2019年7月27日 (土)

朝日新聞「論壇時評」 感情論で揺らぐ「政経分離」を読む

7月23日の私の歌コラムにおいて、日韓関係を「囚人のジレンマ」になぞらえて、その解決方法として「しっぺ返し」戦略を紹介した2日後、朝日新聞の論壇時評において「対韓輸出規制 感情論で揺らぐ『政経分離』」をテーマにしていました。旬な話題ですね。

ジャーナリストの津田大介のピックアップによる論壇時評によると、毎日新聞の澤田克己は今回の日本政府の規制措置を「長期的にはブーメラン効果で日本企業に痛みを強いる愚策」と断じています。問題点としては、1 自由貿易を主張してきた日本の国際的信頼の低下、 2 国際的な半導体供給への悪影響、 3 大口顧客である韓国企業への輸出が減ることによる日本企業の被害、 4 韓国が代替品の調達・開発を進め、結果的に日本企業の国際競争力が損なわれる、とするもの。

この主張に象徴されるように、津田大介(あるいは日本の論壇)は、今回の輸出規制が日本経済に悪影響を及ぼすという観点で問題視しています。規制措置の支持者は「韓国を苦しめたい」という感情論者だとして「ヒートアップした対韓感情を冷まし、政経分離を進める政策を政府には望みたい」と結んでいます。

この、日本経済へも悪影響論については一見もっともらしく思えます。たとえば4については、第2次世界大戦において日本から生糸を輸入していたアメリカは繊維不足に苦しみ、ナイロンを開発しました。これによって日本の生糸輸出(繊維産業)は衰退していきます。

でも、すべてにそれが当てはまるんでしょうか? 私はこういうときは立場を入れ替えて考える(反論する)ようにしています。澤田の主張になぞらえると、1 戦後賠償に関する条約を反故にする韓国の徴用工判決は国際的信頼の低下にならないのか? 2 韓国以外の半導体メーカーが増産すれば世界的に悪影響が生じないでのはないか? 3 日本企業は韓国以外の企業へ輸出を振り替えるチャンスではないか? 4 韓国から半導体が入手できなくなった世界の企業は別の国の企業から入手するルートを確立するだろう。そうすれば韓国が国内供給体制を構築する前に韓国の国際競争力は大きく低下するのではないか?

以上の私の反論はまったくの思いつきです。経済問題は複雑系のスモールワールドであって単純に予測ができるものではありませんから、私の反論はほとんどは実現しないでしょうね。でも、この論者達の言っていることがすべて実現するとは思えません。論者達のいうとおりだと、日本企業って経営能力のないバカばかりってことですよ。もしそのとおりなら、遅かれ早かれ日本経済は衰退していきますよ。

当然のことながら私が書いた「しっぺ返し戦略」を論じた説はありませんでした。やっぱりな。「しっぺ返し戦略」は知識人にとってはただの感情論みたいです。日本政府にとって大事なことは国際社会に対してはルールを守る、ルールを守らない国には対抗措置をとるという単純なことなんですけどね。複雑でわからないことを、さもあり得るかのように論じることがすばらしいなんてどこか間違っていると思います。

のぼりゆく草ほそりゆくてんと虫(中村草田男)

2019年7月26日 (金)

Vファーレン長崎との戦いを予想する 頑張れユナイテッド 明日は勝て

先週は雷雨のために試合が中止になった鹿児島ユナイテッドFC。2週間ぶりの試合となります。これまで欠場が続いていた牛ノ浜、冨成、ニウド、藤澤、八反田らがどの程度回復しているか、いよいよ出場するのかがまず注目されます。

これらの選手がけがをしていなくてもスタメン予想が不可能に近いユナイテッド。金監督は好調な選手を優先的に使うと明言しているだけに皆目見当がつきません。

現在19位と降格圏内にいるだけにとにかく勝利が待たれます。金監督の腕の見せ所です。

対するVファーレン長崎は現在9位とユナイテッドよりもずっと上位。それでも前回の長崎での試合ではスコアレスドロー。ユナイテッドが終始押していたようですが、Vファーレンが守り抜いたようですね。ディフェンス型のチームなのかと思っていました。

