2022年1月27日 (木)

日本の半導体産業が衰退している 世界の半導体事情

『「NO」と言える日本』とは、日米貿易摩擦の中ソニーの会長である盛田昭夫と政治家である石原慎太郎によって共同執筆された1989年のエッセイです。当時の日本はバブルの絶頂期。日本経済がアメリカ経済よりも強いという自信をもっていた頃です。

この本のなかで石原慎太郎が、「日本は半導体で世界のシェアを占めている。半導体は産業の米といわれてる。この分野に秀でていることは日本の強みだ」という趣旨を書いていたことを今でも覚えています。

しかし、今や日本の半導体産業なんてまったく耳にしません。自動車の納期が遅れているのは半導体の世界的な供給不足によるものと報道されています。熊本にできる半導体工場も台湾の企業。30年以上前には圧倒的に強かった日本の半導体産業はどうしちゃったんでしょう。

小論「半導体戦略」(黒田忠広)を読みました。

令和3年6月に経済産業省が半導体戦略を発表していますが、このなかに「日本の凋落」という資料があります。それによると1988年に50パーセントあった日本企業の世界シェアが、その後坂道を転げ落ちるように低下して、今では10パーセントになっているとか。

この30年間、世界の半導体は年率5パーセントを超える高度成長を続けましたが、日本はまったく成長できなかったことをあからさまにしています。

小論を読むと、半導体産業では熾烈な技術革新が起きていることがわかります。

最初に起きたことは専用チップ時代の到来でした。

日本がシェアを圧倒していた頃の製品は「汎用チップ」という、どの産業でも使える製品を大量生産することでした。ところが爆発的に増大するデータをAIで処理する現代では、膨大なエネルギーが必要になります。そこで個々のメーカーは自社専用チップの開発に取り組むようになりました。汎用チップの無駄な回路を削ぎ落とし、エネルギーを桁違いに節約できるようにです。

さらに技術革新が起きています。ひとつがノイマン型(情報の逐次処理)から神経回路網(情報の並列処理)へ。もうひとつが微細化(情報の移動距離を平面上で短くする)から3D集積回路(情報の移動距離を上下の階層移動)へ、です。

日本はこれらの世界的な技術革新のなかで、シェアを失っていったのですね。

10年ひと昔といいますが、30年も経つとかくも競争力を失ってしまうのでしょうか。日本の技術はすばらしいというテレビを見てはマスターベーションを繰り返している国民をよそに、日本は確実に衰退の一途をたどっているようです。

かきくらし雪降る国を思えども雪降るなかに人は生きたり (柴生田稔)

ぐりぶークーポンの最後 まん延防止等重点措置適用開始の鹿児島

鹿児島県は本日1月27日から2月20日まで、県内全域でまん延防止等重点措置が適用されます。これにより、新型コロナウイルス感染拡大の元凶と決めつけられている飲食店は、営業時間の短縮や休業を強いられることになりました。

鹿児島中央駅周辺の歓楽街を歩くと、飲食店の半数は「休業」の張り紙がありました。休業に協力すると1日3万円から10万円がもらえるのだから、そういう選択もありでしょうね。「まんぼう」適用の26日間で計算すると78万円から260万円となるからすごい額ですね。

飲食店によっては、家賃の支払いが大変なところもあるのでそういう設定になるのもやむ得ないところもありますが、家賃の支払いがない、個人営業のお店は丸儲けですね。客足が減っている飲食店にとっては慈雨の給付金と行ったところでしょうか。

こういう給付金とは別に、飲食店支援の制度として鹿児島県独自の「ぐりぶークーポン」があります。1人2000円以上飲食をすると、500円(感染防止対策がきちんとできている第三者認証店では700円)の割引が受けられる。そして、このクーポンは毎週月曜日にスマホに送信されるのです。

