2022年9月19日 (月)

「日本経済の長期低迷と家計に見られる変化」を読む

小論「日本経済の長期低迷と家計に見られる変化」(村田啓子)を読みました。

小論の内容は、

バブル崩壊後、余剰人員を抱えた企業は、人件費削減のために従業員の賃金を抑制するとともに新規採用を絞るようになった。(これは私がこれまで勤めた会社にぴったり当てはまります)

このとき、正規雇用を抑えたことによって非正規雇用は増加していきます。この結果、実質賃金上昇率は1990年代後半にマイナスに転じました。基本給も下落します。

さらに顕著な変化として女性の就業率が上昇します。増加したのは非正規雇用者。共働き世帯が専業主婦世帯を上回るようになったのも1990年代です。共働き世帯はその後急速に増加し、2018年には専業主婦世帯の2倍を上回るようになります。

そして、長寿化、晩婚化、少子高齢化により、高齢世帯や単身世帯が増加します。

この3つの変化により、家計の1世帯当たり消費支出は、日本経済がバブルを終えた直後の1992年をピークに緩やかに減少していきました。

世帯主年齢階級別にみると、30歳代以下の世帯で世帯主収入減が大きくなっていて、配偶者収入はどの年齢層でも増加していることがわかります。とはいえ、世帯主収入に対する配偶右車収入の比率は2019年には20%弱。これでも伸びてきているんです。

日本の家計消費に占める高齢世帯の割合は上昇し、世帯主が65歳以上の高齢世帯の消費額は2000年には2割弱だったのが、2021年には4割弱にまで上昇しています。高齢世帯や単身世帯は世帯あたりの消費水準は低くても、数が多いために存在感が増しているのです。

高齢世帯の消費水準は年齢が高くなるほど低下します。自分の平均余命までに総資産を使い切るがくを基準とすると、60歳後半ではその7割、70歳半ばでは5割に満たないのです。長寿や病気への備え、遺産動機、住宅資産が流動化されにくいことなどが原因と思われます。

以下は私の意見です。

日本経済の消費低迷は、ずばり高齢世帯の増加です。団塊の世代は1945年から1950年に生まれた人たち。現在、70歳代の人たちです。あと10年は生きるでしょうから、景気低迷はまだ10年は続きそうです。

10年後に団塊世代が世を去り、住宅資産等がだぶついてくるでしょう。空き家問題がより一層深刻化しそう。この空き家こそビッグチャンスだと思うのです。相続関係図作成が得意な私にとっては、ビジネスチャンスなのかもしれません。

祖父逝けり一人の妻と五人の子、九人の孫と二人のひ孫(俵万智)

2022年9月18日 (日)

「イギリス政治に見る野党観」を読む

小論「イギリス政治に見る野党観」(近藤康史)を読みました。

イギリスが2大政党制をとっているのは有名ですね。日本が細川内閣のときに小選挙区制を導入したときは大変な議論になりましたが、そのお手本であるのはイギリスであり、アメリカといったアングロサクソン系の政治制度でした。

この小選挙区制を導入したときに政党助成金という制度が生まれました。国会議員の数や得票数で正当に税金が配分される制度です。最近はNHK党がこの制度を悪用して、政党助成金をNHK受信料不払い訴訟に充てるというバカバカしい選挙を展開していたのは記憶に新しいところです。

さて、ではシャドーキャビネット(影の内閣)など、日本が参考にしているイギリスでは政党助成金はあるのでしょうか。そこに両国の野党の存在感を切り口に論じているのが、標題の小論です。

小論を要約すると以下のとおりです。

イギリスでは「ショートマネー」と呼ばれる、野党のみに配分される公的資金がある。イギリスでは日本やドイツのような政党交付金制度はなく、野党のみ公的資金が配分される点に特徴がある。

ショートマネーの使徒は、1 議会での用務、2 旅費、3 野党党首事務所の運営費、の3つに限定されていて、日本のように選挙活動に使うことはできない。(もちろん、NHK受信料不払い訴訟に使うこともできません)

イギリスでは、大臣以外の議員は官僚との接触が禁じられています。そうなると官僚機構を利用できる与党に比べ、野党は政策立案などで不利です。野党がその不利を克服して議会での役割を果たすためには、野党への支援が必要という理由で導入が検討されました。

