2020年2月 9日 (日)

緊急事態だからこそトリアージが必要ですよね クルーズ船の上陸延期

新型コロナウイルスの感染者が多数いることが判明したクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス。現在も横浜港に停泊したまま一般の乗客は上陸を許されず,船内に留め置かれています。

最近は毎日「乗客の多数は70代の高齢者」「薬の不足が深刻」というニュースが報じられています。いま,私の見ているNHKニュースも。下船は2月19日というからまだあと10日もあります。高齢の乗客は薬が届くか不安なのでしょう。

それにしても一体何人がそういう訴えをしているのかは明らかではありません。映像はたった1,2人ですが,その人に薬が届かない理由も同じくわからない。

私に理解できることは,とにかく高齢者って薬が手放せないってこと。今見ているニュースでも,薬を5種類以上も毎日服用しているといっています。これがないと命が危ないと。これが日本の高齢化社会の現実なのでしょうか。命を長らえるために,毎日何種類も薬を飲み続ける。日本の医療費が増え続けるわけです。

「お金の多寡で寿命が決まってはいけない」と多くの人は思います。確かにそうです。私もお金がないから助かる命が助からないのは可哀想(かわいそう)に思います。だから,医師は患者を平等に診なければならない。正論です。

でも,現実の病院を見るとどうでしょう。10年以上前のこと。私が体調を崩し,妻が介抱をしながら私を病院に連れて行ってくれました。ひどい吐き気でシャーレを口にあてたまま1~2時間診察を待ちました。その待合室には数十人を超える高齢者が世間話に花を咲かせています。彼らはただ薬をもらうためだけに病院にきていて,時間がいくらでもあるのです。その横で,私は苦しみ続けました。これが平等なんでしょうか?

娘がまだ1,2歳のとき。娘の耳から黄色い体液がこぼれてきたことがありました。仕事を休み,慌てて娘を近所の耳鼻科の病院に行きました。この耳鼻科は人気があって,お年寄りがたくさん来ていました。ずいぶん長いこと待たされて,医師の診察室に通されました。順番がひとつ前のおばあさんを医師が診察していて「どうしましたか」と声をかけると,「はあ,耳あかがたまってて,とってもらえますか」。それを聞いた私は「ふざけるな」と叫びたくなりました。これが平等なんでしょうか?

日本の病院は待ち時間が長い。それも専門性の高い病院,腕のいい医師の病院だとその傾向が顕著です。これは時間のある人には有利です。いくらでも暇つぶしができますからね。しかし,こういうのを平等というのでしょうか。私は,忙しい人,急患の人にはおそろしいほど不平等なシステムだと思います。

今回の新型コロナウイルス騒動もまったく同じ印象を抱いています。薬のない高齢者はどうして自分の主治医に相談しないんでしょう。携帯電話ぐらいあるでしょう。事情は不明ですが,だからといって自分の窮状をマスコミに見せびらかす神経が理解できません。それで解決したんですか?

同じくニュースでは「症状のない人のウイルス検査をせよ」という一般の乗客声も紹介されています。こんなことを言っている乗客はインフルエンザにかかっていないことを証明するために,いつも検査をしているんですか? そんなことしないでしょう。元気な数千人の人の検査をやり出したら,本当に必要な人の検査が後回しにされるって思わないんでしょうか?

マスコミは現地の切実な声を「垂れ流し」にするのはやめてはどうでしょう。どうしてそういう判断になっているのか,客観的な理由も添えて報道することが「冷静」な対応ではないかと思います。

煙にて虫歯を治す男いて治った顔して客は立ち去る(俵万智)

半成人式と立志式をやめようよ 誰が望んでいるというのか?