オリジナリティーを嫌う鹿児島県がやっているぐらいですから、他県でも同様の制度はあると思いますが。

私もこのクーポンを使っています。きっかけはなじみの居酒屋で勧められたから。確かにお得ではありますが、納税者である私には壮大な無駄づかいとしか思えません。コロナ感染を防ぐために外出を控えるように言いながら飲食店の利用を勧めるなんて相反することです。

コロナ対策はこういう「マッチポンプ」が至るところにあります。マッチ役が「クーポン」、ポンプ役が「休業等による支援金・給付金」です。正反対の効果を出すために、どちらにも税金を投入するなんて許せません。

検査もそうです。無症状者に対してPCR検査を無料で実施する一方で、検査対象者が増えたために「濃厚接触者は検査不要でも症状があれば陽性とみなす(!)」、感染のおそれが高い人ほど検査すべきでしょう。税金を使うところを間違っていませんか。それにこの濃厚接触者が人手不足と騒がれている医療従事者や介護従事者だったらどうするんでしょうか。

ところでこの「ぐりぶークーポン」は今週1月30日をもって終了します。そういうわけで昨夜はこのクーポンを使い、モツ鍋と枝豆、生ビール4杯と烏龍茶1杯をいただきました。クーポンのおかげでしめて1397円。安い! 税金の無駄遣いに積極的に協力しました。

この店は大勢の若い人たちでにぎわっていました。いやあ、鹿児島市内のコロナ感染拡大はまだまだ続きそうです。ちなみに私は一人個室で飲み食いしました。しゃべる相手もいないので感染のおそれは皆無です。

それにしても議会もマスコミも、こういう税金の使い方をどうして非難しないんでしょうか。県民が非難しないからなんでしょうか。税金は自分のお金じゃないと思っているからこういう無駄遣いが許せるんでしょうね。だぶん鹿児島県民は税金を納めている自覚がないんでしょう。

独り言を思わず言って ハッとして 気味のわるさに またひとつ言う (夢野久作)

2022年1月25日 (火)

「勉強しなさい」と親から言われる子どもほど学力は伸びない

学士會会報(第951号)に、「地域における芸術文化活動と大学の役割」(平田オリザ)という講演要旨が掲載されていました。

平田氏が大学で演劇を教えている経験から「大学入試は、数年の受験対策では太刀打ちできない、地頭を問う試験になっていきます」と断じた上で、「地頭は本人の努力だけでは獲得できない身体的文化資本」だから、と家庭の役割が重要性を指摘しています。

「身体的文化資本」とは、フランスの社会学者ピエール・ブルデューが提唱した概念で、コミュニケーション能力、センス、マナー、美的感覚、感性、味覚などを指します。

この身体的文化資本は、20歳ごろまでに形成されるとのこと。読書体験、感激体験、言語環境などに大きく影響されます。幼少期から「本物」「いいもの」にたくさん触れて成長すれば、ほぼ自然に身につくようです。

平田氏はここで東京が地方に比べて圧倒的に文化環境に優れているというのですが、それはさておき、面白い指摘がありました。

お茶の水女子大学の浜野隆先生の調査です。調査のテーマは、学力テストの成績上位層と下位層で大きな差がつく「親が子どもに日常的に行う働きかけ」が何か。

一番大きな差がついたのは「家に本(マンガや雑誌を除く)がたくさんある」という項目。次に「子どもが小さい頃、絵本の読み聞かせをした」と「子どもが英語や外国の文化を触れるよう意識している」。

平田氏が興味深いと言うのは、「博物館や美術館に連れて行く」かどうかは子どもの成績に大きく関係があるけど、「毎日子どもに朝食を食べさせている」ことはさほど関係がないということ。そして皮肉なことに「ほとんど毎日、子どもに『勉強しなさい』と言う」下位層の親は、子どもを美術館に連れて行かないという結果です。