ところがフットボールラボで下調べしてみてびっくり。フットボールラボには次回対戦のシミュレーションがでているのですが、1-4でVファーレンの勝利。 げげっ! なにゆえにそんなに点をとられるのかよ。

目玉はセンターフォワードの呉屋です。現在11ゴールを決めていて得点王ランキングでも上位。7試合連続ゴールという時期もあったようです。しかし、最近4試合はノーゴールとか。調子の回復具合が気になります。そして右サイドハーフの大竹。ラストパスは大竹が最も多く出しています。右サイドからの攻撃がVファーレンの持ち味のようです。

そして予想どおりディフェンス陣は高杉らセンターバックが長身でかつ守備が強い。簡単には突破できそうにありません。とくにヘディング勝負ではユナイテッドに勝ち目はないでしょう。

夏の暑い時期ですからスタミナ勝負ということも考えると、両サイドバックが高い位置をとるユナイテッドにとっては自分のスタイルを貫こうとすれば相当なハードワークになります。先週も書きましたが、ボール保持率が高いと勝率が極端に落ちるユナイテッド。サイドバックのオーバーラップよりもロングボールを蹴り込んでボールを常に相手陣へ放り込み、試合展開によっては引き気味の時間帯があってもいいのではと思います。

攻めるときは攻める。そうでないときはひいて体力を温存する。勝負事は相手あってのことなので、一方的に自分のチーム事情だけで戦い方を変えるのは無謀ですが、メリハリのある展開もときには必要だと思います。

ところで、フットボールラボのデータをみると、Vファーレンもボール保持率が50%を越えた試合はほとんど負けていました。保持率最高の試合でも58%だったので、ユナイテッドに比べれば低い方(ユナイテッドは60%を超えることもしばしば)ですが、思わぬ類似点ににんまりしてしまいました。

明日の試合はとにかくVファーレンにボールを持たせる! それを中盤で奪ってからのインサイドハーフ突撃で決まり!! 五領よ、酒本よ、枝本よ、相手ペナルティエリアに突っ込め!!!

枝毛切るともなく髪の先見つめ考えているこれからのこと (俵万智)

2019年7月25日 (木)

くさいにおいはもとから絶たなきゃダメ 水漏れは水を抜かなきゃダメ!

私が子どもの頃テレビコマーシャルで「くさいにおいはもとから絶たなきゃダメ」というフレーズが印象に残っています。肝心の商品名は忘れてしまいましたが、こういうくだらないことはなぜか今でも覚えています。

そんなCMもあったのに、トイレの匂い対策では芳香剤が人気ですね。この芳香剤には嫌な思い出があります。10年以上前、与論島に出張したとき、宿泊先の個室に入るとトイレの芳香剤が充満していて吐き気をもよおしたことがありました。この旅館の従業員が、寝室の匂いを隠すために、某商品の先端部分を高く引き上げて脱脂綿の面積を最大限空気にさらしていたのです。こうなっては寝室というより完全にトイレになっていました。

今でこそ無臭の消臭剤もありますが、当時はひどかったですね。ほかにも似たようなことがありました。こちらはワインバー。数年前に店のカウンターに掛けたとき、足もとに、やはりトイレの芳香剤をおいているのを目にしました。

店内の悪臭を強い芳香剤の匂いで隠そうとするなんて、お風呂がないフランスの香水文化を真似たんでしょうか。下品もいいところです。やはり飲食店であればトイレを連想させるようなことはせず、匂いのもとを絶つようにするのが本来の姿でしょう。

これでワインの味と香りを楽しめるはずがないだろう。怒りと言うよりがっかりです。もう今ではその店には行く気はありません。

さて、話は全く違いますが、我が家のお風呂にはシャワー付きの蛇口があります。私は髪や体を洗うときにはシャワーをまったく使いませんが、最後にお風呂を洗って水で洗剤を洗い流すときに使います。というか使わざるを得ないのです。

パッキンが緩んでいるのかわかりませんが、栓をひねって水を止めてもシャワーヘッドから水滴がしたたり落ちてきます。小さい音ではあってもポタッ、ポタッ、と夜中寝ているときにかすかに聞こえてくると気になって眠れないことがあります。

