2019年11月20日 (水)

歩行者優先を知らないドライバー 車優先(?)を知らない野生動物

今朝の朝日新聞に交通事故の記事が載っていました。

「小学生3人はね 病院職員を逮捕」の見出しで,「熊本県の町道で,横断歩道を渡っていた小学生3人が軽自動車にはねられた。容疑者は『横断歩道の手前でとまってくれると思った』と話しているという。当時は5人で集団登校しており,信号機のない交差点の横断歩道を渡っていた」とのこと。

鹿児島県内のドライバーは知らないようですが,横断歩道は歩行者が優先です。横断歩道を渡ろうとする人がいれば,ドライバーは停車しなければなりません。ましてや横断中の歩行者がいるのに突っ込むなんて交通ルール無視もいいところ。赤信号で交差点に突っ込むことと同じです。

私はバスを利用していますが,バス停近くの横断歩道には信号機がありません。そのせいか,私が横断歩道を渡ろうとしていても車は1台も止まりません。この10年で10台もいません。同じ時間に同じ場所を通過する人なのでほぼ決まった人たちでしょうけど。非情な(交通ルールに無知な)人ばかり。

この現象は鹿児島市内だけにとどまらず,熊本県でも同じだったんですね。ドライバーは対向車やバイクに注意を向けても,歩行者のような弱者は止まって当然,まさか死ぬようなバカなまねはしない(車が近づいているのに道路にでてこない)だろう,と高をくくっているんでしょう。

また,今日のネットニュースでは,鹿児島市春山町で18歳の会社員が横断歩道を横断中に大型トラックにはねられて死亡したとの記事もでていました。見通しのよい交差点にもかかわらず,ドライバーは「歩行者にぶつかって初めて気づいた」とコメント。漫然運転といわずして何という。

歩行者は「自分の命は自分で守る」,「自分の命を交通ルールに委ねない」ことが大事ですね。

そしてドライバーの皆さんもどうぞご注意を。同じ過失運転致死でもルールを破った(横断歩道にいる歩行者を轢き殺した)方が罪が重いんですよ。鹿児島県内のドライバーは知らないでしょうけど。

話は全然違いますが,道路を走るとタヌキやネコの死骸を見かけます。数日前は野ウサギの死骸が転がっていました。私の住まいは鹿児島市とはいえ郊外ですが,まさかウサギまでいるとは。妻にこの話をすると「あら,すぐそこのガソリンスタンドに入ったときにはイノシシのおしりが見えてたよ」

野生動物も車に注意! ドライバーも野生動物に注意! 私の田舎では軽自動車が道路を走行中にイノシシにぶつかり,廃車になりました(イノシシはそのまま逃げていったそうです)。

赤信号みんなで渡ればこわくない(ビートたけし) 

2019年11月19日 (火)

香港の学生運動は暴徒化の一途 2年前に旅行したときの香港はどこに?

香港の動乱が続きます。今夜のニュースでは大学に立て籠もった学生400人が逮捕されたとか。

私と娘が香港に旅行に行ったのは2年前の夏休みでした。格安航空会社の香港エクスプレスで鹿児島空港からひとっとび。香港空港で市内の公共交通機関乗り放題のチケットを購入し,HISで予約したネイザンロード近くのホテルに3泊しました。

1日目はクーロン半島側の屋台の並ぶ通りを練り歩き,2日目は高速船でマカオに渡り,路線バスでマカオ市内の世界遺産を巡って,夜はビクトリアピークで香港の夜景を楽しみ,3日目は香港島のシティースーパーなどでショッピング。あらかじめガイドブックで目星をつけていた値段の安い大衆食堂をあちこち寄って,点心や麺類,サンドイッチにエッグタルトなどを食べました。

当時,娘は高校1年生。父親との2人旅でお互いに話が弾むわけでもなかったのですが,本人はそれなりに感じるところがあったようです。今でも「香港はよかった」と言っているぐらいですから。

