「勉強しなさい」と親から言われる子どもほど学力は伸びない
学士會会報(第951号)に、「地域における芸術文化活動と大学の役割」(平田オリザ)という講演要旨が掲載されていました。
平田氏が大学で演劇を教えている経験から「大学入試は、数年の受験対策では太刀打ちできない、地頭を問う試験になっていきます」と断じた上で、「地頭は本人の努力だけでは獲得できない身体的文化資本」だから、と家庭の役割が重要性を指摘しています。
「身体的文化資本」とは、フランスの社会学者ピエール・ブルデューが提唱した概念で、コミュニケーション能力、センス、マナー、美的感覚、感性、味覚などを指します。
この身体的文化資本は、20歳ごろまでに形成されるとのこと。読書体験、感激体験、言語環境などに大きく影響されます。幼少期から「本物」「いいもの」にたくさん触れて成長すれば、ほぼ自然に身につくようです。
平田氏はここで東京が地方に比べて圧倒的に文化環境に優れているというのですが、それはさておき、面白い指摘がありました。
お茶の水女子大学の浜野隆先生の調査です。調査のテーマは、学力テストの成績上位層と下位層で大きな差がつく「親が子どもに日常的に行う働きかけ」が何か。
一番大きな差がついたのは「家に本(マンガや雑誌を除く)がたくさんある」という項目。次に「子どもが小さい頃、絵本の読み聞かせをした」と「子どもが英語や外国の文化を触れるよう意識している」。
平田氏が興味深いと言うのは、「博物館や美術館に連れて行く」かどうかは子どもの成績に大きく関係があるけど、「毎日子どもに朝食を食べさせている」ことはさほど関係がないということ。そして皮肉なことに「ほとんど毎日、子どもに『勉強しなさい』と言う」下位層の親は、子どもを美術館に連れて行かないという結果です。
子どもはバカじゃありません。親の言っていることは上っ面だけなのを見破っているのです。
私は実家が書店なので本に囲まれて育ちました。が、親は仕事で忙しくて読み聞かせはもちろん、博物館や美術館に連れて行くこともありませんでした。だからといって「勉強しなさい」と言われたこともないので、放置された(よく言えば自主性を重んじてくれた)というところでしょうか。
私の子育てについて振り返ると、家に本はあるにはありましたが子どもが読むには難解。絵本の読み聞かせは図書館で借りてきては子どもが寝る前によくしていました。美術館や博物館には連れて行かなかったよなあ。しかし、子どもを海外旅行(上海2回、パリ1回、香港1回)や短期留学(アメリカ西海岸1回)に行かせたことは自慢してもいいかしら。
そして不思議なことに、私の子どもたちはゲームにハマりませんでした。家には任天堂DSもあったんですがねえ。ヴァーチャルな世界に入り込むのは小説の世界だけだったようです。
結論として、子どもは知的好奇心を刺激すれば自ら学ぶ、ということですね。親がガミガミ言うのは逆効果。私の妻も気づいてほしかったなあ。もう手遅れですが。
孫に語る「ねずみとクモ」の物語 わたしにも昔聞かせてくれた(俵万智)
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