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2021年2月14日 (日)

歌コラム的要約千夜一夜物語0006 カモシカを連れた老人の話

カモシカを連れた老人は,魔神に話を始めました。

『このカモシカは私の妻だったのです。30年一緒に暮らしておりましたが子を授かることができませんでした。そこで妾(めかけ)をとったところ,男の子を授かりました。

この子が15歳になったとき,私は都に出かける用事があり外出しました。ところが,妻は幼い頃から魔法や占いを習い覚えていて,その力で妾を牝牛(めうし)に,息子を仔牛(こうし)に変えて,牛飼いに売ってしまったのです。

私が旅から戻ると妻は「あんたの奴隷女は死んだよ。子どもは家を出て行ったさ。行き先なんか死なないよ」と説明し,私は悲しみに打ちひしがれました。

それから1年後のアラーのお祭りのときのこと。生け贄(いけにえ)用に牝牛を一頭買いました。私は包丁を手に取って牝牛の喉をかき切ろうとすると牝牛が涙をぽろぽろとこぼすではありませんか。可哀想で突っ立っていた私に対し,妻は「さっさと殺してしまえ。うまそうな牛じゃないか」と急(せ)かします。私はしかたなく召使いに牛を殺させました。するとどうでしょう。牛は皮を剥がすと脂肪も肉もありません。私はとても後悔しました。

次に,生け贄として仔牛が連れられてきました。仔牛は私を見るなり,甘えたり,涙を流したりするのです。可哀想になって召使いにこの仔牛を放すよう言いました。しかし妻が「何をやってるんだよ。さっさと殺して食べちまえよ」とけしかけます。

私は言い返しました。「お前のいうとおり,さっき牝牛を殺したが,骨と皮ばかりだったじゃないか。もう,おまえの言うことなんか聞きたくない」 しかし妻は「殺さないならあんたはもう私の夫じゃない,私はあなたの妻でもない,それでいいんだね」と脅します。私は仔牛を殺そうと思い,近づきました。』

(ここからはシェーラザッドとシャーリアル王の場面に戻ります)

ちょうどこのとき,夜が白々と明けてきました。シェーラザッドはシャーリアル王に「王様が私の命を助けてくだされば,明日の晩はもっと面白い話をすることができますわ」と許しを請いました。王は「後の話を聞くまで,断じてこの娘を殺したりはしない」とひとりごとをもらしました。

そうして二人は抱き合って眠り,日が高くなると王はベッドを抜け出して政務につきました。大臣は王がなぜ今日は次の娘を準備するように言わないのか不思議に思いましたが,黙っていました。こうしてシェーラザッドはセックスをして処女を捧げた最初の夜にシャーリアル王から殺されることなく,二日目の夜を迎えることができたのです。以後,シャーリアル王はシェーラザッドの話を夜ごとに聞き続けることになります。

(この後も物語ではシャーリアル王とシェーラザッドの会話がでてきますが,二日目からは省略します)

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