そんな娘が最近の香港の様子を見て嘆いていました。「あのときはあんなにのんびりしていたのにどうしてこんなに変わっちゃったんだろうね。私の彼氏の話では,香港に行く日本人観光客は8割減らしいよ。香港から逃げ出す人もたくさんいるみたいだよ」

「ひょっとしたら,あのときの香港に戻ることはもう無理かも知れないね」「えっ,どうして」「これを機会に中国共産党が香港の活動家を弾圧するかもしれない。そうなると後戻りはできなくなるからね」

意外そうな顔をする娘に,歴史上の事実を伝えました。「日本が中国で戦争をしたときの死者よりも,中国共産党が殺した中国人の方が多いんだよ。今でもチベットや内モンゴルで強制収容所に入れられる人がいるでしょ。共産党は恐ろしいからね」

日中戦争での中国人の死「傷」者数は3500万人です。これは1995年(!)に中国共産党書記長の江沢民が発表した数字ですから,もうこれ以上大きく変わることはないでしょう。

日中戦争後に国民党と共産党の内戦があります(死傷者の正確な数字は未公表)が,戦争は除くとして,中国共産党の支配が確立した後,「大躍進政策」により大量の餓死者が発生します。中国の公式な人口統計でも1600万人の人口減少。中国共産党は自分に不利なことは発表しないので諸説ありますが数千万人(3千万~7千万人)の中国人が悪政により餓死しました。

その後も「文化大革命」が発生します。自分に不利なことは公言しない中国共産党が認めているだけでも死者400万人,被害者1億人(!)。

中国共産党が中国を支配していて,言論の自由などを制限していることは明白ですが,日本の教科書ではそういう教え方はしませんよね。私は自虐史観批判はしませんが,歴史は事実をさまざまな観点でとらえ,考えていくことが大事だと思います。これらのことで日本の中国侵略を正当化する考えは毛頭ありませんが,中国のいいなりになるのではなく,世界や歴史を相対化して見つめ直すことも必要なことだと思います。

ところで今回の香港の動乱。客観的に見て,学生運動家に勝利の目はありません。引き際を間違えると中国共産党を利するのみ。早く解散して平穏になることを望みます。不正義の平和で妥協してもらえないでしょうか。もし,正義を貫いて戦い続け,中国共産党が倒れるときがあるとすれば,それは過去に中国共産党が殺してきた自国民の数を上回る動乱が発生することを覚悟すべきでは? まあ,そんなことはないとは思いますが。

物言わぬ民の無数の死の上に解放戦のひとつ今やむ(近藤芳美)

2019年11月18日 (月)

「善意という暴力」を読む

「善意という暴力」(堀内進之介)を読みました。

善意とは不思議ですね。私も「善意だから」こそ逆に簡単には受け入れない何かがあります。ユリウス・カエサルの名言に『始めたときは、それがどれほど善意から発したことであったとしても、時が経てば、そうではなくなる。』というのもあります。

鹿児島でわかりやすい例と言えばマングースでしょうか。奄美大島にハブの天敵として輸入(?)したものの,ハブとは戦わずに天然記念物のアマミノクロウサギを食べてしまうという皮肉。これも最初はよかれと思ってしたことなんでしょう。その結果,マングースの駆除に予算と大変な労力を費消することになるわけですが。

さて,この本。第1章は「善意が暴走する時代」。自分勝手に善意を叫ぶのではなく,社会改良のために実践することの大切さを説いています。第2章は「共感」がテーマ。ジハーディ・ジョンの話などがでてきますが,何が言いたいのか不明。第3章は「依存症と官僚制」。突然ぶっ飛んだ展開になります。第4章は「承認欲求」。フェイスブックの「いいね」やトランプ大統領の選挙作戦を批判します。第5章は「陰謀論」。最近のネット右翼の主張に根拠がないことを逐次撃破。

「善意」と関係があるのは第1章だけ。第2章以降は???。この辺りになると「善意」はもはやこの本のテーマではなく,著者が知っている,あるいは賛同する学説の寄せ集めです。