子どもはバカじゃありません。親の言っていることは上っ面だけなのを見破っているのです。

私は実家が書店なので本に囲まれて育ちました。が、親は仕事で忙しくて読み聞かせはもちろん、博物館や美術館に連れて行くこともありませんでした。だからといって「勉強しなさい」と言われたこともないので、放置された(よく言えば自主性を重んじてくれた)というところでしょうか。

私の子育てについて振り返ると、家に本はあるにはありましたが子どもが読むには難解。絵本の読み聞かせは図書館で借りてきては子どもが寝る前によくしていました。美術館や博物館には連れて行かなかったよなあ。しかし、子どもを海外旅行(上海2回、パリ1回、香港1回)や短期留学(アメリカ西海岸1回)に行かせたことは自慢してもいいかしら。

そして不思議なことに、私の子どもたちはゲームにハマりませんでした。家には任天堂DSもあったんですがねえ。ヴァーチャルな世界に入り込むのは小説の世界だけだったようです。

結論として、子どもは知的好奇心を刺激すれば自ら学ぶ、ということですね。親がガミガミ言うのは逆効果。私の妻も気づいてほしかったなあ。もう手遅れですが。

孫に語る「ねずみとクモ」の物語 わたしにも昔聞かせてくれた(俵万智)

2022年1月24日 (月)

「コロナ対策」は現代版「はだかの王様」

昨年末、オミクロン株が世界各国で発生していた頃、報道番組はオミクロン株の感染力が非常に強いことを報じていました。そして重症化リスクがこれまでよりも低いことを把握していながら、感染者が大幅に増えると必然的に重症者も増え、医療現場では対応できないと、危機感を煽り続けていました。

思えば、秋にコロナウイルスの第5波が収束してからしばらくは「第6波に備えよ、医療崩壊が起きるおそれがある」と報じ続けていました。ようやく第6波が到来し、不安は的中したかのように思えます。

しかし、全国各地で過去最多の新規感染者数を連日更新しているにもかかわらず、「医療崩壊」となった報道がありません。どういうことなんでしょう。

鹿児島県においても、1月23日には過去最多となる407人の感染者を確認しました。本日付の朝日新聞によれば、「22日までの療養者802人のうち、入院しているのは190人、宿泊療養施設は612人、酸素投与が必要な中等症10人、重症者1人。自宅待機などは1052人。22日午前0時時点の最大確保病床の使用率は34%となっている」

この数字を見る限り、感染者のうち入院しているのは2割未満。重症者は全体の0.1%以下です。ほとんどの感染者は自宅療養です。

コロナウイルスは本当に恐ろしい病気なんでしょうか。感染者の半数以上は自宅待機ですが、これで十分な医療が受けられるんでしょうか。そんなはずはないですよね。重症化することはまれだということを証明するようなものです。

大阪に一人暮らしをしている私の娘がコロナに感染しました。40度前後の高熱が4日間続き、喉の痛みを訴えていましたが、ずっと自宅療養。娘は服薬すらしていません。それでも喉の痛みや熱が引き、保健所からは「明日で発症から10日となるので自宅療養解除します」の連絡がありました。

娘が食事に困っているのではと思いきや、保健所、役場、大学から2週間分の日用品や食料品が届きました。食料品はレトルトや冷凍食品、缶詰、カップ麺など保存が効くものばかり。1ヶ月は自宅にとじこもったままで生活できそうです。大阪の対策は充実していますね。

日本全体で昨日の感染者は5万人。それでも医療崩壊は起きていない。感染拡大が最初に起こった沖縄県では濃厚接触者でも陰性なら介護施設への出勤を認めるとしています。おいおい、それでいいんですか? 介護施設で感染が広がったらどうするの? 高齢者は重症化リスクが高いはずでは?