やっぱりもとから絶たなきゃダメだと思い、こういうときはシャワーヘッドをホースから外します。すると中にたまっていた水がドボドボと落ちてきます。水を完全に落とした後にシャワーヘッドをホースにつけると、もう大丈夫。水滴は落ちてきません。

こういう場面でシャワーヘッドを外す発想がパッとでてくるというのは、やはり「もとから絶たなきゃダメ」というテレビCMが頭にこびりついているからでしょうね。人の行動には幼少期の体験が大きく影響しているとつくづく思います。

軽々と肩車されはしゃぐ子よそれが男の人の背(せい)だよ (俵万智)

2019年7月24日 (水)

春秋左氏伝を読み始めました 編年体とはいえ味がありました

私は中国の古典をよく読みます。もっともよく読むのが「論語」。ひとつひとつがとても短いのでぱっと本を開いたところを拾い読みするのがいつものスタイルです。

次によく読む本が漢詩。「李白詩選」「唐詩選」「中国名詩選」が我が家にあり、かいつまんでは読んでいます。これは朗読をするととてもいいですね。ごつごつした語調が気持ちを高ぶらせます。いまどき漢詩を吟じる人など聞いたことがありません。私のような人間は絶滅危惧種ですね。

そしてなんといってもドラマチックなのが「史記列伝」です。中国の戦国時代、漢の時代の人物に焦点をあて、その人の歴史をおっています。いわば中国版大河ドラマみたいなもの。ひとつひとつが簡潔で文章も短く、そこらの短編小説よりもずっとおもしろい。

史記列伝のような人物の生い立ちから死ぬまでを物語にしたものを紀伝体といいます。それと対をなすのが編年体です。編年体とはその年に起きた出来事を書き記したものです。私が高校生か大学生のころ、この編年体とはどんなもんだろうと代表的な古典「春秋」がタイトルにあった「春秋左氏伝」を手に取ったことがありました。

本を開くと例えばこんな書きぶりです。

成公十一年

1 十有一年春、王ノ三月、公、晋ヨリ至ル

2 晋侯、ゲキシュウ(変換できない漢字)ヲシテ、ライコウ(変換できない漢字)セシメル

  己丑、ゲキシュウ(変換できない漢字)ト盟ス

なんじゃこりゃあ! でしょう。1分もしないうちに読むのを諦めました。

それから30年。改めて中国の古典が読みたくなり、再び「春秋左氏伝」を読んでみました。そこでようやくこの本の魅力を理解しました。春秋左氏伝は「春秋」といういわば年表に、「左」という人物が注釈をつけた本です。先にあげた読み下し文のあとに、左氏の注釈が記されています。春秋からの引用部分を「経文」、左氏が記した注釈の部分を「伝文」といいます。そしてこの「伝文」のところには史実に基づく説話が記録されているのです。

2千年以上昔の中国のことですから、「礼」や「君子」といった観点によって価値判断をしていますが、その内容はやはり人間ドラマです。歌舞伎でいうなら仮名手本忠臣蔵という大きなドラマのなかの「殿中松の廊下の段」や「討入りの段」のような、ここぞという場面をピックアップした物語なのです。

まだ上巻を読み始めたばかりですが、このドラマ以外にも、古代中国の豆知識みたいなコーナーあり、批評あり(価値観は現在と全然違いますが)でとても面白い。一度に読み通そうとすれば骨が折れますが、一日1年と決めた読み方をすればその日その日で結構楽しめます。

それではと、春秋左氏伝をこのブログで詳しく紹介しようと考えたのですがすぐに挫折しました。だって書中の漢字を表示できない(変換できない)んだもの。これには閉口しました。

兵馬俑(へいばよう)何百何十何体の思考直立したまま眠る (俵万智)

2019年7月23日 (火)

対抗措置の応酬が続く日本と韓国 日本の最善策はしっぺ返し戦略

日本政府の輸出規制によって韓国の半導体メーターに(ひいては韓国経済に)大打撃を与えるようですね。連日のようにニュースで報じられています。韓国はWTOに提訴するとか。終わりがまだまだ見えません。