その寄せ集めた学説の中でいい言葉だな,と思ったのが「ビュリダンのロバ」。腹を減らしたロバの左右に,完全に同じ距離,同じ量の干し草が置かれていた場合,ロバはどちらを選ぶことができずに餓死するという挿話です。

これは合理的な判断よりも,認知バイアスや感情のおかげで素早く判断することが可能になることを示しています。理性的に検討せよ,合理的に判断せよ,話し合いで解決せよ,といえばいうほど解決から遠のくという矛盾を教えてくれます。

私にとってのこの本の価値は,この一節だけでした。おそらく著者の意図とは正反対のことを言っているでしょうが,それはしょうがないでしょう。こんな本だから。

四百円にて吾のものとなりたるを知らん顔して咲くバラの花(俵万智)

2019年11月17日 (日)

お腹をこわしてトイレに駆け込む 不愉快なことが続くと体に現れる? 

昨日は天文館のホテルで開催された大学同窓会に出席したのですが,途中から腹に激痛が。あわててトイレへ。ひどいくだしよう。いったんは席に戻ったのですが,10分もしないうちにまた腹に激痛。これはたまらんと思い,幹事に「体調が悪いので中座します」と伝えて慌ててトイレへ駆け込みました。

もう大丈夫かなと思ってホテルをでるとまた腹痛が。10m先の別のホテルのトイレに慌てて駆け込みました。おさまったので近くのバス停に向かうと次のバスは10分以上後。バスの車中でもよおしたら大変と思い妻に中央駅西口に迎えに来るようにお願いしました。

中央駅にむかって歩いているとまた腹痛が。もれそう。お尻を全力で引き締めて甲突川沿いの公衆トイレに駆け込みました。結局,中央駅にはたどり着けそうになく,妻には公衆トイレの中から携帯で連絡してここまで迎えに来てもらい,そのまま自宅に戻りました。

玄関を開けると,高校3年の娘がちょうど風呂から上がったところでした。私の姿をみるなり「スナフキンみたい」。確かに帽子にコートを羽織り,首にはユナイテッドのタオルマフラーを巻いていましたが,冗談言っている場合じゃないよ。早く家に上がらせてくれ。ところが私の隣にいた妻も「いつものことだがね。これがあなたのお父さんよ」。娘「だよね。納得」。どうでもいいからトイレに行かせてくれ。

深夜になっても下痢がとまらず,仰向けに寝てお腹をのの字マッサージをするとたちまち激痛,もれそうになるんだから。この日の昼食は茹でたうどんに生卵を醤油をかけて,薬味に茹でた大根葉を入れたもの(汁なし)。ひょっとしたら卵が傷んでいたのかも。

というわけで今日は朝から自宅静養。ぼーっとしていると金曜日のことを思い出しました。

金曜日はメンタルが心配な部下との面談。最近の仕事の進捗や体調のことを聞いてもまとも答えず沈黙が続きます。私に頼みたいことはないかと訊ねると「面談はこれが最後にしてください。話すこともないし,一緒にいると動悸がするんです」など口にするのは私に対するあてつけや皮肉ばかり。

さすがの私もこの程度では怒りませんが,面談は今回を最後にしました。そして上司にはことの顛末(てんまつ)を話し,もうこれ以上は続けられないと訴えました。無表情で話もしない部下と無口で人付き合いに淡泊な私。それでも部下のために何らか機会をもとうと,善意で面談を設定したのですが,どうやらお呼びではなかったようです。

嫌なことが続いた日々でしたが,ユナイテッドの勝利を思い出して気分を一新しようと,観戦した試合をダゾーンで再度見ました。

映像でみるとまた違いますね。特に前半のユナイテッドの攻撃。クロスを上げるときにはファーサイドに必ずニウドがいます。クロスの場面ではファーサイドに選手がいないことが常態化していたユナイテッド。私は再三ファーサイドへフォローを指摘していましたが,ようやく実現しました。このポジショニングを最終戦でもみせてほしい。

