2019年8月30日 (金)

お腹をこわしたときの私の対処法 ムツゴロウの絶食 

今週はずっとお腹がしくしくと痛みます。火曜日から水のような下痢が続いていて,体に力が入りません。

そういう訳では昨日はお昼は絶食。お昼休みは何も口にせずに職場のイスに腰掛けたまま一眠りしました。夜はドライカレーをご飯一膳分だけ。今日の朝はいつもようにごはんとみそ汁にヨーグルト。仕事もお休み。外は大雨。ゆっくり自宅静養と決めました。

下痢になることが年に何度かあります。そういうときは私は絶食します。そもそも食べていなければ出すモノもない,という考え方です。長いときは丸一日,水分しか口にしないこともありました。これでほとんどは解決します。(でも実際には便の半分以上は,食べ物の残りかすではなくて「腸内細菌」だとの説があるそうですね。そうなると???ですけど)

なぜ絶食するようになったか? 私が子どもの頃,畑正憲(ムツゴロウ)の動物王国のことが子ども向け雑誌にマンガで掲載されていました。漫画家は川崎のぼる,雑誌は「コロコロコミック」だったと思うのですが,記憶が定かではありません。そのマンガのなかで「誰もが下痢を経験する。こんなときは家族が美味しそうに夕食を食べているのを眺めながら,ぐっと食べるのを我慢すると翌日は治っている」というエピソードが描かれていました。

当時私の家には「ビオフェルミンs」が常備薬としてあり,お腹の調子が悪いときはいつもこの錠剤を親から飲まされていました。でも,このマンガを読んでからは文字どおり,絶食を実践するようになりました。

すると効果がてきめん。錠剤とは比較にならないほど回復が早くなりました。以来,基本的には下痢の対処法イコール絶食です。

いろいろな情報を見ると「絶食は体の栄養不足を招くので好ましくない」とありますが,私は40台。普段はきちんと食事をとっていますので,一,二食抜いたぐらいで倒れるわけじゃないしと思ってまともに受け止めていません。「好ましくない」がどの程度か分かりませんが,三日も四日も絶食するような過激なことをするほど意思は強くありませんし,もし何らかの病気であれば,「これはおかしい,いつもと違う」と自分で気づくはずです。

大事なことは自分の体調,自分の食欲を自分で認識することです。絶食して気分的に爽快になれば,それは自分の体に必要だからだと思います。そして食欲が回復すれば体が欲しがるものを欲しがる分だけ摂取する,これもまた自分で判断することです。

自分の体のことを素直に受け止めず,「誰々がこう言っているから」とか「何々にこう書いてあるから」とか「これこれというテレビ番組で紹介されていたから」というだけで,自分の本能に反することを過剰に実践することがよほど危険だと思います。

糖質制限ダイエットも今は聞かなくなりましたね。人間の体は変わらないのに,健康法やダイエット法がころころ変わるのは,それだけ健康法やダイエット法が間違っている(効果がほとんどない)という証明です。なぜそれに気づかないのでしょうか?

なくてもいいものにこだわる週末を探してやまぬホースラディッシュ(俵万智)

2019年8月28日 (水)

日本食のレベルが極めて高いのは規制の緩さにある byホリエモン

「君はどこにでも行ける」(堀江貴文)を読みました。ホリエモンが世界中を旅して,それぞれの印象を語っているエッセイです。読んで思うのはアジアの各都市が急速に成長しているということ。

私が学生時代の頃(30年も昔のことですが),台湾などの行けばお腹いっぱい食べても300円。というぐらい日本の円が強かった。当時は中国も外国人向け人民元紙幣があるぐらい内外の格差が大きかった。それが今では旅行しても物価はほとんど日本と変わらない。そりゃあそうですよね。私もここ5年で台湾,上海,香港,マカオと旅行しましたが,どこで食べても金額は日本の飲食店と差はありません。安いのは交通費ぐらいかな(特に路線バスはほとんどが100円未満)。