イギリスでは与党と野党の間での政権交代可能性を前提とした競争的関係が基礎にあります。与野党の競争こそ、有権者の意向にあう効果的な政治運営・政策形成につながるという見方です。

なんとイギリスの下院では、「野党の日」もあります。1会期につき20日が「野党の日」として割り当てられ、野党が選択した議題について議論が行われます。(これだと安倍元総理の国葬をめぐる国会での与野党の駆け引きがバカバカしくなりますね)

以下は私の意見です。

日本が自由民主党が圧倒的に強く、健全な野党はいまだに存在しません。小選挙区制度によって政権交代の可能性は高く、細川内閣だけではなく、民主党政権が誕生したのもあながち日本にとって悪かったとばかりは言えないでしょう。

しかし、残念ながら、民主党政権は迷走を重ねすぎました。子ども手当、高速料金無料化などなど、国民へのバラマキばかり。「2位じゃだめなんですか」という事業仕分けも遠い記憶の彼方へと飛んでいきました。最大の汚点は普天間基地移転の迷走と尖閣諸島問題による日中関係の悪化です。外交をここまでこじらせた責任はあまりにも重い。(菅総理による東日本大震災・原発対応は偶発的なので、そこまで民主党の責任にするつもりはありませんが)

その結果、NHK党や参政党など、わけのわからない政党が多数登場し、逮捕されるかもしれないと国外に脱出して国会に出席する見込みがない暴露系ユーチューバーのガーシーが当選する事態となっています。もっとも自民党では生稲晃子も当選しているのではどっちもどっちですが。

結果としては、日本国民は政治的な運営失敗のつけを負います。当然ですね。生稲晃子に投票したバカやガーシーに投票したバカがいるわけですから。イギリスでは格差社会が広がっていて貧困層が増えていると聞きます。イギリス貧困層はやっぱりこういうバカな候補者に投票をしているんでしょうか。

太陽光パネルのついている家もいっしょになってすすむ夕暮れ(阿波野巧也)

2022年9月 1日 (木)

「アフガン安定化への道筋」を読む

小論「アフガン安定化への道筋」(多谷千香子)を読みました。

アフガニスタンは、1970年代のソ連のアフガン侵攻以来、戦争状態が長く続きました。ソ連撤退後は部族間の内戦が発生、その合間にタリバンが覇権争いに加わるなど、常に政情が不安定でした。その結果、ビンラディンなどテロリストの巣窟というイメージが定着しています。医師の中村哲氏がテロによって殺害されたことも、まだ多くの日本人には記憶にあることでしょう。

このアフガニスタンについて、論者の見解は非常に鋭く、そして、私のアフガニスタンに対する知識がいかに中途半端であるかを教えてくれました。

まず中村哲氏暗殺の事情を解き明かしてくれました。「中村哲医師は、クナル川の水を引いて砂漠化した大地を緑化し65万人の命を救ったが、パキスタン側での水供給の現象を懸念した三軍統合情報機関(ISI)に雇われた殺し屋に殺害された。水資源は貴重で、利用について流域国との調整は不可欠であり、すぐに合意できる問題ではない」

そう、中村氏の農業用水建設は、一方で深刻な水争いを引き起こしていたんですね。

そしてアフガニスタンの現状は「人口の半分以上が飢餓に瀕し」ているのに、いっこうに支援の手が行き届かない事情についても解説しています。「インドは従来からプロテイン入りビスケットをアフガン人の子供800万人向けに供与しており、タリバンが政権を取った後にも供与自体は続けられているが、子どもたちにビスケットは届いていない」とし、「(供与が)ストップしている原因は、学校が閉鎖されて配給スタッフもいなくなったことである」というのです。

つまり、タリバン政権の機能不全が、アフガニスタンの社会インフラを破壊しているというのです。

「パキスタンのカーン首相が『女子差別はタリバンの伝統文化』と喝破したように、タリバンはシャリア法の実現を理想としアフガンの田舎の伝統を重んじる集団」です。どうしようもないかと思いきや、このタリバンを脅かす勢力があるというのです。

