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2019年8月 8日 (木)

最低賃金を全国一律1500円!? で考える鹿児島での暮らし

日本には最低賃金法という法律があります。雇用者がその最低賃金を下回る賃金で労働者に仕事をさせた場合は罰せられます。簡単にいうといわゆるブラック企業です。

そう考えると最低賃金は労働者を守る素晴らしい制度だと思えますが、リバタリアン(自由至上主義者)は悪法だと非難します。ちょっと考えてみましょう。

現在、時給1000円で10人を雇っていた場合、1日の賃金は8時間×1000円×10人で8万円になります。これを時給1500円にした場合、単純に1.5倍すると12万円の賃金を支払わなくてはなりません。しかし、賃金を上げても売上げ(利益)が変わらない場合、単純に4万円の損失が生じます。そうなると会社からすれば4人を解雇しないといけません。すなわち、最低賃金の引き上げは労働者の総数の減少を招くことになるのです。

話はここで終わりません。日本では労働者を簡単に解雇できない仕組み(最高裁判例など)になっています。となると、次に会社が選ぶ道は新規採用を抑制することです。現に最低賃金が1000円を超えているヨーロッパ(EU)では、若者の失業率が驚異的な高さを記録しています。日本のロストジェネレーションどころの騒ぎではありません。

では政府が補助金をだせばいいではないかという考え方もでてきます。れいわ新撰組の公約でも、最低賃金を全国一律1500円にして不足分は政府が補助する、としています。でもこれは簡単ではありません。

例えば時給1000円で雇われている人が500万人いたとしましょう。差額の500円×8時間×20日×500万人で月に4000億円の補助金が必要になります。1年だと約5兆円です。日本の予算が約100兆円。そのうちの半分は借金の返済(国債償還)ですから、単純に支出の1割が最低賃金の補助に使われることになります。そんなバカな! でしょう。

500万人も対象者がいるはずがないと反論する人もいるかもしれません。しかし、非正規雇用が全労働者の半数近くいると考えるとそんなに馬鹿げた数字ではないとわかるはずです。さらに賃金の補助額が企業の言い値になってしまうと恐ろしいほどの高額になりかねません。制度の実現性は「ゼロ」と断言できます。

仕事の帰り、会社の同僚と最低賃金のニュースの話になりました。「鹿児島も時給1000円になるのかね。今日のニュースじゃまだ800円にも届かないのに」「いやあ、そもそもあの議論は論点がずれてるよ」「そりゃどういうこと?」「最低賃金とは生活コストだよ。そのぐらいの額を確保しないと生活できないって意味。だから東京が1000円というのは1000円ないと暮らせないほど生活コストが高い。逆に鹿児島は生活コストがそれだけ安い。鹿児島県の最低賃金は全国最低でも平均所得は全国で40位以内。この差がつまり生活水準がそれだけ高い、暮らしやすいってことさ」「なるほどね。発想の転換だな」

なにごとも複数の視点から検討する、考えてみるって大事ですよね。鹿児島も最低賃金が低いことをやたら卑屈に考えなくていいんですよ。

満員のスタジアムにてわれは思う三万という自殺者の数(大松達知)

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