政府は認めていませんが、コロナ対策は完全に崩壊しました。「医療崩壊」は現実化しないでしょう。「医療崩壊」が起きるのは強制入院させるコロナ対策が前提だったからです。

一方、現場は、政府主導(専門会会議提言)の対策では現場が機能不全となることをわかっています。リスクなんてほとんどないことをわかっています。現実で起きていることをよくみてください。「コロナ対策」が「裸の王様」であることを実証しました。

煙草くさき国語教師が言うときに明日という語は最もかなし(寺山修司)

2022年1月22日 (土)

鹿児島県最北端の獅子島に公共交通機関で日帰りできるか?

獅子島は八代海にある孤島で、行政区域としては鹿児島県長島町の一部です。金曜日に獅子島探検の旅にでかけました。

私は車を運転しないので、公共交通機関を利用するか徒歩で移動します。長島町は交通の便が悪く、土日はさらに便が悪い。そこで平日の日帰りプランを組み立てました。

午前8時05分に出水駅から南国バス(長島行)に乗車、9時20分に長島町役場前で下車(料金1050円)、10時25分に長島町役場前から長島町巡回バス(諸浦桟橋行)に乗車、10時55分 諸浦港で下車(料金100円)

11時15分に諸浦港から天長フェリーに乗船、片側(かたそば)港(獅子島)に到着するも下船せずそのまま中田港(天草市)へ行き(料金410円)、滞在時間5分の間に中田港で乗船券を購入。中田港から片側港へ折り返し(料金400円)、12時50分に片側港到着

13時に片側港から歩き、13時50分に幣串港に到着。2時間ほど周囲を歩いて化石を探す(幸い幣串港から3キロ東にある立石集落の海岸でいくつか見つけました)。

16時30分に幣串港から獅子島汽船に乗船、17時05分に水俣港に到着(料金1350円)。

水俣港から水俣駅に歩いて向かうも、途中の国道3号線でバスを発見。17時30分に国道沿いにある港町バス停で南国バス(阿久根行)に乗車、18時00分に出水駅に到着(料金500円)

久しぶりに10キロ以上歩いたため、今日は太ももから股関節のあたりが筋肉痛になっています。妻は朝から「あんたみたいな物好きはいないよ」と毒づいています。

確かに私のような人はいなかった。私以外に乗客がいたのはフェリーでは諸浦港〜片側港(2人)、バスでは水俣〜出水駅(2人)だけ。それ以外の区間は私一人。獅子島を歩いているときも、道路で車とすれ違うことはあっても歩行者をすれ違うことはありませんでした。

獅子島に行くには、交通機関の時刻表をパズルのように組み合わせないといけません。まずフェリーの時刻表を基本に、最も交通の便が悪い長島町内のバス時刻表で最適解を導く。

それにしても獅子島島内の移動で期待していた電動自転車が利用できなかったのは誤算でした。付近の住民に訊いてみると、幣串港待合所にある電動自転車(3台)は獅子島汽船が到着したときしか利用できないとのこと。そういう情報はネットで検索してもでてきません。

そして水俣港から水俣駅まで遠いことも大誤算。30分もあれば着くと思っていたけど、結局おれんじ鉄道の時間(17時46分発)には間に合いそうにありませんでした。走れば間に合うかもしれないけど、くたびれた私には到底無理。

でも、一人旅だからこういう失敗だらけの旅も気楽にできるんですよね。

始まりのあれば終はりのある旅の途上でひとつ石を拾えり (香川ヒサ)

彼女が真珠のネックレスをつけてきた夜に

先週、職場の同僚とふたりで飲みに行きました。彼女は結婚していて、私と同じ50歳。私と同じように2人の子どもがいます。

彼女は毎晩、午前零時まで起きていて黒糖焼酎を飲んで過ごすのが好き。一方の私もひとり飲みが多いので、話し相手でよければと、しばしば飲みに誘っています。

この日は冷え込んだこともあり、鍋でもつつこうかという話になりました。ベトナム料理屋に入ってオリジナルの鍋を注文。私はベトナムのビールを、彼女は40度もあるスピリッツを注文しました。