「2015年に誕生したタリバンよりも過激なIS−Kは、タリバンを叩くのは今がチャンスと見て攻勢を強めており、2021年8月に起きたカブール空港襲撃事件をはじめ、全土でタリバンを攻撃」しており、さらに「IS-Kはウイグル人を募集して米軍撤退後メンバーの数を2倍に増やしており、タリバンと良好な関係の中国を攻撃してタリバンに打撃を与えようとしている」というから、国際政治の状況がここにも反映されているのです。

ビンラディンについても言及があります。「ビンラディンはタリバン前政権が樹立される前にひげ混んできた招かれざる客で、資格もないのにアメリカ人皆殺しのファトワ(宗教命令)を出すなどしたため、オマル(タリバン創設者)はアメリカの要請に沿って彼を追い出そうと考えていた。しかし、ビンラディンはアフガン戦争で武器をとって戦った数少ない外国人としてアフガン民衆に絶大な人気を誇っていたため、オマルは追い出す方法に苦慮」し、そうしている間にアメリカがアフガンに制裁を課し続けたため、結果的にビンラディンとの関係が緊密になってしまったとのこと。

そして、あれだけ部族間抗争が激しかったにも関わらず、部族(軍閥)が今ではまったく存在感がない様子を次のように解説しています。「旧北部同盟の軍閥が立ち上がらなかったのは、率いてきたリーダーたちの多くが高齢で、この20年の間に戦いを忘れてしまったことが大きい」

アフガンの戦士たちは年老い、後継者は育たないままこの状況を迎えてしまったことが原因だというのです。

9.11テロ。ニューヨークの世界貿易センタービルにジェット機の追突し、崩壊する様子を覚えている方はたくさんいるでしょう。しかし、私にはまさにその日、アフガニスタンのマスード司令官が暗殺されたことに強い衝撃を受けました。マスードはソ連と戦った英雄でした。この世界同時多発テロは、私には映画ゴッドファーザーのクライマックスを連想させました。

まずソ連が撤退し、今度は米軍が撤退し、今は中国がアフガン国内の資源を目当てに鉄道を伸ばして進出しています。過去の侵略者はすべて撃退したアフガン。中国が今後アフガンでどういう展開をたどるのか、非常に興味深いですね。

「イラク軍の盲撃ち」と言いしキャスターが謝罪しており地形図を背に(吉川宏志)

2022年8月25日 (木)

囲碁十訣(いごじゅっけつ)を学ぶ

私は毎晩のようにネットで囲碁を打っています。「SDIN 囲碁」で検索して、無料サイトがあるのでよく利用しています。

しかしなかなか上達しないですね。ついつい感覚的に、手拍子で打ってしまいます。一手一手をよく考えてから着手すれば上達するんでしょうが、即断即決で感覚だけの手を続けていくと勝ち負けだけにこだわってばかりで、読みの力はぜんぜん向上しません。

上達の秘訣とは? とよくある質問について、学士会会報にいいことが紹介されていました。以下は引用です。

「『玄玄碁経』にある囲碁十訣が上達の秘訣かと思います。ひとつひとつは簡単な言葉ですが、実際はつい貪(むさぼ)ってしまい弱い石を抱えたり、取りに行っては取られてしまったり、上達の秘訣と反対の行動になりがちです。着手のとき、頭に思い浮かべればいいですね」

囲碁十訣とは、

不得貪勝(貪って勝とうとしてはいけない)  入界宜緩(敵の勢力圏では緩やかにすべし)

攻彼顧我(攻めるときには自分を顧みよ)   棄子争先(石を捨てて先手を取れ)

捨小就大(小を捨てて大を取れ)       逢危須棄(危険になれば捨てるべし)

慎勿軽早(足早になりすぎるのは慎め)    動須相応(敵の動きに応じるべし)

彼強自保(敵が強ければ自らを安全にすべし) 勢孤取和(孤立しているときには穏やかにすべし)

私は「緩やかにすべし」とか「穏やかにすべし」というのがよく理解できませんでした。ヤフー質問箱をみると「入界宜緩」の意味は「敵の石が多いところには入りすぎないほうがいい」、「勢孤取和」の意味は「孤立している石は暴れずに自分を補強しろ」となっていました。