サービスの質はやはり日本が上と思うことが多い。でも一番感じるのは料理のおいしさでしょうか。これはホリエモンと同意見です。私は日本人の職人気質がその理由だと思っていましたが,ホリエモンの分析は違います。

「日本食が世界的にみて極めて高いレベルに発展したのは,規制の緩さが大きな理由のひとつだ」「日本は実は,飲食店を開くためのハードルがとても低い」「一方で欧米は新規の料理店をひらく規制がめちゃくちゃ厳しい」「営業時間についても,日本のように一部で深夜営業も認められている国や都市は少ない」

日本では新規参入が容易なだけに競争は激しい。新規開店の9割は1年以内につぶれるといいます。そういう競争があるからこそ,おいしいお店,サービスの質が高い店が日本は多い。なるほど,納得です。

日本しか知らないと海外で飲食店の開店に規制があるなんて思いもしません。日本で普通なことは海外でも普通(というか存在しない制度を察することはまず不可能)と思いますからね。

ホリエモンのいうことは軽薄というか,すんなり共感できないこともありますが,彼の生き方には一種の清々(すがすが)しさを感じます。そしてなにより現場感覚がすごい。

実際に目で見て体験して,日本の経済力は世界各国に追いつかれ,追い抜かれているという感覚がリアルに伝わってきます。日本の経済力が相対的に低下し,相対的に日本の物価が安くなったからこそ外国人観光客が急増しているという現実がよく理解できます。

ここ数年は日本を絶賛するバラエティ番組が目立ちます。気分がいいですよね。ホリエモンのいうことは耳が痛い。怒り出す人もいるでしょう。でも現実を認めなければ何も始まらない。すくなくとも,現実を認めない人はホリエモンを批判する資格はないでしょうね。

外遊び終えたズボンを洗うとき立ちのぼりくる落葉の匂い(俵万智)

2019年8月27日 (火)

クラフトビールが目当て? ジャズ演奏が目当て? それとも・・・

先日,妻が「YONAYONA ALE(よなよなエール)」という缶ビールをもって帰ってきました。妻はアルコールが大嫌い。だからこそ珍しい。

この缶ビールの表示をしげしげ眺めました。製造会社は軽井沢のヤッホーブルーインク。聞いたことのない会社です。飲んでみてパンチはまあまあ。でもジュッとくるあの炭酸水のような刺激がなくて,どちらかというとただの水のようなのど越し。ちょっと物足りないな。

クラフトビールが今ブームだそうですね。この夏,天文館でも浴衣を着た人にはサービスで,という鹿児島県内のクラフトービールの屋台が集まったイベントがありました。今週もまた別のイベントをやっているみたいですね。

先週は鹿児島中央駅前の東急インに行きました。目当てはジャズの生演奏。たまたま職場のチラシで知りました。ジャズが好きというほどではありませんが,仕事帰りに生演奏を聞きながらビールっていいな,と。

午後7時前。その店に入ると窓際の席を案内されました。せっかくなのでピアノに一番近いに席に腰掛けました。ガラス越しには電車通り。会社帰りや天文館に向かう人たちが大勢行き交います。

飲み物のメニューをみるとクラフトビールのオンパレード。どうやらクラフトビールフェアの期間中だったようです。せっかくなので4種類を一度に飲める試し飲みをお願いしました。つまみはドライフルーツとチーズの盛り合わせ。全部で1300円程度。

クラフトビールは,ジャズベリー,オンザクラウド,496,金シャチ名古屋赤味噌ラガーの4種類。いちばん美味しかったのはオンザクラウド。まるでグレープフルーツジュースのようです。

ビールを楽しみながら外を眺めていると,小太りの女性と目が合いました。次は眼鏡をかけた男性。そしてまた別の小太りの女性が私を眺めながら,ガラスの向こう側を歩いて行きました。