もともと文政権ができてから日韓関係は悪化の一途をたどっています。日本と韓国が合意した、従軍慰安婦への支援を行う基金制度も韓国が一方的に解散。徴用工の問題では韓国の最高裁判所が日本の企業に賠償を命じる判決がでたのに、かつて日本から賠償金を受け取ってこの問題を完全に解決したと約束した韓国政府はだんまりを決め込んでいます。そして半導体関係の輸出規制にかかる日韓両政府の事務方協議では、両者がプレスリリースの内容をすりあわせしたにもかかわらず、合意していないこと(というかそもそも発言していないこと)を韓国側が一方的に発表。ひどい話ですね。

韓国は日本との二国間の約束をことごとく反故(ほご)にしています。慰安婦への支援基金、植民地支配に関する日韓賠償金支払い(日本と韓国・北朝鮮の間には戦争した事実はありません。韓国は日本に対して独立戦争をしたこともなく、ユーゴスラビアのチトーや中国共産党の毛沢東のゲリラ戦もしていません。歴史を知らない方は確認ください)、そして輸出規制問題にかかる事務方協議。

韓国は「過去に日本はひどいことをしたから(約束・条約を守る必要はない)」と一方的に主張しますが、これでは日本は何を約束しても無駄になるということです。違いますか?

「囚人のジレンマ」という有名なパラドックスがあります。犯罪者が仲間と逮捕された。取り調べで刑事が犯罪者に次の提案をした。「お前が黙秘して、仲間が自白したら罪はおめえが一人で負うことになる。懲役10年だ。そして仲間は釈放される」「逆にお前が自白して仲間が黙秘したら、お前は釈放、仲間は懲役10年だ」「どちらも自白したら罪も半分になってそれぞれ懲役5年」「そしてどちらも黙っていたら懲役1年がせいぜいだ」

一番有利な選択は両者とも黙っていること。しかし、仲間の動向がわからない以上、最悪の事態を避けるもっとも確実な方法は自白することです。結果として、もっとも罪が軽い選択はないことになります。この囚人のジレンマを解こうとする努力はすべて時間の無駄と思われてきました。ところが、この「囚人のジレンマ」を解決する方法を、政治学者のロバート・アクセルロッドが1980年に発見しました。いわゆる「しっぺ返し戦略」です。

「しっぺ返し戦略」とは、「1 最初は協力する。 2 それ以降は、相手が前の回にとった行動を選択する」というシンプルな戦略です。これはシンプルなだけに強力です。これに勝る方法は発見されていません。

日本政府もこの「しっぺ返し戦略」を選択するときです。今の日本は、韓国政府がとっている行動(裏切り、約束の反故)を選択すべきです。これ以外のもっともらしい言説(国際社会への信頼など)に惑わされてはいけません。裏切り続ける相手を信頼し続けるのは最悪の戦略です。相手がどうであれ日本は道徳的に正しい行動をせよと論じることは戦略でもなんでもありません。日本が約束を守るのは、韓国がこれらの非礼をわびて日本の損害を回復してからにしましょうよ。そうしないと永久にこの状態が続きますよ。

野にかえり野に爬虫類をやしなうはついに復讐にそなえんがため(前川佐美雄)

2019年7月22日 (月)

残業削減のために、1・2・3・4の法則を実践しよう

今日は職場研修の日。私が講師を務めました。内容は交通安全、残業縮減(働き方改革)、年休の取得促進、メンタルヘルス、セクハラ防止、情報セキュリティ、経費節減などなど盛りだくさんです。

昨年度の働き方改革によって労働基準法が改正され、10日以上の有給を取得できる企業は年5日以上の取得促進が義務化されました。そして残業時間も月45時間という上限が設定されました。

まじめな社員が多い当社では、有給休暇を取得することに抵抗があるのか、あるいは単純に忙しいのか消化率が非常に低い。また、残業時間も非常に多くて月45時間を超える社員が相当います。