こういうのを知ると布石が大事だなっって思います。やっぱり最初から弱い石をつくってしまうと、逃げようとして苦しくなりますからね。布石から中盤にかけて、この囲碁十訣をかみしめて打ちたいですね。

遊びをせんとや生まれけむ 戯(たわむ)れせんとや生まれけん 遊ぶ子どもの声聞けば わが身さへこそ揺るがるれ (梁塵秘抄)

2022年8月24日 (水)

「起承転結」の非常にわかりやすい説明

私が毎月購読している学士会会報には、会員の例会で発表された漢詩も掲載されています。難解な漢字が多くて内容もわかりにくいのでほとんど読むことはないのですが、このコーナーの最後に跋文(ばつぶん:あとがきのこと)に「起承転結」の説明がありました。これが非常にわかりやすいのでそのまま掲載します。

「起承転結」という言葉は、漢詩を作らない人でも「あの人の話(または文章)は起承転結が悪くてわかりにくい」等と日常、使っておられるが、これはもともと漢詩の絶句の構成法を示す言葉なのである。

すなわち、「起承転結」とは、絶句が四句から構成される短い詩なので、その短い中でより効果的に詠うために、締りのある統一された良い詩になるように考え出された構成法なのである。

「漢詩鑑賞事典」(講談社学術文庫)によれば、絶句の各句の役割と構成は、

第1句 「起句」と言われ、詠い起こし

第2句 「承句」と言われ、起句を承(う)けてその場面がより広がりと奥行きを持つよう展開

第3句 「転句」と言われ、場面を転換する。

第4句 「結句」と言われ、転句の変化を受けつつ、全体を締めくくる。

この起承転結の構成法を江戸時代の頼山陽が次のような端唄(はうた)によって弟子に説いている。

(起)大阪本町 糸屋の娘

(承)姉は十六 妹は十四

(転)諸国大名 弓矢で殺す

(結)糸屋の娘は 目で殺す

この端唄の一番言いたいことは、糸屋の娘は「男を目で殺すほど色っぽい」ということなのだが、「殺す」という言葉の連想でなんの関係もない大名と弓矢が登場するのである。起句・承句の関係も承句で起句の糸屋の娘の詳細を詠っていることでよく理解できる。

初心者は「漢詩は結句から作りなさい」と教えられるが、この端唄も起句から作っていたら転句の大名はなかなか思いつかない。結句の「目で殺す」が先に決まれば、「諸国大名」も「弓矢」も即座に思いつき、転句ができあがる。後は、起句・承句で糸屋の娘を紹介すれば詩は完成するというわけである。

なるほどねえ、非常に勉強になります。普段読むことのないコーナーですが、いざ読んでみるとなんらかの刺激があるもんですね。

「まっすぐ」の文字のどれもが持っているカーブが日々にあったっていい(木下達也)

2022年8月23日 (火)

「量子コンピュータの現状と将来(量子アニーリングを中心として)」を読む

西村英稔(にしむらひでとし)氏の標記論文を読みました。

論文の冒頭にある要旨には「量子コンピュータは複数の状態が同時に現れるという量子力学の現象を利用することで、解決困難だった問題を高速解決できる可能性がある。二種類ある量子コンピュータのうち、量子アニーリングはすでに販売と実証実験が始まっている。ただ大規模な実用化はかなり先になるため、通常のコンピュータと組み合わせた利用が当面の目標である。」とありますが、なにを言っているのかよくわからないので、私なりにまとめてみました。

私たちに馴染みがあるのは「スーパーコンピュータ」ですね。日本が計算速度世界一番を争っています(「二番ではだめなんですか」といわれていたこともありました)。しかし、いわゆるスパコンと量子コンピュータは原理が全く違います。

量子コンピュータはスパコンが解けない、ある種の難問を高速で解くことができる可能性があります。しかし、それ以外の分野では通常のコンピュータが早いと思われます。

スパコンの特徴は、既存技術の延長線上にありますが、改良による高速化は限界に近づいています。そして開発費と電力消費が巨大という欠点があります。たとえば日本が誇る「富岳」は開発費1300億円、電力消費は30メガワット。これは中規模の水力発電所の発電量で、家庭の消費電力に換算すると数万軒分に相当します。(余談ですが、囲碁や将棋でコンピュータがプロ棋士に勝ちましたが、そのときの電力消費量は数億円といわれています。だから今ではやってないでしょ。ある意味当然なのです)