この時期は立志式が開催されるようです。私の通っていた中学校では,私が中学2年生のときに立志式が始まりました。なぜ,こんなことをするのか,面倒くさいと思っていました。

ネットで調べてみると,この儀式(?)がいつ頃から始まったのかはよくわかりません。学校行事として実施しているところがどの程度なのかもよくわかりません。でも,昔の元服,髪上げの儀式を再現したと考えると,日本古来の伝統と言えなくもありません。

ただし,娘が通っていた中学校で立志式があったとは記憶にないので,すべての学校で開催されいるわけではないようです。

そして,小学校では半成人式(学校によっては,2分の1成人式ともいうようです)があります。私が小学生の頃にはなかった儀式ですが,小学4年生(10歳)の時に実施されるようです。私の娘の半成人式が小学校で開催されたときに出席しました。こちらは覚えています。

ネットで調べてみると半成人式は兵庫県の教師が1980年頃に始めたとありました。私が小学生のころです。体験していないはずです。

それにしても,半成人式って何なんでしょうか? 私が参加したときは,子どもが親に感謝の作文を読み上げる「儀式」でしたが,我が子が作文を読み上げる姿を見て,なんだか複雑な気分になりました。

私の周りの多くの親たちは涙をにじませて子どもの作文を聞いていましたが,私は,親から虐待を受けている子どもはどんな作文を書くんだろうか? 私が親に感謝する気持ちをもったのは大人になってからなのに,どうしてこの年齢で本当に感謝の気持ちをもつことができるのだろうか? 先生が子どもに強要しているのでは? など,余計なことをずっと考えていました。

肥薩おれんじ鉄道を舞台にした映画「かぞくいろ」でも,半成人式を迎えた少年が,亡くなった両親に会いたいと涙ながらに作文を読んでいました。とても胸が痛みました。なんて残酷な儀式なのかと。

民法の改正に伴い,成人式を18歳にするか,20歳にするかを議論する自治体が多いようです。この成人式は成人,大人になったことの自覚を促し,お祝いをする趣旨です。しかし,立志式にせよ,半成人式にせよ,いったい何の自覚を促すのか,何をお祝いするのか,私にはよく分かりません。

人生の通過儀礼という話を聞きますが,それであれば,半成人式は小学校の卒業式で,立志式は中学校の卒業式で,成人式は高校の卒業式で十分ではないでしょうか?

もし,親がこれらの儀式を望んでいるとするならば,親のエゴであって子どものためではないことは間違いありません。えっ,私の言っていることが間違っているって? だったら半成人式,立志式に出席した子ども達に訊(たず)ねてみてください。そこに答えがありますよ。

子どもは成長します。そんな儀式とは関係なく。子どもをみればわかるでしょ。あなたも親なら,教師なら。

きのうとはちがう瞳(ひとみ)のいろをして子よ夕暮れの楽隊を見たか(小島ゆかり)

2020年2月 8日 (土)

小人閑居して不善を為すと言うけれど,多忙すぎると不全になります

「小人閑居して不善を為す」とは,四書五経のうちの四書の一つ,「大学」の第一章一節に出てくる有名な言葉です。

私はこの言葉の意味を「つまらんやつは暇になるとろくなことをしない」と解していて,つまらん私はできるだけ暇をつくらないようにと考えています。でも多忙になるとそれどころではありません。まさに,「小人多忙になると(日常生活が)不全になる」という状態です。

今週は月曜日から新型コロナウイルス対策に追われています。鹿児島港に寄港したクルーズ船にこのウイルスの感染者がいたことが発端。それにしても県内のマスコミの騒ぎようが異常に思えます。私の会社もその煽りをうけて通常の業務が完全にストップしました。

そもそも感染者が参加したのは1月22日の鹿児島市内のバスツアー。もう2週間以上経過しています。幸い本日まで,鹿児島県内では誰も肺炎を発症していないので感染者はいないと考えてもいいでしょう。感染した香港の男性が乗ったツアーバスの運転手も,健康観察は終了と報じられています。

それにもかかわらず,お客様(とは思えない人がほとんど)からは心配な声(とは思えない,脅迫めいた声がほとんど)が押し寄せます。国やWHOが示している潜伏期間を経過しても発症しない(確認できない)のだから鹿児島市内に感染者はいないと判断するのが妥当。ドアノブや手すりなどにウイルスが付着したとしても,1日で死滅するというのが科学的知見に基づく常識なのに。

にもかかわらず「感染しても無症状者がいるというではないか」と疑ってかかる人の多いこと! だったら,バスツアーがどこに立ち寄ったかに関係ないでしょう,あなたの隣にも無症状の感染者がいるんじゃないの? 私を大声でどなりつけても現実は変わらないんじゃないの? なぜ,それがわからないの? あなた,頭つかってる? と,反論したくなります。