試合だけではなく,試合終了後のセレモニーまで見ました。大学同窓会に出席するためにセレモニーはみることができなかったのです。徳重代表,いいあいさつしてますね。本音をさらけ出しています。とても好感がもてます。チームの成績も経営状態も良好とは言いがたいでしょうが,いつも明るく取り組んでいて応援したくなります。24日の最終戦,そして来シーズンも頑張りましょう。徳重代表があいさつしたように,私は来シーズンもホームゲームはすべてスタジアムで,アウェイゲームはすべてダゾーンで観戦しますよ。

その名ゆえ訪ねてみたきところありヤリキレナイ川心に刻む(俵万智)

逃げる鹿児島ユナイテッド 追う栃木SC 焦っているはず町田ゼルビア

昨日は白波スタジアムで鹿児島ユナイテッド対水戸ホーリーホックを観戦しました。

ユナイテッドのホーム最終戦ということで午後1時の先行入場にあわせて到着したのですが,メインスタンド側には長蛇の列。徳重代表とハイタッチして入場。島美人の振る舞い酒のコーナーには勝利の女神のお姉さんが待っていました。彼女から「クロ」を一杯頂戴しました。すぐそばでは応援ハリセンも配布。こちらも頂戴しました。

スタジアムの客席にはすでに職場の同僚も。挨拶すると彼女から「今日はこれから仕事なんですか?」。私はスーツにネクタイを締めて,革靴を履き,コートを羽織って観戦しているのです。「そう。これから仕事。でも先日の岐阜戦と同じで,今日の試合は見逃せないから来たんだ」簡単に言葉をかわしました。

今日の観客は予想どおり多くて,席もきつきつ。約7700人の入場。私の周りには男子大学生のグループ5,6人が取り囲むように陣取っています。

前半キックオフから水戸がボールをキープ。チャンスをつくりますがユナイテッドはしのぎます。20分を過ぎてからはユナイテッドペース。なんどもゴール前に攻め込み,コーナーキックのチャンスを得ますが得点できません。「この押している時間帯に得点したい」と思っていた前半終了間際,五領のコーナーキックにニアに詰めていた韓が頭であわせて先制。

観客は総立ち。私もガッツポーズ。隣をみると男子大学生が両手でハイタッチを求めているので,グループの学生全員とハイタッチ。イマドキの若者はノリがいい!

後半は水戸が攻め込み,ユナイテッドがしのぐ展開。無失点で守り切り,ユナイテッドは勝ち点3をゲット。試合終了のホイッスルが鳴ったときは観客は総立ち。ですが,疲れた私は座席に座ったまま,帽子をとって髪をかきあげ,このときの風を浴びてしばらく勝利の余韻にひたりました。

私の事前の予想とは違い,ユナイテッドがセットプレーで得点。逆に水戸はセットプレーでのチャンスがほとんどないまま。また,注目していたGKの大西が好セーブを連発。中央の堤,水本,ニウドが水戸が放り込んでくるロングボールをはじき返したり,体を割り込ませてボールを奪取したりと危険を未然に防ぎました。後半は完全に水戸のペースでしたが,ユナイテッドの両サイドバックが引き気味で守り,水戸にチャンスを与えませんでした。攻めがチームスタイルのユナイテッドですが,状況判断をきちんとしてその状況に応じた戦い方をしていました。すばらしい。

この日,21位の栃木SCも勝利して勝ち点は3差のまま。次の最終戦(対アビスパ福岡),20位のユナイテッドは勝つか引き分けでJ2残留が決まります。もしユナイテッドが負けて,栃木が勝つ(対ジェフユナイテッド千葉)とユナイテッドの降格が決まります。栃木の最近の試合ぶりをみると勝利への執念が半端ない。対戦相手のモチベーションを考えると栃木は次も勝利すると考えていた方がいいでしょう。