彼女はコートを脱ぎ、セーター姿になりました。そのとき真珠のネックレスをつけていたのに気づきました。「はて、彼女ってネックレスなんてつけてたっけ?」と気にかかりましたが、それは口に出さず、お互いの仕事や家庭での出来事を淡々と語り合いました。彼女に笑顔がないのが気になりつつ。

お店の人がオーダーストップの時間ですと告げるまで、私と彼女以外、お客さんはゼロ。貸切状態でした。この日は金曜日なのに。オミクロン株の影響なんでしょうかね。

「もう1軒行く?」と声をかけると、彼女も「そうね。あんまり飲んでないからね」と応じてくれました。2軒目は近くの日本酒専門店にしました。

この店に入ったのは午後9時半をまわっていましたが、こちらもお客さんはゼロ。静まり返っていました。私と彼女は気になった日本酒を1杯ずつ注文。表面張力で盛り上がった冷酒。ふたりとも酒器をカウンターにのせたまま、前傾姿勢になって口をつけ、日本酒をすすりました。

「おいしいね」と彼女は隣の席で前を向いたままつぶやき、「ねえ、『にいさんごうごう』って知ってる?」といって、その番組を録画していたスマホを見せてくれました。

「にいさんごうごう」は深夜の11時55分から5分間、NHK教育で放送されている番組。見せてくれたのは東京タワーとスカイツリーが同じ高さに見える場所をつなぐと円になるという「アポロニウスの円」を解説した内容でした。

30分ほどそんな他愛もない話をしたあと、帰ることにしました。帰り際、私は「ねえ、私は毎週1,2日はひとりで飲んでいるんだけど、あなたもいっしょに誘っていいかな?」と次の約束を持ちかけました。「毎週は困るけど、そうでなければいいわね」 彼女は表情を変えずにそう答え、そのままふたり手を振って別れました。

この日、私は彼女と3時間ほどいっしょに過ごしましたが、私はそのほとんどの時間、彼女の真珠に視線を向けていました。なぜなのか私にもよくわからないのですが、男の性(さが)なのか、彼女が意図的にそうしたかったのか。

私にも秘密はあると思う午後真珠の白に爪を塗りつつ (俵万智)

2022年1月21日 (金)

都合のいい正義の仮面を被ったブタ

昨年のクリスマス。なじみの小料理屋に寄りました。いつものようにカウンターに一人座ると、しばらくしてから60代のカップルが隣の席に座りました。

彼女が彼に「LCCに乗るときは普通出発30分前に手続きしないといけないでしょ。でもこの間は過ぎていたのに手続きしてくれたのよ」と嬉しそうに語りかけました。すると彼は「ルールを破ったことはなんで自慢げにいうわけ?」と声を荒らげ、彼女の話を遮りました。

その後もこの店の80代の女将(おかみ)や彼女が話を切り出すと、すぐに社会正義の発言を繰り返して発言を真っ向から否定しまくります。お店の雰囲気はすっかりしらけていました。

私はずっと黙っていましたが、彼の方から話しかけてきたので適当に話に付き合いました。話の途中、好みの女性を問われたので「私は若い女性がいいですね」と答えると、「なぜそうなるんだ」と怒り出し、「私はダイバーシティーの研修を受けてきたんだ。そういうことでいいのか、気が合うことが大事だろう」と横文字で意識の高さをちらつかせ、女性に対する考え方を一方的に決めつけてきました。

私は反感をぐっと抑え、「若いだけで魅力的。それが理由です」と端的に答えてから、さっと店から出ていきました。

昨日、この小料理屋の女将に会いました。「このあいだはごめんねえ、嫌な人だったでしょう。私もあの人は嫌いなの」とまくし立てるように話し出しました。

「あの日の後、彼が一人でお店に来たの。そしてさあ、『この家に泊まらせろ』って言ってくるのよ。やんわり断ると『ママは長く男をやってないだろう。おれがあそこをなめてやるよ」ってシモネタを続けるのよ。私はこういうのが一番イヤなのよ」

うへっ、きしょくわるっ!! 80代の女性(20歳も年上の女性)に対して卑猥なことを面と向かっていうなんてどういう野郎だ!?