そんなこんなで今週は早朝出勤,深夜退社が続き,普段はバス通勤の私が毎日タクシー通勤をせざるを得ない状況になりました。いいんですよこの程度の出費は。「残業代はタクシー代」と割り切っていますから。でも,睡眠時間が毎日1~3時間となると,もうお金の問題じゃないですね。

自分が感染しないかと過剰におそれる人たちのおかげで,私は体調を崩しそうです。まあ,こんなことをつぶやいても,自分の体さえ守れれば(あるいは自分の不安さえ解消されれば),他人が健康を害しようと関係ないという攻撃的な人が多い今の時代。私の声は,こんなわがままな大衆によってかき消されるのでしょうけど。

ところで標題の「小人閑居して不善を為す」という言葉。よくよく調べてみると「凡人は暇を持て余すとロクなことをしない(だから一生懸命働け!)といった意味で理解している人が多いが,品性のない凡人は他人の目がないと悪いことをする,というのが本来の意味である」という解説がでていました。

原文では「君子必慎其独也 小人閑居為不善(教養や人徳を備えた知識人の君子は、他人の目がなくても必ず慎み深く行動するが,教養や人徳のない,品性に欠ける小人は一人でいると悪事を犯しやすくなる)」となっています。

残念ながら高度情報化社会となった現代では,他人(マスコミの過剰報道)によって,集団で無自覚の悪事(規範や科学的根拠を無視した他人への人格攻撃)を犯す人が急増。もやは「小人閑居して不善を為す」は時代にあわないのかも。

眼をつむればまっくらやみが来るそんなことにも気づかざりけり(高瀬一誌)

2020年2月 2日 (日)

「お父さん,問題出して」 これが高校3年生とその親との会話でしょうか

高校3年の娘が家に帰って来るなり「ねえ,お父さん。問題出して」と言ってきました。

子どもは「なぞなぞ」が大好きです。私も子どもの頃はそうでした。受験勉強で頭を使っている娘にとっては,いい気分転換になると思い,いくつか問題を出しました。

「ラグビーは1チーム何人でプレイするでしょうか?」(正解は15人)「ナポレオンが生まれたのはコルシカ島。では,コルシカ島の隣にある大きさが同じくらいの島の名前は?」(正解はサルディニア島)

答えることができなかった娘は「スポーツとかではない問題にしてよ」というので,発想を変えました。「囲碁で使う碁盤。石を置くことができるのは何か所あるでしょうか? ちなみに縦横19本の線が引かれています」

娘は頭の中で計算しているようですが,なかなか答えが出てきません。「こういうときは(20ー1)の二乗と計算するのよ。二乗の公式があるでしょう。(A-B)の2乗だとAの2乗マイナス2ABプラスBの二乗。この場合だと400マイナス40プラス1だから361が答え」「へー,でも数学の問題はやめて」

「じゃあ,今日ネットでたまたま見た記事から出題するね。イギリスではチキンカツのカレーが人気です。このメニューを広めたと言われているチェーン店の名前は何でしょうか? 日本語がそのままお店の名前になっています」(正解は,WAGAMAMA(わがまま))

「こういう問題ってクロスワードで出た知らない言葉とかがいいかもね。『ごまのはい』って知ってる。漢字で書くと護摩の灰。お父さんもおばあちゃんに教えてもらったんだよ。今では死語だと思うけど子どもの頃,新聞のクロスワードの問題にでてたんだ。さて,どういう意味でしょうか?」(正解は,旅行者の持ち物を盗む泥棒のこと)

ちょっと難しい問題が続いたようで,娘はひとつも正解にたどりつけませんでした。娘が反撃します「じゃあ,お父さん,ヒレや鱗がない海の生き物を食べてはいけない宗教はなんでしょうか?」「それはユダヤ教だね。イスラエル人はイカやタコは食べないからね」「さすが。すごーい」

娘の高校卒業まであと1ヶ月。娘がどこの大学に進学するのかわかりませんが,一緒に暮らす日も残り少なくなってきました。こんなたわいもない会話ができるのもそれまで。親子が一緒に過ごせる時間て,なんて短いんだろう。

遊ぶ子の群れかけぬけてわれに来るこの偶然のような一人を抱けり(川野里子)

2020年2月 1日 (土)