ジャズピアノの演奏が始まりました。オーバーザレインボーを皮切りに,スタンダードなナンバーのオリジナル編曲を5曲。腕前は可もなく不可もなくといったところでしょうか。店内のお客からの拍手は寂しかったものの,私は30分のミニ演奏会を楽しめました。

演奏が終わり,レジに向かおうと周りの客席をみてびっくり。30歳前後の女性が2人,男性が1人いたのですが,その3人とも私がガラス越しに目が合った人たちでした。

この週に放送された「明石家さんまのほんまでっかTV」のなかで,「イケメンや美女がレストランに入るとウェイターは窓際を案内する」と専門家が紹介していました。イケメンが窓から見えるところにいると,外を歩くお客さんはこのレストランを高級だと思い,引き寄せられるとのこと。

50歳手前の私をイケメンと思うのはずうずうしいにもほどがありますが,こういうことがあるとまんざらでもない気持ちになります。久しぶりの快い一夜でした。

たて波とよこ波交差するところアンプの上に立つ缶ビール(俵万智)

2019年8月26日 (月)

「仕方がない」で片付けない ゴール前の攻防を理詰めで考える

ユナイテッドのゴールキーパー,アンジュンスは積極的に足技を使います。ペナルティエリアからはみ出てプレーするのけっこう冷や冷やもの。ときには相手FWをかわしてからパスを出します。先日の横浜FC戦ではボールのタッチミスから失点。ゴールを決められた後はショックでグランドに倒れていましたが,これが薬となるかしら?

さて,試合でゴールキーパーが犯す重大なミスは,こんな技術的なミスと戦術的なミスがあります。実は技術的なミスは1~2割に過ぎません。ほとんどは戦術的ミスです。たとえばクロスに対してGKが飛び出したがボールに触れなかった。GKがスルーパスをカットしようと前に出たが届かなかった。

「日本サッカーを強くする観戦力」(清水英斗)では,こういう場面を日本人の著者は「ぎりぎりの瞬間的な判断だから,ミスが増えるのも仕方がない」

しかし,ドイツ暮らしの長い日本人はそんなことは言わない。「練習の仕方ですよ。今はまだゴールキーパーグループだけでの練習が多すぎるんです。技術はそれで上がるけど,戦術的な判断はチームの連携が必要なので,ゴールキーパーとフィールドプレーヤーが一緒に練習しないと向上できません。そういうチーム練習の割合を増やせば解決できます」 解決策が必ずあるというのがドイツ流の思考です。

ここで,ストライカーのプレーを戦術的に整理してみます。同書では「ファー詰め」を取り上げています。味方選手がシュートを撃つときは,基本的にファーサイドからこぼれ球を狙って詰めるのがセオリー。

なぜか? 理由その1 シュートが枠をハズレてゴール前をクロスに横切った場合にも押し込みやすい。 理由その2 ニアより広角度であり,相手の死角からフリーで押し込みやすい。理由その3 ゴールキーパーがはじいたとき,絶好球はファーにこぼれる傾向がある。

このセオリーを一歩進めたのがマルチェロ・リッピ監督。「ファー詰めが有効であることは間違いない。だったらシュート自体をすべてファーサイドに打てばいい」すごい発想ですね。ここまで理詰めで考えていくんですよ。

ユナイテッドの攻撃を考えてみましょう。まず速攻の時。そもそもフォローがないことが多すぎます。ゴール前に詰めるのがせいぜい1人。多くて2人。速攻の時はアカッター陣全員がゴールに全速力でダッシュしてほしい。

そして遅効の時。クロスが上がってもファーサイドに選手がいないシーンが圧倒的です。顕著なのはコーナーキックのとき。藤澤がペナルティエリアから離れたところにいますが,それでもポジションはゴール正面。コーナーキックの遠い側のペナルティエリアの肩周辺には誰もいません。要はゴール近くにポジションを取り過ぎるのです。前に出るスピードがトップになったときにボールにワンタッチするぐらい,ゴールから離れた位置にいてくれよ。