この男性はダイバーシティは学んでも、その中身は理解する気はなかったのでしょう。正義の仮面を被ったブタですね。口では正義を叫び、自らは人を虐げたり不快な思いをさせる。そしてそのことを本人は自覚してない。こういう手合が増えたように思えます。言葉はワイドショーの受け売り、ワイドショーを毎日見たら人間性がどんどん損なわれるのに自覚しない。行動がワイドショー的になっている人間が増えている。そういうことが示された典型的な例ですね。

ワイドショー真面目に意味のない議論繰り返しつつ夕方になる 匤成深夜(おみなりしんや)

2022年1月16日 (日)

阪急電鉄西宮北口駅時計台の淡い思い出

毎年12月には甲子園ボウルが開催されます。

甲子園ボウルとはアメリカンフットボールの大学日本一を決める試合のこと。甲子園球場で関西リーグの代表校と関東リーグの代表校が戦うのです。

私が大学生のときは、関西リーグでは毎年のように京都大学と関西学院大学が優勝を争っていました。一方関東リーグは日本大学が圧倒的に強かったので、毎年日本大学が甲子園ボウルに出場していました。

私は一度だけ、関西学院大学が出場した甲子園ボウルを観戦したことがあります。

11月頃の合コンで、私は女子大生と知り合いになりました。一緒にカラオケで歌うと彼女の声は小さくてほとんど聞き取れないぐらい。気の小さい女性でした。私の男友達に強引にすすめられてデートに行く約束をしたとき、二人でいこうと決めたのが甲子園ボウルでした。阪急の西宮北口駅の時計台のところに10時に待ち合わせとなりました。

私は西宮北口駅などいったこともなく、当時はグーグルで検索することもなかった時代。「時計台がどこにあるのか、俺はしらないんだけど大丈夫かな」と彼女に不安を伝えると、彼女は「大丈夫。駅に行けばすぐに分かるから」と小さい声で太鼓判を押していました。

いざ、甲子園ボウルの当日。この日はすごく冷え込みました。10時ぎりぎりに西宮北口駅に到着したのですが、お腹が痛くなってそのままトイレに直行。用を足してから時計台のところにいったときには待ち合わせ時間を15分ほど過ぎていました。

携帯電話など持っていない時代。そのまま30分ほど待ちましたが、彼女は姿をみせないまま。私はひとり甲子園球場に向かい、寒さにガタガタ震えながら関西学院大学が勝利するのを見届け、寂しく下宿先に帰宅したときには真っ暗になっていました。

帰宅してすぐに彼女の家に電話すると、母親が電話に出て「娘は電話に出たくないと言っています」の一点張り。私の初デートは終わったのでした。

彼女は私の遅刻を許せなかったのか、それともそもそも彼女が西宮北口駅に来なかったのか、今でもわからないまま。こういう出来事って30年経った今でも覚えているものなんですよね。もやもやしたままだから、なんでしょうね。

「観覧車回れよ回れ想ひ出は君には一日(ひとび)我には一生(ひとよ)」(栗木京子)

2022年1月10日 (月)

いまどきのカップルはどこでデートをしているのかしら

先週、30代の男女二人と一緒に食事をしました。

この二人はもともと私の部下。といっても3人が一緒に働いたことはないのですが、1年前に私が引き合わせたのです。

男性の方はガンプラが大好き。一方彼女の方はマンガが大好き。どちらも優しい性格でオタッキーな感じ。男性は学生時代に彼女がいたようですが、社会人になってからは縁なし。女性は生まれてからずっと彼氏歴なしという貴重な(!?)経歴の持ち主でした。