ここにきて焦っているのは19位の町田ゼルビア。間違いありません。勝ち点はユナイテッドと並びました。次の対戦はモンテディオ山形。山形のJ1昇格には勝利が必須。町田は負ける可能性が高い。ユナイテッドと栃木がともに最終戦に勝つと,なんと町田が降格!? 3チームの中で精神的に一番劣勢なのは町田でしょう。

さて,試合終了のセレモニーが始まる前。所用がある私はスタジアムを出ると,若い女性が私に手を振っています。勝利の女神でした。島美人の試供品のプレゼント。受け取りながら来シーズンのことを話題にすると「私はオーストラリアに留学するので,スタジアムに来るのは今日が最後なんです」。それは羨ましいねと彼女のことを喜びながら1年間お世話になったお礼をいい,彼女とお別れの握手をしました。固く乾燥した肌でしたがいい思い出になりました。ありがとう。

同じもの見つめていしに吾と君の何かが終わってゆく昼下がり(俵万智)

2019年11月15日 (金)

明日はホーム最終戦 鹿児島ユナイテッドのJ2残留は勝利のみ

明日は鹿児島ユナイテッドのホーム最終戦です。J2降格圏の21位にいる栃木SCとの勝ち点の差はわずかに「3」。残るは明日の試合を含めて2試合。正念場を迎えています。

鹿児島ユナイテッドの相手は現在4位でJ1昇格の可能性がある水戸ホーリーホック。そして次のリーグ最終戦は18位のアビスパ福岡。両チームとの過去の対戦ではユナイテッドが敗れています。強敵が続きます。

それに対して栃木SCは12位のVファーレン長崎,16位のジェフユナイテッド市原・千葉と目標を失ったチームが相手。ユナイテッドの対戦相手とはモチベーションが全然違います。さらに栃木SCの最近の戦いぶりは必死。ユナイテッドが0-6で負けた新潟に対して試合終了間際に2-1の逆転勝ち,その次の2位の大宮アルディージャには0-0で引き分けるなど,強敵相手に気迫あふれるプレーで勝ち点を重ねています。

この状況を考えるとユナイテッドは水戸ホーリーホック戦では勝利が必須。明日の試合を占ってみました。

水戸ホーリーホックの最大の得点パターンはセットプレーからの競り合い。ユナイテッドがもっとも苦手にしている攻撃です。これをニウド,堤,ルカオがいかにカバーできるかが注目です。さらに攻撃パターンとしてロングカウンター,ショートカウンターが得意。これもボールポゼッションスタイルでDFが常に高い位置をとるユナイテッドには脅威。水本,堤の両センターバックがカバリングできるか。

そしてゴールキーパーにも注目です。正GKのアンジュンスがUー22の韓国代表に招集されて不在。痛いといえばそうですが,逆に大西であればロングキックを多用するので,カウンターを得意とする水戸の攻撃を未然に防げるとも言えます。

一方ユナイテッドの攻撃陣。はっきりいってクロスは期待できません。両サイドバックの砂森,酒本(藤澤)はクロスではなくシュートを狙うべきです。そうなると,ショートパスをどれだけダイレクトでつなぐことができるかが勝負の分かれ目。韓のワンツーと,五領,牛ノ浜,枝本がどれだけ落ち着いてゴールの隅にボールを置けるかが鍵になります。

そして最後に大事なことを。島美人の振る舞い酒のコーナーではおねえさんとあいさつし,観客席ではハリセンをたたき,職場の同僚とゲームについて語り合う。これでばっちり。ユナイテッドの勝利は間違いない。

凩(こがらし)や馬現れて海の上(松澤昭)

2019年11月14日 (木)

人工関節の手術をするなんて 一寸先は闇って本当だな

先日,私は朝から頭が痛く,体も重かったので会社を休みました。片頭痛持ちの私にはよくあることなんですけど,こういう時には寝るしかない。医者からもそう言われています。いわゆる特効薬というのはないんですよね。妻が心配そうにしていましたが,今日は仕事。元気に出かけていきました。