私が強調したのは健康問題。これらの目的は社員の健康保持。特に残業時間の45時間にはちゃんとして根拠があります。これまでの過労死裁判では45時間未満の社員については過労死とは認定されていません。45時間を超えると労働時間だけではなく、他の要素との合わせ技になりますが残業が過労死の原因と認定されるようです。そして80時間を超えると労働時間だけで労働災害(過労死)が認められます。

我が社ではこの1年、全体の4分の1が何らかの理由で体調を崩し数日続く休みをとっています。そして全体の3%程度ではありますが、長期休暇をとって会社にでてこれない人がいます。そのうち、精神的な問題で出社できない社員が半数を占めています。

メンタルヘルスでやっかいなのは、一度ダメージを受けるともとの状態に回復することが非常に難しいということ。どんなに仕事ができる人であっても、一度メンタルを病んでしまうと50%まで回復できるかどうか。メンタル不調は会社にとっても大きな損失です。

有給休暇の取得も、残業の削減も、いかに社員が長く健康で働くことができるかという基本をまず押えなければいけません。でも社員の多くは、労働基準監督署の指導が怖いからあんなことを言っているのだとか、残業しないで仕事は終わるはずがないだろうと、変な解釈、先入観で自己正当化しがちです。

これらのバイアスをどう取り除いていくのかが、私にとっても大きな仕事だと思っています。でも根っからの会社人間に対しては残業削減などは口を酸っぱくして注意しても、かえって反感を買うばかりです。そこで私は1・2・3・4の法則を実践しています。

この法則はもともとは熊本大学の地域おこしの徳田教授が唱えていた法則です。いい商品だけど割高な農産物を売るとき、1割の人は黙っていても買ってくれる。2割の人はセールスをすると買ってくれる。4割の人はとにかく安い方がいいというどうにもならない人たち。勝負すべきは残りの3割の人たちだと。

私の働き方改革も同様です。1割の人は定時に帰ります。2割の人もきちんと説明すれば理解してくれます。しかし、4割の人はおそらく聞く耳をもたないでしょう。この人たちの考えを変えるのはやるだけ無駄です。でも、その4割に引きずられて家に帰りたくても帰れない、精神的に苦しい思いをしている人が3割はいると踏んでいます。私はこの3割の人を少しでも救いたいと思っています。

選択肢二つ抱えて大の字になれば左右対称の我(俵万智)

2019年7月21日 (日)

ボール保持率が高いほど試合に負けている ユナイテッドのデータ分析

NHKの特番に「有働由美子とマツコ・デラックスのAIに聞いてみた」というシリーズがあります。40歳の独身者が日本を滅ぼすとかの過激なタイトルで、健康問題や少子化の現実をテーマにいわゆるビッグデータを分析し、思わぬ相関関係を示しています。

最近では「健康」と「読書」の間に強い正の相関関係があることを紹介していました。なぜ? はスタジオの出演者があれこれ思いつきを述べるのですが、マツコデラックスのつっこみがほどよい加減で楽しめます。AIは相関関係を示すだけで因果関係はわからないのです。

昨日は鹿児島ユナイテッドの試合が中止。豪雨で一日家にとじこもっていたので、ユナイテッドの前半戦(J2リーグは22チームあるので21試合)のデータをフットボールラボで調べてみました。

鹿児島ユナイテッドの特徴は、ゴールキーパーアンジュンスがフィールドプレーヤーのようになってボールを回す、自陣からのビルドアップです。そしてショートパスのつなぎとドリブル。こう考えるとボール保持率が高いことが当然予想されます。

21試合のうち、ユナイテッドのボール保持率が60%を越えたのが5試合。55~60%が3試合、50~55%が6試合、40~50%が6試合、40%未満が1試合となります。予想どおり3分の2の試合で50%を越えています。

しかし、意外な事実があります。ユナイテッドが勝利した試合に限ると、50%を越えているのは栃木戦だけ(61.2%)。他の試合はすべて50%未満です。特にJ2リーグ初戦の徳島戦に至っては32.9%しかありません。この試合は4-3の激しい打ち合いで勝利した試合だったにもかかわらずですよ。また、栃木はもともと守備型の布陣をとるためにボール保持率が低いことがチームの特徴であることを考慮すれば栃木戦は例外です。