立春前に春の陽気 沈丁花(じんちょうげ)が開花しました

今日は朝から太陽の優しい光が降り注ぎました。家族の布団をベランダに干し,部屋のなかの日だまりで,わたしはソファにゆったりと腰掛け,新聞を読んだり,DAZNのトップリーグの中継を見て過ごしました。

土曜日なのに妻は仕事,娘は私立の大学受験,朝から夕方まで家には私1人。誰とも話をすることもありません。

今週は毎日残業が続き,帰りはいつもタクシー。もっとも帰りが遅いときは深夜1時。若い頃ならともかく,50歳目前の私にとっては相当体に負担がかかります。金曜日の夜までで峠を越えたので,土曜日の今日は一日体を休めることにしました。

朝,庭を見て回ると,玄関先の沈丁花が一輪,白い花を咲かせていました。赤紫のつぼみがたくさんふくらんでいたので,いつ開花するだろうと毎朝楽しみにしていましたが,とうとう2月1日,立春前に咲きました。

いうまでもなく,沈丁花は初春の花。香りがいい低木として有名です。まだ甘い香りを漂わせるには力が足りないようですが,明日にはもっと花を開き,その甘い香りが私の気持ちを和(なご)ませてくれるでしょう。

午後,上司からメールが届きました。部下の女性社員の出張を取りやめにしたとのこと。新型肺炎で神経質なこの時期。出張は控えるように,とのことでした。

昨夜のこと。私はその社員から出張していいものか相談を受けたので,必要な出張だから行くべきと思い,上司に説明して了解をとりつけたつもりだったのですが,一晩明けて上司が考え直したようです。

上司からのメールを受け,社員に「力になれずにごめんなさい」とおわびのメールを送ったところ,「これは私の問題です!」と返信が来ました。私としてはよかれと思ってしたことなんですが,その社員にとってはありがた迷惑,余計なお世話,てめえ絡(から)んでくるんじゃねよ,ってことだったみたいです。

そのメールを読んで疲れがぶり返しました。やれやれ。

鎌倉の月まんまるし沈丁花(高野素十)

新型コロナウイルスと新型インフルエンザとどっちがこわい?

新型コロナウイルスによる肺炎患者がSARSの患者数を超えたことが,昨夜のニュースの見出しでした。安部ちゃんも中国湖北省の日本入国を拒否すると答弁。なんだか大変なことになってきたような雰囲気です。

似たような騒ぎが10年前にもありました。メキシコが震源地だった「新型インフルエンザ」です。当時は日本の修学旅行生が第1号かということで集中豪雨的な報道がありました。今回のコロナウイルスと同様,彼らの行動・訪問先が逐一報道されました。確か,その学校の校長先生は涙を流して生徒の無事をコメントしていたと思います。このとき,第1号の感染者が在学していた学校には抗議の電話が殺到したそうです。

私にはいつも不思議に思います。このように抗議の電話をする人は何がしたいんでしょうか? 電話したらインフルエンザがなくなるわけはありません。おそらく,日本に新型インフルエンザを持ち込んだ,俺が感染したらどうしてくれるんだという怒りをぶつけたのでしょうが,そうなると日本国内で感染したとされた数百万人にもいちいち抗議の電話をしたんでしょうか? 少なくとも日本に持ち込んだ他の感染者にも抗議の電話をしたんでしょうか? するわけないですよね。第1号のような詳細な行動をマスコミが報じませんから。第2,000,000号ぐらいの感染者になると患者1人につき1分ずつ報じても時間がたりません。私も書いててばかばかしい。

やっていることは同じなのに第1号だけが突出してるって変だとは思いませんか?

結局,マスコミの報道に踊らされた人たちが,こんな馬鹿げた行動をするんでしょう。マスコミに踊らされて生じた怒りを取材対象者にぶつける。わかりやすいですね。そういうのって社会正義ではありません。ただの自己満足です。

ちなみに私も新型インフルエンザにかかりました。でも,死にませんでした。毎年流行するインフルエンザと同じです。発熱して数日は寝たきりでした。でも,健常な体だったので回復しました。

そもそもインフルエンザって毎年「微妙な新型」です。かつてはソ連型とか香港型とかいろんな名称がありましたが,今はNとかHとかに数字がつくパターンですね。どうちがうのか科学的には分類できないでしょうが,少しずつ変化しているはずです。新型肺炎も人に感染するうちに毒性が変化するってマスコミも垂れ流していますがインフルエンザも一緒です。どのような変化を「新型」というのか素人の私にはよくわかりませんが,大騒ぎすることとは思えません。

ところで,毎年,日本では何人が肺炎で亡くなるか知っていますか?