ふたりとも気が合ったようで、初対面のときにラインを交換したりしていましたが、その後も間をおかずに男性が女性にアプローチして、毎週1回はデートを重ねていたようです。昨年末に二人から結婚することになったと報告がありました。そこでコロナの規制がない今の時期を逃してはいけないと、結婚のお祝いと称して一緒に飲むことにしたのです。

相手の親への挨拶の話を聞くと、それぞれの親に婚約者を紹介したときに、知り合ったきっかけを聞かれたそうです。やっぱり昔気質(むかしかたぎ)な親っているんですね。「どこの馬の骨かわからないじゃないか」なんて言う人もまだまだいるんですね。そのときに「上司の紹介です」と応えると納得してくれたとか。

私が引き合わせたことがそれぞれのご両親の安心材料になったということも、私にとってはなんだか誇らしく思えました。見えないところでお役に立ててうれしいですね。

この年末年始。二人は新居への引っ越しで忙しかったようです。新婚生活が始まるとなると期待で胸が膨らんでいることでしょう。話をしながら二人がお互いに顔を見合わせて幸せな笑みを浮かべている様子をみて、とても微笑ましく、私も幸せな気分になりました。

私の最近の夫婦生活について訊かれたので、「妻とは家族湯に行くことが多いなあ。最近だと湯之元温泉。家族湯はちょっと割高だけど、リラックスできるし温泉に浸かりながら話ができるだろ。普通の温泉だと他人がいるとくつろげないこともあるからね」と答えると、うなづく二人。

どうやら二人はデートで家族湯を利用していたみたい。時代を感じますね。私にはそんな勇気はなかったなあ。

地獄谷業のけむりとなしがたしの心のつぶやくものを(与謝野晶子)

2022年1月 4日 (火)

先生は「いじめ」を解決できない

お正月は実家に帰りました。いつもは弟の家族も一緒におせち料理を食べるのですが、この日は不在。私達夫婦と私の両親の4人での会食となりました。

両親から話を聞くと、弟の家族の子(わたしからみると甥)が小学校で数年間いじめられていたとのこと。特にこの二学期はいじめがひどく、あざができるほど顔を殴られ、反撃しようとしたら担任の先生から甥がその騒ぎの原因だと決めつけられ、登校拒否になっていたというのです。

甥に対するいじめは相当陰険だったようで、ケンカのときに止めに入った男の同級生らは、上半身では体を抑えながら、甥のスネを何度も蹴りを入れていたとか。

弟は担任の先生に何度も相談したそうですが、悪いのは甥だとの主張を繰り返していたそうです。それを知っていたいじめっ子たちがさらにエスカレートしたというのが真相のようです。

弟(いじめられていた甥の父)が教育委員会に相談したところ、教育委員会で調査があり、小学校の担任と校長先生も同席。弟がこれまでのいじめの状況を逐一話したところ、校長先生は初耳だったようで、たいへん驚いていたとのことでした。担任は一点だけ「そんなことは言っていない」と否定したものの、弟の話のほとんどは無言で聞いていたようです。どうやらこの担任は、情報を自分で抱え込み、校長へ報告や相談をしていなかったのでしょうね。

両親はようやくいじめ問題が解決したと旨をなでおろしていました。が、弟家族がお正月にそろって不在だったことを思うと、相当の心の傷が残ったのでしょう。誰にも会いたくない気持ちだったのかもしれません。

甥が登校拒否になってからは、この小学校では甥の代わりに別の男児に対するいじめが始まったと聞きました。おそらく、いじめの原因となる児童がのうのうとしているのでしょう。悪いやつがのさばって被害者がさらなる被害を強いられる。学校って不思議なところですね。

甥は学校を転校することになったようです。いじめに対して無力な先生もいます。そういうときは逃げるしかありませんね。

蝋燭(ろうそく)は消えない でも、ほんとうは 決して目をそらしてはいけない(間武)