ボール保持率50%未満のときは5勝1敗1引分。50%以上のときは1勝12敗1引分という明白な相関関係が示されます。

もちろん、相関関係は因果関係ではありませんのでボール保持率を下げると勝つというわけではありません。例えば点差が2点以上開いて相手チームが優位であれば、ディフェンスラインを下げて守りに徹するため、負け試合では結果的にユナイテッドのボール保持率が上がることがあります。しかし、2点以上差がついて負けた試合は4試合しかありませんし、そういう展開は試合の後半のみにあり得ることを考えるとさほど考えなくてもいいでしょう。

つまり、データを見る限り、鹿児島ユナイテッドの勝利のカギは「相手にボールを保持させることにある」と言っても過言ではないのです。

では、ビルドアップのスタイルを、ロングボールをどんどん蹴り込み、ボールを相手チームに保持させて反撃するスタイルに転換するのか? でも、それじゃあユナイテッドじゃないよなあ。やっぱりボールをつないでつないで、相手ディフェンスをきりきりまいにしてゴールを決める。そうこなくっちゃね。

ところで「AIに聞いてみた」のAIは、この番組のディレクターの名前にちなんで「ヒロシ」といいます。残念なことにこのディレクターは先日、不祥事で逮捕されたことが新聞記事にでていました。番組が打ち切りにならないか心配です。

その後の運命はいかに 結ばれて「凶」の文字(もんじ)をさらすおみくじ(俵万智)

鹿児島ユナイテッドの試合は中止 唯一の収穫は?

午前中は蒸し暑い天気で雨も降っていなかったのに、午後になってから土砂降り。断続的に重低音のゴーッという雨音が家中に響きます。私の家は屋根にたたきつける雨音がよく聞こえるのです。

今日は午後7時から鹿児島ユナイテッド対FC岐阜の試合が白波スタジアムで予定されています。雨天決行Jリーグ。よほどのことがない限り中止はありません。この週末は妻と娘は県外に出かけているので家には私一人。車で会場まで行こうかと思ったのですが、そうすると島美人の振る舞い酒が飲めないよなあと思い、結局、いつものようにバスと市電を乗り継いで行くことにしました。

私自身、昨日はタバコの煙で嫌な思いをし、仕事もトラブル、今日は土砂降りといいことが全然ない。そしてユナイテッドも連敗続き。チームの成績も降格圏内。選手も冨成、牛ノ浜、八反田が負傷欠場。藤澤、ニウドも理由はわかりませんが最近の数試合は出場がありません。

そこで郡元の電停で降りたとき、イオンの前にある宝くじ売り場でサマージャンボ宝くじを1枚(300円)買いました。私はついていないとき、運が悪いなあと思うときにはあえてギャンブルをします。賭金は少額ですが、運試し、あるいはハズレる可能性が高いギャンブルをすることで厄落としをします。

私は合理的な行動と同じくらい、運やツキを大事にします。だから普段でも何か悩みごとがあるときは神社で手を合わせます。私はこれを大事な行為だと考えています。そしてギャンブルも私にとってはそれと同様の行為です。

ではギャンブルをすることで過去に運が好転したとか、(高額)宝くじに当たったことがあるかって? もちろんそんなことはありません。では無駄と思わないのかって? 私はそう思いません。私にとっては「神社に参拝したからご利益があるか」というのと同じレベルの問題です。みなさんもそんなことは気にしていないでしょう。

イオンから白波スタジアムに歩いて行くと、ユナイテッドのサポーターらしき人々がスタジアムから帰っていきます。雷が鳴っていたのでおそらく中止になったのかと思いましたが、次の試合の情報とかを仕入れたくて、とりあえずスタジアムまで行ってみました。

スタジアムの前は閑散としていました。ただ、正面玄関には人だかりが。ユナイテッドの選手や監督が握手会をしていて子ども達がならんでいました。それを横目にいつも本部テントがあるところまで行ってみるとすでに撤去されていました。屋台も店じまい。