量子コンピュータの特徴は、その目的が暗号解読(巨大な素数のかけ合わせを破ることができると数学的に証明されている)や量子シュミレーション(創薬の諸条件の組み合わせを実験せずにシュミレーションで探索できることが数学的に証明されている)、組合せ最適化問題(巡回セールスマン問題など)にあります。しかし、量子コンピュータは製造や制御が非常に難しいのです。そのため「数学的に証明されている」とあるとおり、現時点では机上の空論なのです。

量子コンピュータは2つの種類があります。1つは量子ゲート方式、もう一つは量子アニーリングです。

量子ゲート方式は、グーグルやIBMが開発していていますが、ノイズに弱く大規模化が困難です。2019年にグーグルが53量子ビットの量子コンピュータを開発し、スパコンで1万年かかる乱数の問題を200秒で解読しました。当時は大変な話題になりましたが、アメリカ軍や中国軍が望んでいる暗号解読には数百万から数千万ビットが必要とされています。現状では全然能力が足りておらず、数週間安定的に作動する技術も未確立です。

量子アニーリングは、Dウェーブシステムズ社などが開発しています。こちらはノイズに強く、システムが安定化しているので大規模化が比較的容易という強みがありますが、高速化が証明されているアルゴリズムがまだないという弱みがあります。現在のマシンでは、設置時に耐震工事を必要するなどの扱いが面倒という問題があります。チップを極低温(ほぼ絶対零度)にするのですが、その体積が親指の爪程度なので、電力が数十キロワットですむという利点があります。

ここで量子アニーリングの基本原理を紹介しましょう。量子アニーリングマシンの中の親指の爪ほどのチップの中には、およそ1マイクロメートル(1ミリの1000分の1の長さ)の微細な超電導リングが5000個詰まっています。この超伝導リングをほぼ絶対零度(10ミリケルビン)に保つと、不思議なことに電圧をかけなくても、右回りの電流と左回りの電流が同時に流れ、しかも打ち消し合いません。さらにこのリングを複数並べると、それぞれのリングに右回りと左回りの電流が同時流れます。

なぜそうなるのかは誰もわかりません。コンピュータはオン(1)とオフ(0)の2つの情報をたくさん配列していることをご存知でしたか。量子コンピュータはこのような「1と0という2つの数が同時に現れるという原理を利用しています。例えば量子ビットを2個並べると(0,0)(0,1)(1,0)(1,1)という4個の数を同時に表せます。これでビットの数を増やすとその分2乗で増えていきます。ビットが40個になると約1兆もの数を合わわせるのです。なんだかすごいですね。

しかし、さきほど例に上げたグーグル開発の量子コンピュータであっても実用性には課題山積。簡単な問題であっても正解にたどり着いたのはなんと半分程度。53量子ビットでも、通常のパソコンなら瞬時に解ける問題が解けませんでした。それだけエラーが多すぎて使い物にならないのです。

さて、どうです、なんだか理解できましたか? 結局のところ、量子コンピュータは理論的には証明されているけれども実用化はまだまだ先というところです。しかし、アメリカと中国は暗号解読による軍事上の優位を得ようと量子コンピュータの開発に血の滲むような努力を重ねています。はたして私が生きているうちに開発できるのか?

買い換えるはめになったら iPhone のとびきりいいやつを買いなさい(阿波野巧也)

2022年8月22日 (月)

「バイデン米政権と中東(冷徹な現実主義の前景化)」を読む

池田明史氏の「バイデン米政権と中東(冷徹な現実主義の前景化)」を読みました。

以下はその要約です。

バイデン政権は2021年8月末までにアフガニスタン駐留のアメリカ軍部隊をすべて撤退させました。撤退の方針はバイデン政権が新たに策定したものではありません。アフガニスタンをはじめ、イラクやシリアなど、内戦状態にある中東各地から可及的速やかにアメリカ軍部隊を撤退させるという基本政策はオバマ政権時代にすでに構想されていました。

