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2019年8月26日 (月)

「仕方がない」で片付けない ゴール前の攻防を理詰めで考える

ユナイテッドのゴールキーパー,アンジュンスは積極的に足技を使います。ペナルティエリアからはみ出てプレーするのけっこう冷や冷やもの。ときには相手FWをかわしてからパスを出します。先日の横浜FC戦ではボールのタッチミスから失点。ゴールを決められた後はショックでグランドに倒れていましたが,これが薬となるかしら?

さて,試合でゴールキーパーが犯す重大なミスは,こんな技術的なミスと戦術的なミスがあります。実は技術的なミスは1~2割に過ぎません。ほとんどは戦術的ミスです。たとえばクロスに対してGKが飛び出したがボールに触れなかった。GKがスルーパスをカットしようと前に出たが届かなかった。

「日本サッカーを強くする観戦力」(清水英斗)では,こういう場面を日本人の著者は「ぎりぎりの瞬間的な判断だから,ミスが増えるのも仕方がない」

しかし,ドイツ暮らしの長い日本人はそんなことは言わない。「練習の仕方ですよ。今はまだゴールキーパーグループだけでの練習が多すぎるんです。技術はそれで上がるけど,戦術的な判断はチームの連携が必要なので,ゴールキーパーとフィールドプレーヤーが一緒に練習しないと向上できません。そういうチーム練習の割合を増やせば解決できます」 解決策が必ずあるというのがドイツ流の思考です。

ここで,ストライカーのプレーを戦術的に整理してみます。同書では「ファー詰め」を取り上げています。味方選手がシュートを撃つときは,基本的にファーサイドからこぼれ球を狙って詰めるのがセオリー。

なぜか? 理由その1 シュートが枠をハズレてゴール前をクロスに横切った場合にも押し込みやすい。 理由その2 ニアより広角度であり,相手の死角からフリーで押し込みやすい。理由その3 ゴールキーパーがはじいたとき,絶好球はファーにこぼれる傾向がある。

このセオリーを一歩進めたのがマルチェロ・リッピ監督。「ファー詰めが有効であることは間違いない。だったらシュート自体をすべてファーサイドに打てばいい」すごい発想ですね。ここまで理詰めで考えていくんですよ。

ユナイテッドの攻撃を考えてみましょう。まず速攻の時。そもそもフォローがないことが多すぎます。ゴール前に詰めるのがせいぜい1人。多くて2人。速攻の時はアカッター陣全員がゴールに全速力でダッシュしてほしい。

そして遅効の時。クロスが上がってもファーサイドに選手がいないシーンが圧倒的です。顕著なのはコーナーキックのとき。藤澤がペナルティエリアから離れたところにいますが,それでもポジションはゴール正面。コーナーキックの遠い側のペナルティエリアの肩周辺には誰もいません。要はゴール近くにポジションを取り過ぎるのです。前に出るスピードがトップになったときにボールにワンタッチするぐらい,ゴールから離れた位置にいてくれよ。

シーズン半ばを過ぎました。今後のユナイテッドの順位は,攻撃陣がどこまで決定力を上げることができるかできまります。今まで攻撃がうまくいかないと「仕方がない」で終わらせていませんか? もっと攻撃の質を上げる方策はあるはずです。

一方,私は多くのファンが指摘するようなディフェンスの改善(例えば失点が多いカウンター対策にセンターバックを増やすなど)を期待していません。これまでの試合を見る限り,ユナイテッドの決定力があがれば,カウンターからの失点も自ずと解決する問題だと考えています。

しぼるほど雨を降らせし空晴れて女の腹のような雲見す(俵万智)

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