やっぱりツキがない、無駄足だったなあと思って引き返そうとしたとき、50mぐらい先を一人で歩いている職場の同僚に気づきました。私は彼女の名前を呼び手を振ると、彼女も私に手を振って近づいてきました。

「今日は中止だったんだね」「最初は夜の天気は大丈夫かなと思ってたんですけど、予報では雷マークがついてましたからね」「中止にするんだったらもうちょっと早く決めてほしかったな」「岐阜から応援に来た人たちは可哀想ですよね」「そうだよね。ところであなたは事情通だから教えてほしいんだけど、藤澤は最近出場しないけど彼もけがをしているの?」「体調不良としかわからないんですよね。もともと喘息(ぜんそく)もちだから、その影響かもしれませんよ」「なるほど、そうだったのか」

彼女はユナイテッドのポンチョを着ていて終始笑顔だったものの、髪はしっとりと濡れていて膝から下は丸出し。黒いズックを履いていました。「その靴じゃ濡れたでしょ」「あはは。もともと濡れてもいいと思ってましたから。でもこれからの時間、どうしよう」「そうだね、ここにいてもしょうがないし。じゃあ、私はぼちぼち帰ることにするよ」 そしてその日の夜。雨にはほとんど降ることがなく、雷も鳴りませんでした。

昔、西鉄ライオンズがジャイアンツに対し日本シリーズで3連敗したとき、次の試合を早々に雨天中止を決断。鉄腕稲尾を休ませることができた西鉄はその後4連勝して日本一に輝きました。雨は運を転換する力があるようです。負傷者続出のユナイテッド、休養日はプラスになったはず。こうれからの反転攻勢を期待します。

水走れ走れ光 (青木此君楼)

2019年7月20日 (土)

せっかくの料理もタバコの煙で台なしに タバコと味覚の関係

昨夜は久しぶりになじみの小料理屋へ。

午後6時半頃にお店の前に立ったのですが、看板の灯は点いていないのに店内から灯が漏れています。いつもはこの時間だと真っ暗なのに奇妙だなと入り口の戸を少し開けてみました。

「どうぞいらっしゃい」とおばちゃんの声がするので思い切って中に入ってみました。カウンターには見知らぬ年寄りが一人、料理をつまみながら泉ピン子主演のテレビドラマを見ていました。

この店は数人の常連客しかこない店。私はここに20年通っていますが、初めて見る男性客でした。しかしおばちゃんと男性客はほとんど会話はないものの、おばちゃんは何も言われなくても料理や日本酒を提供していて、勝手を知っているようでした。

私はカウンター席の男性客から一つ間を開けて座り、焼酎の水割りをお願いしました。いつもはカウンター席のお客とは挨拶をして話をするのですが、どうも話しにくい。おばちゃんが私とこの男性客に話しかけても、男性客はうなるだけで言葉を発しません。こういうのって居心地が悪いですね。

お通しがだされました。インゲンのゴマ和え、梅の砂糖煮、カニカマ、ヘチマと豚肉のゆず味噌煮、焼きなすが並んでいます。箸をつけようとすると男性客がタバコをふかし始めました。

男性客のテーブルを見ると、まだお通しの半分にも手をつけていません。どうやらタバコを吸いながら食事をする習慣のようでした。しかしタバコの煙があれば料理どころではありません。わたしはタバコの煙が大の苦手。息をとめて料理をつまみ、焼酎を飲みました。

大学生の頃、私の友人がタバコの話をしていたことを思い出します。その友人が定食を食べていたとき、隣からタバコの煙が漂ってきた。その煙がきたときに食べてる料理の味が消えたと。

周囲の食事客がこうなのに、食べながらタバコを吸うなんて! とタバコを吸わない私は許せません。おそらく片時もタバコを手放せないヘビースモーカーなんでしょうね。食後の一服がおいしいというタバコ党の考えを私は否定はしませんし、それはそれでひとつのたしなみなのかもと思います。しかし、食べながらタバコを吸うことは全然別です。そんなことして料理の味がわかるはずがないだろうって言いたくなります。

最初の一本はまだ我慢しましたが、2本目に火をつけたときには我慢ならず、黙って店を出ました。結局30分も滞在せず。こういう日はとても不愉快な気分になります。お代は1500円。捨て銭とはこういうことを言うんでしょうね。