シーズン半ばを過ぎました。今後のユナイテッドの順位は,攻撃陣がどこまで決定力を上げることができるかできまります。今まで攻撃がうまくいかないと「仕方がない」で終わらせていませんか? もっと攻撃の質を上げる方策はあるはずです。

一方,私は多くのファンが指摘するようなディフェンスの改善(例えば失点が多いカウンター対策にセンターバックを増やすなど)を期待していません。これまでの試合を見る限り,ユナイテッドの決定力があがれば,カウンターからの失点も自ずと解決する問題だと考えています。

しぼるほど雨を降らせし空晴れて女の腹のような雲見す(俵万智)

2019年8月25日 (日)

サッカーはチェスのようであり,マージャンのようでもある

昨夜の鹿児島ユナイテッドは横浜FCに1-5の完敗でした。大宮戦(0-6),徳島戦(2-5)とアウェーのゲームでは大量失点が続きます。どうしちゃったんでしょう?

「日本サッカーを強くする観戦力」(清水英斗)を読みました。日本人選手の決定力,ストライカーとしての資質について書かれた本ですが,おもしろい記述がありました。

「オープニングは書物のように,ミドルゲームは奇術師のように,エンドゲームは機械のように」オーストリアのチェス選手,ルドルフ・シュピールマンの言葉です。チェスについての言葉ですが,これがサッカーにも当てはまるといいます。

書物とは定石のこと。チェスの初手から数手までは定石通りに進行します。サッカーもビルドアップでのパス回しはどのチームも大差ありません。もし相手がプレスを掛けてきたら中盤を飛び越えてFWにロングボールを蹴り込みます。

奇術師とは意外な手のこと。チェスでもサッカーでも中盤では,相手に驚きや焦りを与える意外性が必要になります。

そして本書のテーマである終盤。チェスだと終盤はあと何手でチェックメイトできるか,必ず正解があります。それを見逃さずにモノにすることができるかどうかが勝敗の分かれ目です。サッカーで言えばシュート(ゴール)がこれに当たります。ストライカーはいろいろな選択肢を考えるよりも,ある意味で機械。決まりきった結論に向かって淡々とフィニッシュするシンプルさが重要になります。

鹿児島ユナイテッドでこの資質を持つ人がいるだろうか? と考えてしまいます。韓,萱沼,酒本,牛ノ浜,五領,枝本などいずれも角度がないところからでもシュートをどんどん狙うタイプ。特に韓は,東京ベルディ戦では寝転びながらシュートを決めました。こういう泥臭さがあります。

しかしユナイテッドは攻撃はするのに得点力が伸びない。これはなぜなんでしょう?

サッカーはチェスに似ていますが偶然性の要素が高いことを考えると,マージャンのようでもあります。技術や読みは大事ですが,運の要素も必要です。同書にも雀士のコメントがでていました。ただ,私が思うのはこの本とはまったく違います。

「Aクラス麻雀」(阿佐田哲也)では,「満貫に振り込んだ次の局はベタ降りすべし」というセオリーが紹介されていました。マージャンで一番怖いのは「半ツキ」です。もうちょっとで上がれるというときに振り込んでしまう。上がれそうで上がれない。こういうときは大負けします。

ユナイテッドの試合も攻撃に人数をかけて押しているのに,カウンターを浴びたり,不用意にパスをカットされて失点するケースが目立ちます。しかも最近は連続して失点する傾向が顕著です。こういうゲームが私に言わせると「半ツキ」状態です。

これを脱するためには「ベタ降りすべし」です。不用意に失点した直後は,ボールを保持しないという選択もありではないでしょうか? ロングボールを蹴り込んで相手にボールを渡し,プレスをかけて奪いに行くことをゲーム運びの約束にするのです。今まではボールを奪われて慌てていましたが,あらかじめボールを渡す作戦だとわかっていれば慌てません。そして時間を決めて作戦をもとのポゼッションスタイルに戻すのです。