その背景には、台頭する中国の膨張路線に対抗するためにアジア・太平洋方面への戦略的重心の遷移(リバランシング)の必要性が強く認識されていたこと、泥沼化する中東各地の内線でアメリカ軍の犠牲が蓄積されたこと、技術進展によってシェールガスの採掘と商業生産がアメリカ国内で可能となり中東原油の資源価値が大きく相対化されたことがあります。

中東ではもう一つの動きがあります。それはイスラエルとアラブの関係正常化です。

トランプ時代にイスラエルとは「史上最良」と呼ばれるほどの関係になります。当時のネタニヤフ・イスラエル首相はトラン不大統領とは古くからの友人で家族ぐるみの付き合いをしていました。このトランプ大統領からネタニヤフへの最大の外交的プレゼントが、アラブ穏健派諸国とイスラエルとの関係改善の後押しでした。

イスラエルはエジプト、ヨルダンの間に和平条約を結び、パレスチナ開放機構とも相互承認を交わしていますが、その後20年以上、他のアラブ諸国とは関係が改善しませんでした。

しかし、2020年後半になって、UAE、バーレーン、スーダン、モロッコが次々とイスラエルとの国交を樹立・回復します。アラブ世界においてパレスチナ問題は大きく相対化され、いわゆる「アラブの大義」は空洞化したのです。

中東・北アフリカにおいて「イスラエルの殲滅」を呼号し続けているのは非アラブのイラン・イスラム革命体制だけになりました。

バイデン政権の中東政策は、バイデンが呼号するような理念外交とは切り離された冷徹な現実主義に貫かれています。

ここからは私の意見です。

最近はウクライナ情勢に注目が集まり、シリア内線(イスラミック・ステイト)に対する関心が大きく低下しました。これは日本のマスコミがアメリカ追従であることの、なによりの証拠にほかなりません。アメリカがシリアを含む中東への関心を低下させたため、アメリカのマスコミの注目も中東から別の地域へと転じているからです。

最近の台湾をめぐるアメリカの動きは歴史的転換を示しています。従来は台湾を助けるのかについて態度をはっきりさせない「あいまい戦略」をとってきましたが、バイデン大統領が日本を訪問したときには会見で「台湾を救う」ことを明言して物議を醸しました。また、アメリカ下院議長のペロシが台湾を訪問し、これに怒り心頭の中国が台湾周囲で軍事演習を繰り返しているのは、みなさんが報道でよく知るところです。

これに対して日本の報道はどうでしょう。沖縄や馬毛島の基地反対の住民を取材して、態度がはっkりしないあるいは政府よりの首長を批判するばかり。中国の脅威に対してはまるで存在していないように扱っています。安全保障に対して日本はどうすべきかをおなざりにしていることを平和ボケといいます。マスコミは自分自身が平和ボケしていることに気づいていないのが滑稽ですね。

三日目のおでん温め書に耽る(山戸暁子)

2022年8月21日 (日)

「日本外交の課題」(谷内正太郎)を読む

外務官僚で初代国家安全保障局長だった谷内正太郎(やちしょうたろう)氏の講演録「日本外交の課題」を読みました。とはいえほとんどは中国問題でした。以下は要約です。

ハーバード大学のグレアム・アリソン教授は「トゥキュディデスの罠」という言葉を提唱しました。アテネとスパルタの覇権争いのことです。教授によると「トゥキュディデスの罠」に相当する対立は過去500年間で16回あり、そのうち12回は戦争に発展しました。現在の米中関係もこれに相当する宿命的な対決と言えます。

アメリカはもともとは中国に好意的でした。清がアヘン戦争に負けて「屈辱の100年」を過ごしている間も常に同情的。戦後は鄧小平の改革開放を支持し、「中国は経済発展を遂げれば民主化し、人権を尊重する国になる」と期待。それだけにアメリカは「中国に裏切られた」という気持ちが強い。

今や中国は尊大となり、国際会議の場で小国が中国と相容れない意見を述べると「小国の分際で偉そうなことを言うな」と露骨に言います。

今の中国共産党はマルクス主義を信じていません。中国共産党は中国の夢(小康国家:それなりにゆとりのある社会、そして社会主義現代化強国)の実現のためならどんな言動も許されると考えていません。