この日の夕方,電話がかかってきました。電話をとろうと布団から抜け出ると切れる。がっくりしてまた布団に入ると1時間ぐらいしてからまた電話の着信音が。受話器をとろうとするとその直前に切れました。また電話がかかってくるかもしれないと思い,布団をたたみ電話近くの椅子に腰掛けていると妻が仕事から帰ってきました。ちょうどそのとき,電話の着信音が。

電話先は妻の兄。妻の母(義母)が温泉に入るときに尻餅をついて動けなくなり,そのまま病院へ運ばれたとのこと。診察の結果,大腿骨頸部の骨折。というわけで今日は妻の母の手術がありました。人工関節を入れるとのこと。

大変な手術かと思いきや2,3日すればリハビリが始まるというから今の医療技術ってすごいですね。1ヶ月は入院するらしいですが,そのほとんどがリハビリと思えば義母もやる気がでることでしょう。

もともと義母は一人でなんでもするタイプ。おせっかいで,あれこれ気が利くし,口うるさいぐらいの活発さ。もう80歳というのに霧島の温泉に行こうとするんだから元気そのものです。

そんな義母が骨折するなんて。しかも手術まではがっちり体をベットに固定されていたというから可哀想。妻の話では,はやくリハビリをやりたくてうずうずしているらしいです。

昨日は妻は義母の入院先へお見舞いに。そして今夜は義父の自宅に夕食をつくって持って行きました。一人暮らしが1ヶ月続くと義父も大変でしょう。義父も体が頑丈なのでそちらは心配要らないのですが,うるさいぐらいの義母がいない家で暮らすのは寂しいかも。

肩冷ゆる 朝けと思ひ めざめをり やはきしとねも わが妻の愛(田谷鋭)

2019年11月13日 (水)

「ラオスにいったい何があるというんですか?」を読む

紀行文集「ラオスにいったい何があるというんですか?(以下,「ラオスに何が」)」(村上春樹)を読みました。

村上春樹の本はひととおり読んでいますが,長編小説はシリアスで気合いを入れて読むのに対し,エッセイや紀行文は気楽に読めます。おそらく村上氏自身もそれぞれを書き分けることで心のバランスをとっているんでしょう。この「ラオスに何が」もかるーい気持ちで読めます。

紀行文集なのですが,単に旅をしただけでなく,村上春樹が過去に滞在して執筆活動していた場所を再度訪れているので,一風変わった紀行文になっています。

その中身はというと,「チャールズ河畔の小径」(ボストン),「緑の苔と温泉のあるところ」(アイスランド),「おいしいものが食べたい」(オレゴン州ポートランド,メイン州ポートランド),「懐かしいふたつの島で」(ミコノス島,スペッツェス島:ギリシア),「もしタイムマシーンがあったなら」(ニューヨークのジャズクラブ),「シベリウスとカウリスマキを訪ねて」(フィンランド),「大いなるメコン川の畔(ほとり)で」(ルアンプラバン:ラオス),「野球と鯨とドーナツ」(ボストン),「白い道と赤いワイン」(トスカナ:イタリア),そして熊本の紀行文が2選。

村上春樹は,イタリアとギリシアに滞在しているときに「ノルウェイの森」を執筆。この本の大ヒットで日本にいるのが嫌になり,ボストンに滞在します。このときに執筆した作品が「ねじまき鳥クロニクル」。また,ギリシアでの風景を作品に取り入れた「スプートニクの恋人」。フィンランドが旅の終着点である「色彩をもたない多崎つくると,彼の巡礼の年」。村上春樹の作品が無国籍で世界各国で愛読されているのも,彼のコスモポリタンなスタイルが影響しているのかもしれません。

彼の小説には音楽が登場します。ジャズやクラシックなど,作品のあちこちに顔を出します。有名なのは「国境の南,太陽の西」でしょうか。主人公が思春期のときに,思いを寄せていた島本さんと一緒に聞いたレコードのタイトルが本のタイトルになっています。ジャズを紀行文に入れているのも思いが伝わってきます。