ユナイテッドの決定力不足はもうひとつ,ゴール前でのポジショニングの問題もあると思いますが,今日は文章が長すぎるのでここまでにしました。次回をとっておきます。

こんなよい月を一人で見て寝る(尾崎放哉)

2019年8月24日 (土)

シバン虫大発生の謎 今年の夏は虫たちが変だった

今日は錦江湾サマーナイト花火大会。雨の合間を縫って開催できてよかったですね。そういう私は一度も会場にいったことはなく、今年もまた、とおくから聞こえる花火の音をかすかに聞くだけです。

いよいよ夏も終わりだなと感じます。ちょっと早いかもしれませんが、今年の夏を振り返ると、虫たちの様子が変でしたね。

一番驚いたのがシバン虫です。漢字で書くと死番虫。体長数ミリの黒い甲虫です。8月の初めぐらいから家の中で発生。しょっちゅう電灯に飛んできていました。蚊取り用のベープマットをつけると洗面所や大きな窓の下に、毎日10匹近く死骸が転がっています。家族で「この虫はどこから来たんだろう」といつも話をしていました。

妻がネットで調べて始めてこの虫の名前を知りました。どうやら植物性のものなら何でも食べるらしく、畳の中やインスタントコーヒーの瓶の中にも入り込む厄介者だとか。

「これじゃあバルサンをたくしかない」と妻は意気込んでいたのですが、玄関脇でベープマットを終日つけるようになって3日目ぐらいから姿を見かけなくなりました。ああ、よかった。我が家にはハエトリグモがたくさんいるのですが、一度も殺したことがありません。バルサンをたくとクモも死んでしまうので使いたくなかったんですよね。

アリは家の中では2,3日程度見かけただけでした。アリ用のコンバットの効き目が抜群だったようで、置いてすぐに姿を見せなくなりました。いつも調理用の砂糖がはいった箱に群がるのですが、今年はまったくなし。夜、私の体をアリが這ってまわって眠れなかったのは1日だけ。助かりました。

蚊。今年は異常に少ない。気味が悪いくらいです。

シロアリ。我が家のトラップに2ヶ月連続でかかっていました。家を建てて10年になりますが初めてのことです。駆除の薬剤をお願いしていますが、周囲の環境に変化は見られないだけに不気味です。

イラガの幼虫。いつもは庭の植物の葉を食べるのですが、今年は異常に少ない。せいぜい数カ所しかありません。冷夏長雨のときは植物には病気がはやり、高温晴天が続くと害虫が大量発生するのが常ですが、今年は当てはまらないようです。

キオビエダシャク。幼虫はイヌマキの葉を食べる害虫です。蛾の一種でオレンジ色の羽に黒い模様がついています。毎日のように我が家の窓にぶつかります。ぶつかるのは例年のことですが回数が多すぎる。今年の発生量は相当多いのかも。我が家の庭にイヌマキはありませんが、近所のイヌマキには大量に卵を産み付けているんでしょうね。

今年の夏は、長雨が続いて梅雨明けが遅かった上に、その後は高温・晴天が続きました。これまでの虫の生態と違うのも、天候と何か関係があるのかもしれません。

「殺虫剤ばんばん浴びて死んだから魂の引き取り手がないの」(穂村弘)

2019年8月23日 (金)

しがない公務員の独身男性 定年前だけど老後の心配がないって?

先日小料理屋のおばちゃんと話をしたときのこと。

私は共働きで稼ぎは多い方だけど、今や娘が大学進学で毎年数百万円の出費が続いて大変ですよ、という話をしたらおばちゃんが突然「人は見かけにだまされちゃいけないよね」とのこと。どうしたの?