トランプ大統領のときに始まった広範囲に渡る高額の関税は現在も維持され、バイデン政権は相互依存を深める米中の経済を切り離す「デカップリング」を進めています。しかし、デカップリングを受け入れているのはアメリカ企業の1割に過ぎず、米中対立が激化しても、両国経済のデカップリングは進むとは限らないようです。

中国は積極的に海洋進出をしています。2007年に、中国海軍高官が「太平洋をハワイで東西分割し、中国が西側を、アメリカが東側を管轄することにしよう」とアメリカ太平洋軍司令官に提案しました。ここで注意が必要なのは、インド洋も中国の管理下に置くつもりだったことです。アメリカは当然に反発しました。

中国は第一列島線(九州、沖縄、台湾、フィリピン、ボルネオ島)を2010年までに掌握し、第二列島線(伊豆諸島、小笠原諸島、グアム、サイパン、パプアニューギニア)を2020年までに掌握することを目指しました。さらに南シナ海、マラッカ海峡、インド洋、ペルシャ湾に至る要衝に拠点を整備し、港の経営権を握る「真珠の首飾り」戦略をとっています。

一方で「一帯一路」戦略にも着手し、中国西部から中央アジアを経てヨーロッパに至る陸路(一帯)の国々と、中国沿岸部から東南アジア、アラビア半島、アフリカ東海岸に至る海路(一路)の国々に計1兆ドルの資金を貸付けて大規模インフラを建設しています。

中国はよく核心的利益を表現しますが、この利益は「香港、台湾、ウイグル、チベット、南シナ海、東シナ海」ですが、今後も拡大する可能性があります。

現在の中国のGDPはアメリカの7割ですが、2028年にはアメリカを追い抜き、2035年には中国と香港のGDPは日米のGDPを上回ると予想されています。中国はドローン、量子暗号、5Gなどで世界最高峰の技術を持っています。

しかし、軍事力ではアメリカの軍事費は中国の3.2倍で、実戦経験でも中国を圧倒しています。空母はアメリカが20雙、中国は2雙しかありません。ただし、東アジアに限定すると中国の軍事力は日米台湾の合計を遥かに上回ります。

日本には、超大国を目指すという道はありませんが、小国として慎ましく生きていくという選択肢もありません。国力を磨き、国会師を明確にして国益を守り、国力に応じた範囲で国際社会に貢献し、差mざまな分野でリーダシップを発揮することです。

国益を守るということは、国民の生命と財産を守る安全保障であり、日本の歴史・伝統・文化・精神を守り育てることであり、自由・人権・民主主義・法の支配など、普遍的な価値にコミットすることです。

台湾有事については、日米が中国の軍事圧力の高まりを黙認すると、中国は間違いなく武力で台湾を占領するでしょう。台湾人の6割は、「台湾有事の際、日本は助けに来てくれる」と回答しています。日米が「台湾有事のときには必ず台湾のために行動する」ということを中国に認識させることが重要で、そのことが抑止力になります。日本の自衛隊は戦闘するよりも、アメリカ軍の後方支援が期待されるのではないでしょうか。

冬の月シベリヤ語る父はなく(石見みつを)

2022年8月11日 (木)

夏の奄美大島 路線バスの旅(2日目 宮古崎、マングローブカヌー体験)

8月7日(日)

大河ドラマ「せごどん」のオープニングシーンで有名な宮古崎は大和村にあります。しかし、ここに行きたくても島内を走る「しまバス」は大和村行の路線がありません。調べてみると大和村が大島タクシーに委託している大和村直行バスがありました。そこで午前中に宮古崎、午後に住用町のマングローブでカヌー体験をするという欲張りな行程を企画しました。今日の満潮の時刻は午後3時。満潮時刻にならないとマングローブの奥までカヌーでは行けないからです。事前準備は大事ですね。

午前8時40分に名瀬市街地にあるウエストコート前バス停で乗車、9時5分に国直バス停で下車。料金は700円でした。国直バス停からは徒歩で宮古崎を目指します。まず国直海岸を見てみました。キャンプをしていた親子連れがビーチで遊んでいます。横目に見ながら歩きます。それから200mぐらいはアスファルト舗装の車道のため、とても暑い。日陰もほとんどありません。