厚生労働省の資料によると,日本で死因の第1位はご存じのとおり「がん」(死者数34万人余り),「肺炎」は第4位です。死者数は11万人余り。ここ最近は毎年同じような傾向です。知ってましたか? 毎年,亡くなった日本人の10人に1人は肺炎が原因です。

新型肺炎が日本国内で流行した場合,この数字がどう変化するでしょうか? 私はほとんど変わらないと思います。

病むものの心の綾をかきくぐりかきくぐり来て口漱(くちすす)ぐかな(岡井隆)

2020年1月28日 (火)

「人類の未来」(ノーム・チョムスキーのインタビュー)を読む

「人類の未来」,ノーム・チョムスキーのインタビューを読みました。

この本は,現代の知の巨人たちへのインタビューをまとめています。最初はノーム・チョムスキー。彼はもともとは数学者ですが,言語学者でもあり,政治学者でもあります。現在はマサチューセッツ工科大学を代表する名誉教授です。

前半は国際政治。特にアメリカ大統領となったトランプの話が中心ですが,最後にシンギュラリティについてインタビューが興味深い。

巷間(こうかん)に言われているシンギュラリティとは,テクノロジーの進化が人間の理解を超え,機械(AIなど)が人間を凌駕する境界を意味します。発明家であり未来学者でもあるレイ・カーツワイルが提唱しています。

これに対してチョムスキー氏は真っ向から反論します。「彼らが素敵なレストランでコーヒーを飲みながら会話として楽しむにはいいでしょう。しかし,その主張には何の証拠もないですね」

「人間のこととなると,なぜか人々は惑わされてしまう。昆虫について話をする場合はそうじゃないですね。ハチやアリといった昆虫は,大変優れた飛行ないし運行能力と,ミツバチのダンスにみられるようなコミュニケーション能力をもっています。この実験はあまりに馬鹿げているので誰もまだやったことはありませんが,何百万という数のハチやアリの行動をビデオに撮って学習すれば,あるハチが巣を出た後,次にどのような行動を取るのか,かなり高い確率で予測ができるようになるでしょう」

「しかし,なぜこういった行動が起こるのかが科学の大きなテーマですが,単にハチの行動をまねすることにはまったく意味がない。もし,このような,ハチの飛行をただ真似るためだけの研究費を申請したら,グーグルはお金を出すかも知れないけれど,科学機関では相手にされないでしょう」

すなわち,「(情報処理の)量的拡大が,知能や創造性の本質についての洞察をもたらすという徴候もありません。ずっとシンプルなハチの飛行の本質についてさえわからないでしょう」

なるほど。AIは大量のデータを蓄積することでまねはできるかもしれないけど,なぜそうなるのかを知ることはできないってことですね。確かにディープラーニングで一斉を風靡したアルファ碁も,なぜアルファ碁がその手を打つのかをプロキシが解説することは不可能。そしてアルファ碁自体もなぜその選択をしたのかを教えてくれません。チョムスキーがいうように,AIが碁の本質を解明したとは言えません。

でも待てよ。人間がなぜはっきりと意識しないのに呼吸をしているのか。危ない!とおもったらどうしてとっさによけようとするのか。そういう基本的なことを私たちは理論的に説明することはできるんでしょうか。私たちはそのメカニズムを知らなくても,呼吸し,危険を回避する行動をとることができますよね。睡眠や性交もそう。誰かが教えるまでもなく,理由も知らず,本能的に行動するでしょう。

チョムスキー氏にとっては科学の発展とは本質の究明なのかもしれません。しかし,現実世界での科学の発展とは,科学技術がより人間らしくなる(自身の本質はわからなくても生存する)ことで人間を超越することをいうならば,シンギュラリティとは本質の究明から逆方向に発展するというコペルニクス的転回を意味するのかもしれません。

「牛スジが安かったから」新聞を読まない君の煮込みはうまし(俵万智)

2020年1月27日 (月)

おめでたが3人も続くとは 2回までは偶然だが3回目からは必然?