「この店にくる常連さんで、元気のない、しょぼい顔をした独身の公務員がいてね。今は親の介護が必要だからといって最近はあまりこなくなっちゃったけど。その人とたまたま定年後の話になったとき、『僕はビルをいくつも持っているからお金の心配なんてないですよ』だって。風采の上がらない人だけど経済感覚はしっかりしているわよね。奥さんや子どもがいない分、稼ぎは不動産に投資をしてきたんだから。独身男性だったら飲み代とか女にお金を使うからね」

まったくおばちゃんのいうとおり。風采の上がらない公務員は偉い! イソップ童話の「アリとキリギリス」を連想します。「わかっちゃいるけどやめられない」のが男の性(さが)です。

私は結婚するまでほとんど貯金がありませんでした。あるだけ使っていました。それが結婚してからは共働きということもあり貯金が増えました。そんな経済感覚がしっかりした妻のおかげで家も建てることができました。妻に感謝です。

財テクと言えば1年前に始めたのがイデコ(個人型確定拠出年金)です。毎月1万円積み立てています(せこいでしょ。私のおこづかいの範囲でしかできません)。うれしいのは必要経費と認められて2万円還付されること。つまり、一度所得税として源泉徴収されたお金が返ってくるのです。年12万円投資して2万円返ってくるので、これだけでもすごい利回り(16%超!!)です。そして投資商品もさまざま。定期預金もありますが、私は海外経済インデックス(世界の株式市場全体に投資するもの)にしました。

今からじゃ遅すぎるって? これでも定年準備の財テクセミナーで知ったその翌日に申し込みをしたんですがねえ。えっ、情報に疎(うと)すぎる? そりゃまあそうかもしれません。

でも、独身公務員のような不動産運用は私には無理ですね。子どもを育て、仕事もしながら、不動産を見て回ったり、維持管理や家賃の心配なんてできますか? やはり自分にあった財産運用があるんじゃないかしら。

いつからが夏だというのではないのだし私の夏は明日からにしよう(永田紅)

2019年8月22日 (木)

日韓関係の悪化だからといって 今、韓国人観光客誘致に金出すの?

日本と韓国の関係が悪化しています。鹿児島ーソウル戦の一時運休など全国各地を結ぶ路線において、「韓国」の航空会社は運休を発表しています。原因は「韓国人」の搭乗客が減少しているから。

日韓関係の悪化を伝える夜のニュースでは、「両国」の冷静な対応を呼びかけていました。おいおいちょっと待てよ。

「韓国」国民の多数は日本製品の不買運動や輸出手続きの厳格化に抗議活動を行うなど確かに熱くなっています。もう狂信的なぐらい。それに比べて「日本」国民のほとんどは冷静です。韓国製品の不買活動なんて聞いたことがありません。日本国内では徴用工判決や慰安婦援助財団の清算に対する抗議活動を報じるニュースに接したこともありません。

「冷静になるべき」は「韓国」であることは一目瞭然でしょう。なぜ「日本」も「さらに冷静になる」必要があるのか、ちょっと考えてみました。

まず韓国における不買運動です。日本製品が商品棚から撤去されるのは日本企業からすると市場の縮小を意味するわけですから損害必至です。ここで「さらに冷静」になって、損害を受けた日本企業は契約をキャンセルにした韓国企業を契約不履行で訴えましょう。感情ではなく「冷静」に法律で解決するのです。

次に韓国からの観光客減少です。韓国からの観光客は確かに無視できない割合を占めています。でも「一時運休」というのがいやらしいですね。秋の観光シーズンはただでさえ外国人観光客が多数押し寄せます。この時期だけに韓国人が来ないとなると混雑がずいぶん緩和されることでしょう。嫌みで言うとありがたいことです。

そして、今の時期にいちばんやってはいけないことが、韓国からの観光客誘致にお金をつぎ込むこと。相手が一番カッカしているときに親切にするなんて無駄金です。人間関係でも悪化したら冷却期間をおいて怒りが静まってから、お茶をだすなりして徐々に関係を修復するのが本道でしょう。相手が怒っているときにお金を出したり、余計なサービスを提供することは、「怒った者勝ち」という印象を相手に与えてしまい、解決をますます困難にしてしまいます。

ましてや今回のケースは韓国人自身が日本に行くことを拒否しているわけです。行きたいけど(円高などの経済的要因で)行けないというケースとは全く違います。それがわかりませんか?

