歌コラム的要約千夜一夜物語0004 牝牛(めうし)とロバの話
大臣は娘のシェーラザッドに話を続けました。
その日,ヘトヘトになったロバに牝牛がお礼と言った。「ロバよ,あなたの助言どおりしたおかげで今日はゆっくりと楽して過ごすことができたよ。ありがとう」
それを聞いたロバは腹立たしさにこう言った。「牝牛よ,このことを明日もやるなんて馬鹿げたことをしてはいけないよ。お前がまったく働かないから,ご主人様はお前を殺して肉を食べ,皮はなめしてしまおうと考えている。そうならないよう,明日は元気に餌を食べ,喜んで働くんだ。そうすれば殺されずにすむ」
それを聞いた牝牛はロバの助言を聞き入れ,お礼をいった。そしてその様子を大金持ちの男はじっと聞いていたんだ。
翌日のこと。ロバの助言に従って牝牛は餌をもりもり食べ,喜び勇んで畑で働き始めた。その様子をみていた大金持ちは笑い転げた。一緒にいた妻がその笑いようを不審に思って理由を尋ねたが,秘密を話してしまうと命がない大金持ちは拒否した。すると妻はなぜ理由をいわないのかと怒りだし,夫が死のうとかまわないから理由を教えろと迫った。
困り果てた大金持ちは一人,にわとり小屋で思案に暮れていると小屋にいた雄鶏が犬に話しかけていたのが聞こえてきた。
「まったくご主人は女房の扱い方を知らない。こういうときは枝を切ってきて,その枝で女房を叩きのめすんだ。あばら骨が折れようと皮が破れようと。そうすれば言うことを聞くようになるのに」
それを聞いた大金持ちは妻に理由を打ち明けるからと二人きりで部屋に入った。扉に鍵をかけると用意していた木の棒で妻を何度も叩いた。痛みに耐えられない妻は「もう理由を聞くことはありませんから許してください」と泣きついたので,大金持ちは妻を叩くのをやめた。以後,夫婦は円満に暮らしたとさ。
大臣はシェーラザッドに言った。「お前が私のいうことを聞かず,どうしてもシャーリアル王と結婚するというなら,この話の妻のように痛めつけるぞ」 しかし,シェーラザッドは大臣の意見を受け入れません。大臣は説得を諦めて,これまでの経緯を説明した上で,娘をシャーリアル王に差し出しました。
シャーリアル王はシェーラザッドを迎え入れ,服を脱がせてセックスをしようとするとシェーラザッドは涙を流してこう言いました。「私には妹が一人います。夜が明けると私はあなたに殺されません。どうか妹に別れを告げさせてください」
シャーリアル王はシェーラザッドの言葉を聞き入れ,妹のドウニャザッドを呼びました。ドゥニャザッドが参上するとベッドの近くに侍(はべ)らせ,裸になったシェーラザッドとセックスをして処女を奪いました。そしてそのまま3人は眠りにつきました。
夜中のこと。かねて打ち合わせをしていたとおり,妹のドゥニャザッドが姉のシェーラザッドに話しかけました。「ねえお姉さま。どうか楽しくて聞いたことのないお話をしてください」 たまたま眠れなかったシャーリアル王もこれを許し,シェーラザッドはドゥニャザッドに話を始めました。これが「千夜一夜物語」の最初の夜のできごとです。
コメント