車道を10分ほど歩くと宮古崎駐車場があり、そこからは遊歩道になります。遊歩道の周囲は樹木が生い茂っているため木陰がたくさん。しかし、油断しないようにこまめにポカリスエットを口にしながら歩きます。

午前10時にようやく宮古崎に到着。記念写真をとって引き返しますが、途中で手足がしびれてきました。同行していた娘の話では塩分不足の典型的な症状とのこと。水ばかりではだめみたいですね。

午前10時35分に国直のバス停に到着しました。へとへとだった私は、コンクリートで囲われたバス停でしばらく休憩します。午前11時にバスに乗車。11時25分にウエストコート前バス停に到着。近くのコンビニでおにぎりを1個買って栄養補給。

つぎはマングローブを目指します。12時6分にウエストコート前バス停でしまバス(せとうち海の駅行)に乗車。12時53分にマングローブパークバス停に到着。カヌー体験の受付を行い(料金2000円)、館内のレストランで昼食をとりました。塩分不足の私はカツ丼、娘は鶏飯ボール。その後は隣接する世界自然遺産センターの展示を見て時間をつぶしました。

午後2時になったらマングローブパークの展望台へ。折り返してカヌー発着場に午後2時15分に到着。ライフジャケットを着用したりして、午後2時30分にカヌーに乗って漕ぎ出しました。

マングローブのトンネルをくぐって記念撮影。午後3時30分に体験は終了。このとき私は握力がなくなっていて左手は痙攣していました。思ったよりハードですね。

館内に戻り冷房の効いた休憩室で体を1時間ほど休めます。午後4時24分にマングローブパークバス停で乗車。午後5時に名瀬郵便局前バス停に到着。ああ、疲れた。でもいい体験ができて満足です。

2022年8月10日 (水)

夏の奄美大島 路線バスの旅(1日目 古仁屋、加計呂麻島)

奄美大島にやってきました。せっかくなので、路線バスで島内をできる限りまわりたいと思い、行程を組み立てました。島内は「しまバス」が運行しています。車内には「バスもり」の「バス乗り放題」が案内されていました。

1日乗り放題は料金が2100円、2日乗り放題だと3150円、3日になると4200円です。今回は土日の2日間でしたので、2日乗り放題を購入しました。いざ、奄美満喫の旅へ!

8月6日(土)

9時14分に奄美市役所前バス停で乗車、10時46分にせとうち海の駅バス停で下車しました。せとうち海の駅にはレストランがあり、ここで海鮮丼(小)を注文。500円でしたが十分満足できました。ここで加計呂麻島(生間港行、瀬相港発)までの往復フェリー券を購入しました。

海の駅から1分歩くとフェリー乗り場(古仁屋港)。11時40分発のフェリーかけろまに乗船し、正午ちょうどに生間港に到着。ここの待合所でレンタサイクルを扱っています。マウンテンバイクを借りました。4時間で3000円です。

生間(いけんま)から諸屯(しょどん)、野見山(のみやま)、於斉(おせい)を経由して、午後2時10分に目的地の瀬相(せそう)に到着しました。この間、いくつもの峠を越えました。電動アシストのおかげで登りは時速10キロ、下りは時速20キロ。おそらく30キロを走破しました。瀬相港の待合所でマウンテンバイクを返却し、近くの物産館でソフトクリーム(350円)をいただいてようやく一息。

午後2時40分に瀬相港を出発。午後3時5分に古仁屋港に到着。海の駅で「水中観光船せと」の乗船券(2500円)を購入しました。「せと」は午後3時30分に古仁屋港を出発し、美しいサンゴや熱帯魚が群れている海中をクルージング。午後4時10分に古仁屋港に戻りました。

しばらく古仁屋の街をぶらぶらして、午後5時12分にせとうち海の駅バス停にて乗車。午後6時29分に奄美市役所前に到着しました。奄美市内では島料理で舌鼓。

充実の一日でした。翌日は宮古崎散策とマングローブのカヌー体験です。それは次回のブログで。