行政のトップにいるような、大局的な考えができる「冷静」な人ならばすぐにわかりますよね。韓国の観光客が来ないのならば、他国の観光客を誘致すべきです。わざわざ難易度が高い国に投資するより、誘致が容易な国に投資した方がずっと効果的なのは私でも容易に察します。今まで韓国人が来てくれたら「これからも韓国人が来ないといけない(呼ばなきゃいけない)」という発想は、成功体験にとらわれすぎていると思いますが、観光業界の方はどう思われますか?

カニサラダのアスパラガスをさけていることも今夜の発見である(俵万智)

2019年8月21日 (水)

甚平をもらってうれしいけれど・・・ なぜおばちゃんが持ってるの?

仕事帰り、久しぶりになじみの小料理屋に顔を出しました。

おばちゃんはもう70歳を過ぎているのに腕を露わにしてすずしそうにしています。あらかじめクーラーをつけていたので店内は随分涼しく快適でした。

お通しは、ニガウリと豚肉の炒め物、らっきょうの醤油漬け、鰯の干物、アボカドと奈良漬けのスライス、ツナポテ、スライスした冬瓜の和え物。ビール(熟選)の中瓶を1本お願いして、すぐにほろ酔いになりました。

おばちゃんも機嫌がよかったのか「あんた、甚平をもっていかんね?」と提案してきました。まだ誰も着ていない新品で、今日はそのまま日に干していたそうです。スーツの上に試着すると私の体型にぴったり。ありがたく頂戴しました。

でもおばちゃんは一人暮らし。なぜ新品の甚平を持っているのか訊ねてみました。「そりゃあ、もらいものだから・・・」と口を濁して「札もついてて新品でしょう」と話を変えてきました。

よくよく考えるとおばちゃんが世話をしていた親族の男性が最近亡くなり、その後始末に追われています。おそらくこの甚平は、その亡くなった方のタンスの肥やしになっていたものなんでしょう。今日はその片付けで忙しかったとぼやいていました。うすうすそう感じたものの、それは口にせずに丁寧にお礼を言いました。

日本人は物に魂が宿るという独特の信仰があります。だから新築の家を好むし、前の持ち主が不幸だったらそれを身につけるのを嫌がります。どうしても使うときはお祓いをしますよね。これがいわゆる「穢(けが)れ」と「禊(みそ)ぎ」です。

考えてみると私も遺品をいくつかもっています。一つは宝石箱。数年前に百歳で亡くなった大叔母からもらったものです。大きさは10センチ四方、外側をすき透った石で飾られています。もちろん私は使いませんがいまでも我が家の棚の引き出しに入っています。そしてもう一つが碁石と碁盤。これは祖父のものです。石は厚みがあって、そこらのプラスチック製品とは比べものにならないくらいの高級品です。邪魔になるので3階になおしてありますが、子ども達がみんな家を出て行ったら、棋譜を見ながら碁石を並べたいと考えています。

そして今日の甚平。いわれを考えると邪念が生まれますが、そんなことは気にせずに素直に着心地を楽しみたいと思います。

お通しのあとは鰹のタタキ、そして薄切り牛肉の焼き肉がでてきました。牛肉はグラム2000円!とか。値段どおりのおいしさでした。たまにはこういうお肉を食べても罰はあたらないでしょう。最後は口直しに桃。全部でしめて3000円でした。これで店は大丈夫なんでしょうか?