「ラオスで何が」を読んで気付いたのは,村上春樹はフィンランドに行ったことがないのに「色彩をもたない・・・」を執筆したということ。どうして小説の舞台にフィンランドを選んだのか,彼に聞いてみたいところです。

いろんな楽しみ方,読み方ができる紀行文ですが,私のお気に入りの紀行文は別の本。「もし僕らのことばがウィスキーであったら」。これはアイラ島などのスコッチウィスキーの故郷ともいうべき地方の紀行文。ウィスキー好きの私にはたまらない一冊です。スモーキーな薫りのするウィスキーって本当にあるんだということを教えてもらえました。

そういうお酒の知識もさることながら,登場する地元の愛好客のセリフがまたいい。シングルモルトウィスキー以外に何か飲まないのかと訊ねたとき「どうして天使が舞い降りてきて天上の音楽を演奏しようとするときに,ドラマの再放送を見なきゃいけないのかね」と返すなんて,そこらの二流作家には書けないセリフですよ。

村上春樹の執筆能力もこういうところで蓄えてきたのかも,と思うとまた楽しくなります。

エアメール海を渡りて掌(てのひら)の上に小さな愛ある不思議(俵万智)

2019年11月12日 (火)

「命を守る行動をとってください」 自分の命すら人任せの現代日本

今朝の朝日新聞は,東日本に大きな被害をもたらした台風19号の上陸から1ヶ月ということで,特集記事を掲載していました。

その中に,朝日新聞らしからぬ挑戦的な論客のコメントが掲載されていました。「耕論 水害大国に生きる」のコーナーで「命の判断委(ゆだ)ねず自分で」の見出し,論客は角幡唯介(かくはたゆうすけ),肩書きは探検家・作家です。

その内容を簡単に紹介すると,台風19号が上陸したとき,NHKの台風情報をずっとチェックしていた。アナウンサーが何度も繰り返す「命を守る行動をとってください」という言葉が煩わしくて嫌だった。そもそも命を守る行動を判断するのは個人。それは人間の尊厳にもかかわる本質。災害の際も,自分の命を守る判断を自分以外に指図されるべきではない。NHKも命令ではなく,より詳細な情報で切迫感を伝えるべき。というもの。

人の命が最高の価値という現代にあって,この論客の意見はバッシングを浴びそうです。適切な判断ができない人(認知症や知的障害者など)は誰が救うんだという反論もありそうですが,その反論についてまず私の考えを。

さまざまな生命体が地球上には存在しますが,種の保存がどの生命体のDNAに刻まれています。だから人間はセックスして子どもをつくろうとし,そのために様々に進化していきました。異性を引きつける行動(求愛行動)が,動物によって様々なスタイルがあります。人間も同じです。

そう考えると子どもを残す可能性のある動物(人を含む)は,災害などの生命の危機に遭ったとき,生き残ること,あるいは子どもを残すことを最優先に考えるはずです。

逆説的ですが子孫を残す考えのない人は,自分が生き残ろうという意識が子孫を残したい人の意識と比べて相当低いことが推測されます。よく高齢者が残り少ない人生をあくせくするよりここを死に場所としたいという話をしますが,それに近い感覚かもしれません。念のため言いますが,これは「高齢者(社会的弱者)は死んで当然」ということではありません。「天は自ら助くる者を助く」という意味です。

さて,本論に戻ります。この論客は,スマホやカーナビに代表されるように,本来は個人が判断すべきことを外部に委ねていては判断能力が衰退していく,これでいいのか,ということにつきます。「命を守る行動を」のアナウンスに頼ると「命」の判断すら外部に委ねてしまう。命の判断すら外部に委ねる人に「人間」としての価値はあるのか? と問いかけているのでしょう。