私のいる会社は社員が20数名います。30歳ぐらいの若い社員が多く,さらに半数は女性です。独身の男女も数名いますが,ほとんどは結婚しています。

昨年の夏,新婚旅行をした社員がすぐに妊娠。今年の4月に出産の予定です。来月から産休に入ります。さらに年末,ほかの若い社員も妊娠していることが分かりました。この社員は長く子どもができなくて心配していましたが,ようやく子どもができたという喜びでいっぱいでした。出産は夏頃の予定です。

そして先週,なんともう一人の女性社員も妊娠していることを申し出てきました。驚きの3人産休になりそうです。管理職の私も,人のやりくりがちょっと心配になってきました。

しかしながら子どもが少ないこの日本社会。我が社で3人も立て続けに妊娠するとはやはり喜ばしいこと。でも,どうしてこれだけ続くのでしょうか。若い社員が多いというのは確かですが,それだけなのか?

おれは偶然も2つまでは許すことにしてるんだ。しかし3つも重なったらこいつは偶然とは思えん。何らかの必然があるんだ」 これは「機動警察パトレイバー」の登場人物である松井刑事のセリフです。グリフォン編にでてくるんですね。ネットで調べるとコミックの第18巻(こちらは,ゆうきまさみのマンガです)が出典元となっていました。

でも,私にはこのセリフがとても印象に残っています。「二度あることは三度ある」とはよく言うことわざですが,「偶然」が3回も続くと言うことは考えにくい。

普通に考えれば,職場の雰囲気,家庭の環境,本人の健康・年齢,そういった要素がいくつも絡み合って妊娠・出産につながると思います。ところが今の職場は,結婚していて出産適齢期にある女性は3人しかいません。他の女性は独身か50歳以上。すなわち,妊娠の可能性がある女性社員全員が一斉に妊娠したのです。これはすごい。

「子どもは授(さず)かりもの」といいますが,本人にとってはそうであっても会社として対象者全員が授かるというのは本当に喜ばしい。まさか3人で示し合わせたわけではないでしょうが,何らかの導きがあったとしか思えません。今年はいいことがありそうです。

腹を蹴られなぜかわいいと思うのか よっこらしょっと水をやる朝(俵万智)

2020年1月26日 (日)

「君の瞳に恋している」を聞きながら「バブルの頃を夢見てる」

私の家のテレビでは「Fire TV」仕様です。妻がアマゾンプライムの会員になっているので,アマゾン提供のソフトも見ることができます。

もともとは,私が「DAZN」で鹿児島ユナイテッドの試合を見たいと言い出したことが「Fire TV」仕様にしたきっかけだったのですが,Jリーグのシーズンオフの期間はちょっと違います。

今は「DAZN」でラグビーのトップリーグの試合を見ています。でもちょっと残念。開幕戦こそほとんどの試合が放送されていたものの,第2節,第3節とそれぞれ3試合しか放送されていないんですよね。ラグビーって人気があるのかないのかよくわからない。契約上の問題なのか。

そこで私が最近見ているのが「アマゾン・ミュージック」。見るという表現より「聞いている」といった方がいいでしょう。選択した「アルバム」の曲が流れるだけです。画面にはCDのジャケットを背景にして歌詞がでてくるだけというシンプルさ。これが私にはピッタリ。

先日は「一発屋特集」を聞いていると,なつかしいアメリカンポップスが。タイトルを見ると「Can't  take  my  eyes  off  of  you」。歌っているのはボーイズ・タウン・ギャング。へー,「君の瞳に恋してる」の原題ってこうだったのか,女性歌手はグループだったのか,と初めて知りました。でも,このときはカバーで,原曲は1967年に発表されていたこともウィキペディアで調べて知りました。今はほんとうに簡単に調べることができますよね。

この曲は,映画「バブルへGO! タイムマシンはドラム式」のエンディングでも流れていました。そう,ヒットしたのは1982年。バブルの真っ盛りでした。広末涼子主演のこの映画。失われた10年に苦しむフジテレビが「バブルの夢よ,もう一度」の思いを込めて製作したコメディ映画です。

ちょうどその頃,「メジャーリーグ」(チャーリー・シーン主演)という映画がヒットしていました。長年低迷を続けるインディアンズを,せめて映画の中で優勝させようとして製作したことが話題でした。当時の私は,やっぱりアメリカでは野球ファンのスケールが違うなといたく感心したものでした。