しづかなるみのりとなりし早稲(わせ)ありて水路の水の光る夕暮(板宮清治)

2019年8月20日 (火)

村上春樹の世界の評判 日本でのノーベル文学賞騒ぎとハーバード大学

村上春樹はまちがいなく日本有数のベストセラー作家です。1980年代、村上春樹の「ノルウェイの森」が日本国内で大ヒット。今では世界中で翻訳されています。おそらく海外進出をこれだけ熱心に取り組んだのも村上春樹が初めてではないでしょうか?

恥ずかしながら私は、当時から彼の存在を知っていましたが、初めて彼の作品「ノルウェイの森」を読んだのは40歳のとき。2010年頃です。福岡出張からの帰りに、博多駅のキオスクでたまたま文庫本を手に取りました。新幹線のなかで物語に夢中になり、自宅に着いてからも一晩中読み明かしました。

その後、村上春樹全集をすべて読破。全集以降の彼の作品も漏らさず読み続けました。彼の作品を読むと興奮するでもなく、涙を流すわけでもありませんが、なぜか心の中の波が静まるのです。そして静まった波の遙か奥底には、かすかなざわめきがずっと心に残るのです。

私は「ポストクロッシング」という絵はがき交換サイトの会員として、毎月10人程度、海外の会員と文通をしています。会員は旅好き、本好きという共通点があります。私が絵はがきを送るときにはいつも村上春樹のファンであることを書いています。すると、私も好きですとか、彼の作品を読んだことがあります、との返事が来ることがあります。

一番多いのは「海辺のカフカ」。最近では「国境の南、太陽の西」を読んだとのコメントがありました。ところが不思議なことに「ノルウェイの森」は一度もありません。ポストクロッシングの会員とは読者層が違うのか、それとも海外では人気がないのか。

先日、「ハーバードの日本人論」(佐藤智恵)を読みました。ハーバード大学のカレン・L・ソーンバー教授(専門は比較文学)のインタビューで村上春樹についてコメントしていました。佐藤の「村上春樹が人気があるのは、過去の日本がアジアに侵略したことに対して反戦的だからか?」との質問に対して「(そうではない)村上作品の中でもっとも人気のある作品のひとつは依然として「ノルウェイの森」なのです」と答えています(やっぱり人気があるですね)。

そして「村上春樹は物語の力を信じています。村上は物語を通じて、人間や社会が抱える普遍的な問題を問いかけます。喪失感や虚無感のそのひとつです。主人公はしばしば現実と異界を行き来します。そのうち読者は超現実的な世界に引き込まれ、この物語が日本を舞台にしていることさえ忘れてしまうのです」と分析しています。

村上作品を読んだ読者は「これは私のことを書いている」としばしば感じるそうですが、私にはこの感覚がよくわかりません。でもまあ、作品をどう受け止めるかは各人に委ねられています。そういうのもいいかも知れません。

ただ、私には許せない受け止め方が2つあります。一つは私の職場の同僚が村上作品をポルノ作品と捉えていること。たしかにセックスシーンはありますがちょっと誤解しています。村上作品は官能小説とは違って、私は性的な興奮を覚えません。描写は過激であっても、常にむなしさやかなしさを感じるのです。同僚はおそらく村上作品をまともに読まずにセックスシーンだけ読むのではと感じました。そしてもうひとつがここ数年のノーベル賞騒ぎ。文学賞がなくなって本当によかった。これはまた別の意味で、許せない受け止め方です。ただ本が売れてほしい。日本はすばらしい。村上ファンが喜んでいる。という文学とは別の観点に思えてならないからです。

ちなみに私は「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」と「国境の南、太陽の西」が好きです。また、私の心に最も深いダメージを与えたのは短編の「ねむり」です。この短編は怖くて再び手に取ろうという気持ちが起きません。理由はわかりませんがきっと不条理な結末が得体の知れない恐怖の存在をこっそりと教えているからかもしれません。

いつか君が歌ったこんな夕暮れのハートブレイクホテルの灯(あか)り(俵万智)