する可能性は非常に低いでしょうが、ウクライナ軍が自国内で戦闘する限り、ロシア軍は戦力(兵士)を消耗し続けるでしょう。

ちなみに第二次世界大戦後に、ソ連は深刻な労働者不足に陥ります。その労働者不足を補うために、捕虜に強制労働をさせてきました(シベリア抑留)。ウクライナからロシアに避難してきた(連行した)人々でそれを補わせるつもりでしょうか?

そもそもロシアは人口減少社会。今回のウクライナ侵攻による労働者不足によって、ロシア経済は相当大きい影響を受けることが予想されます。1980年代のソ連のアフガン侵攻失敗でもソ連は大ダメージを受けました。アフガン撤退から10年後にはソ連邦は解体しました。さて、10年後のロシアはどうなっていることか?

いにしへの道をきいても唱えても わがおこないにせずば甲斐なし(日新公いろは歌)