現代の高度知識社会では判断することが多すぎます。電子マネーのしくみ,複雑になった契約書,素人に修理できない家電製品,身近なところでは振り込め詐欺の手口の多様化などなど。一昔前ならごく一般人であれば対応できていたことが,今では専門家でないと手が出せなくなっています。これは知るべき知識が多すぎてもはや一般的な人間の処理能力をオーバーしつつあることの証左だと思います。

私は基本的には論客の判断に賛成します。しかし,生き残りの方法として「命を守る行動」のアナウンスもいいのではないでしょうか。アナウンスがないと自分の命さえ守れない人は,それだけ判断能力が低下していくでしょう。人間の本質的な能力が低下していくことは否めないでしょう。でも,それは今に始まったことではないのですから。

高度知識社会の行き着く先を憂えても,利便性の向上を追求し続ける人間の「本能」の前に,そんな議論は無力ではないでしょうか。ちなみに私は論客と同じようにスマホは持ちません。体調や天候の判断は自分の本能を最優先にしています。幸い,生命の危機の判断する状況になったことはありません。

恋人の恋人の恋人の恋人の恋人の恋人の死(穂村弘)

2019年11月11日 (月)

月曜日から満員 「丸万」の夜 それにしても歯に詰まる

今夜は天文館の「丸万」で大学の先輩,後輩と一杯飲みました。

「丸万」は先輩の行きつけ。昭和の時代からというのでもう50年ぐらい(!)の付き合いだとか。お孫さんが鹿児島に戻ってくるときも,何が食べたいか尋ねると「丸万に行きたい」とのこと。すごい熱烈ファンですね。

ここの名物は地鶏の炭火焼き。肉は固いけどうま味があります。つきだしには鶏皮とノリのポン酢かけ。鳥刺しも炭火焼き。いやあ,おなかいっぱいです。

私はビールを大ジョッキで2杯。後輩はビールは1杯で焼酎のお湯割り。先輩も同様。焼酎はお湯割りでほんわか香りがするのがいいんだとか。地鶏に焼酎。こたえられないですね。

もともと「丸万」は宮崎市に本店があります。鹿児島の「丸万」は宮崎の店から逃げてきてここで店を開いたんだと先輩が教えてくれました。詳しいいきさつはともかく,地鶏と言えば宮崎。それが鹿児島で根付いているってことは鹿児島も宮崎も味覚は近いってことなんでしょうなあ。

この先輩が九州電力の鹿児島支店長にこの店を紹介したところ,支店長はこの店を知らなかったと嘆いていました。県外の観光客はみんな下調べをしてからこの店にやってくるのに,地元の人が接待するのにこの店を使わない(知らない)ことが残念なようです。

確かに県外の人が鹿児島に来たとき,どこの連れて行くのかとなると困ります。私は農協が経営している「ZINO(ジーノ)」がお薦めなんですけどね。地元で取れた新鮮や野菜や食材で提供しますし,味もそこそこグッド。店の雰囲気も悪くない。

「わかな」や「熊襲亭」,「一二三」という定番もありますが,値段設定が高いし私には料理が豪華すぎる。それに雰囲気が私にはなじめません。どうしても足が遠のきます。やっぱり「豚太郎」みたいな庶民的というか昭和の薫りがするところが私にはお似合いです。「丸万」もこちらに近い。

月曜日の夜だと言うのに満員。おじさんたちが手に手に焼酎グラスを。お箸で地鶏の炭火焼きをつまみ,ガヤガヤと語り合っていました。お客は誰も彼も昭和生まれに間違いない。ちなみに「丸万」の看板の絵は赤塚不二夫がかいてます。これもまた昭和の薫りがただよいます。

ところで,とっても美味しい鶏肉だったのですが,残念なのは肉が歯に詰まること。最後は骨にしゃぶりついて食べたのですが,筋が切れなくて歯に詰まってなかなかとれない。彼女と食べに来る店ではないのは確かですね。

今日もまた来ておるわいと思いながら酒飲む男の横に座る(石田比呂志)