「バブルへGO」も,そういう意味ではスケールが大きい(?)と言えるのかな。まあ,この映画はさほどヒットしていないので,「メジャーリーグ」と比べるのはちょっと気が引けます。

それはともかく,アマゾン・ミュージックはいいですね。昔はポップスやクラシックのいい曲をシンプルに放送していたFM放送が,今やおしゃべり番組ばかりになっています。FM放送のAM化を残念に思っていた私には,うれしい新たな発見でした。

この曲と決めて海岸沿いの道とばす君なり「ホテルカリフォルニア」(俵万智)

2020年1月25日 (土)

鹿児島レブナイズ ながちぇるの復帰戦は白星と自身の3Pシュート

今日は県立体育館にB3リーグ,鹿児島レブナイズ対岩手ビッグブルズの試合を見に行きました。細かい氷雨が降る中,400人を超える観客がきていました。大半は若い女性かカップル。男一人の客はほとんどいません。そんな中,50歳間近の私はひるまず一人で応援に行きました。

お客の数はともかく,注目は永山裕太選手(背番号58)の復帰です。ポジションはスモールフォワード。試合前の練習では3ポイントシュートをガンガン決めていて私の一押し選手です。また,勝利した試合後は「きょうのながちぇる」というコーナーで,子分の福田惟吹(ふくだいぶき)選手(背番号59)とコントで笑いをとるのが定番で,観客を楽しませていました。

しかし,昨シーズンの途中から膝の怪我で長期の欠場を余儀なくされていました。今日は試合前の練習に参加していたので,今日こそは出場。期待が高まります。

永山選手は第1クオーターから出場。シュートは決まりませんが,自陣コートでインターセプトするなどディフェンスで活躍します。攻撃面では得意の3Pシュートがなかなか決まらずフラストレーションが貯まりますが,第4クオーターでようやく3Pを決めました。オーケー、グッド!

それに比べて子分の福田選手はいまひとつ。攻撃面ではシュートが決まらず,ディフェンスでもポジションはセンターなのにリバウンド争いにからめないシーンが続きます。試合全体をとおして見るとボイキンのほうがリバウンド回数で上回っているはず。がんばれ! 福田!

試合の経過では第三クオーターでは8点差をつけられて劣勢でしたが,今日もボイキンが大活躍。とにかくフリースローを確実に決めたところが大きい。これで逆転しました。このほか,川上選手の3Pシュートも決まり,最後は10点差をつけて余裕の勝利。観客も大満足。応援に来た甲斐がありました。

試合後,永山選手のインタビューがありましたが,柄に似合わないしおらしいコメントでした。「明日も試合にきてください」とのコメントもありましたが,もちろん私は明日も観戦する予定です。明日は3ポイントをガンガン決めてくださいね。

私は試合後の勝利インタビューの途中で体育館を出ました。バスの時間が来ていたからです。ごめんなさい。

ところで「きょうのながちぇる」のコーナーはあったのかしら? いつものMC岡田はいなかったけれど・・・。ちょっと気になります。

でも永山選手はちゃんと笑いをとっていました。会場で配布されるパンフレットには,レブナイズのメンバーが掲載されています。生年月日,身長,体重,出身地などの情報のほかに,毎回質問コーナーがあります。今回の質問は「無人島に3つ持っていくとしたら何?」

選手のほとんどは,ナイフ,火器,寝具などのサバイバルグッズを答えている中で,永山選手だけは「ナスD(開拓係),吉田沙保里(ディフェンダー),長澤まさみ(恋人)」と相変わらずおちゃらけた回答でした。いいね!

ところで私のことですが,試合前に島美人500ml(アルコール25°,400円)とミックスナッツ(100円)、体育館前でポテトフライ(300円)を買って2階席に陣取りました。ハーフタイムのときには焼酎は飲み干しただけに、最後はほろよいかげん。

鹿児島中央駅に迎えにきた妻が、私が車に乗り込むなり「あんた、くさいよ(怒)」 いいじゃないですか、どうせ酔っ払いなんだから。それを聞いた妻はさらにヒートアップ! そのあとのことはご想像におまかせします。

あーじゃあじゃ、うんまばっぽー、この声がいつか言葉になってゆくのか(俵万智)