実はこの日の夜は、鹿児島中央駅前の東急REIホテルのバーでジャズを聴きながら飲み比べセット(1306円)を飲もうかと思っていました。しかし時間が中途半端だったのでおばちゃんの小料理屋とどちらにしようか迷っていました。どうやらハズレをひいてしまったようです。たまにはこんな日もあるよね。

沈黙のわれに見よとぞ百房(ひゃくふさ)の黒き葡萄に雨ふりそそぐ (斎藤茂吉)

2019年7月18日 (木)

トラウマ理論の現実 発祥の地であるアメリカでは絶滅していた

私が学生のときは「トラウマ」という言葉が一般的に使われていました。今でも子どもの時の心の傷をトラウマ、あるいは昔の失敗体験を引きずっていることを「トラウマがある」なんて言い方をしています。

この「トラウマ」という概念は、アメリカの心理学者が「幼少期のレイプなどの虐待が抑圧された記憶としてトラウマとなり、成人した後になっても多くの女性を苦しめている」と論じたのが最初。その後は世界中に広がりました。

そして、このトラウマ理論は1980年代から90年代にかけてアメリカ社会に大混乱を引き起こします。記憶回復療法によって抑圧されたトラウマ体験を思い出した被害者が、加害者である「親」を訴えたからです。ピーク時には年100件を越える訴訟が提起されたそうです。

ところがその後、認知心理学者達が次々と「記憶は作り出せる」という研究を発表したことで、「トラウマ理論」の信頼性が失われはじめます。幼少期の虐待された記憶は本当ではなく、記憶回復療法を施したセラピスト達によってねつ造された記憶だと喝破したのです。

その後訴訟件数は激減し、逆に幼児虐待で有罪とされた被告達の再審が始まります。そして「偽りの記憶」を植え付けられた女性達が、催眠療法家やセラピストに対して損害賠償を請求する医療過誤訴訟が多発。でたらめな記憶を思い出すよう強制され、家庭や社会生活を破壊されていく悲劇が露(あら)わになりました。哀れですね。

最終的には2002年のアメリカ精神医学会の会議で「記憶回復療法の論争は死んだ」と宣言されたことで、「抑圧された心的外傷(トラウマ理論)」がトンデモ心理学であることが決定的になりました。今読んでいる「読まなくてもいい本の読書案内」(橘玲)では、さらに詳しく紹介されています。興味のある方は一読を。

思えば学生時代に「オカルトにつける薬」(呉智英)という本が好きでした。当時は超能力者やUFOがオカルトの最たるものでした。こういうオカルトやトンデモ科学は現れては消えていきます。そして「科学」の仮面を被(かぶ)っているだけに非常にやっかいです。

私も多数の本を読み、いろんな理論があることは知識として知っています。しかし、それを実際に使うことは非常に少ないし、つい慎重になります。かくいう私の行動理論は最終的には「老子」の無為自然であり、食欲や性欲、好き嫌いなどの感情に関しては、自分の本能に素直に従うようにしていますから。どうしても「科学的」は信用できないのです。変な性格ですね。

「トラウマ」の話に戻ります。橘玲によると「アメリカの訴訟は「娘が親を悪魔崇拝で訴える」というもの。これはアメリカ社会が訴訟社会で、先進国のなかで例外的に精神分析療法が大衆化していて、迷信のはこびる伝統的な社会だったから」と結論づけています。しかし、そうではない日本でもトラウマ理論が一般的に信じられています。これには理由があると思います。アメリカでは幼少期の女性が被害者でしたが、日本ではトラウマをもつ人は年齢も性別も限定されません。多分、日本人はそれだけ対人関係に神経質なので、失敗をいつまでもくよくよする性格の人が多いのかも知れません。日本で「トラウマ」が生き残っているのは、結局、その理論が真実かどうかではなく、自分の行為を正当化できるかどうかによって、トラウマ理論が発生する(存続している)のでしょうね。

ひとつだけ言いそびれたる言の葉の葉とうがらしがほろほろ苦い(俵万智)