緊急事態だからこそトリアージが必要ですよね クルーズ船の上陸延期
新型コロナウイルスの感染者が多数いることが判明したクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス。現在も横浜港に停泊したまま一般の乗客は上陸を許されず,船内に留め置かれています。
最近は毎日「乗客の多数は70代の高齢者」「薬の不足が深刻」というニュースが報じられています。いま,私の見ているNHKニュースも。下船は2月19日というからまだあと10日もあります。高齢の乗客は薬が届くか不安なのでしょう。
それにしても一体何人がそういう訴えをしているのかは明らかではありません。映像はたった1,2人ですが,その人に薬が届かない理由も同じくわからない。
私に理解できることは,とにかく高齢者って薬が手放せないってこと。今見ているニュースでも,薬を5種類以上も毎日服用しているといっています。これがないと命が危ないと。これが日本の高齢化社会の現実なのでしょうか。命を長らえるために,毎日何種類も薬を飲み続ける。日本の医療費が増え続けるわけです。
「お金の多寡で寿命が決まってはいけない」と多くの人は思います。確かにそうです。私もお金がないから助かる命が助からないのは可哀想(かわいそう)に思います。だから,医師は患者を平等に診なければならない。正論です。
でも,現実の病院を見るとどうでしょう。10年以上前のこと。私が体調を崩し,妻が介抱をしながら私を病院に連れて行ってくれました。ひどい吐き気でシャーレを口にあてたまま1~2時間診察を待ちました。その待合室には数十人を超える高齢者が世間話に花を咲かせています。彼らはただ薬をもらうためだけに病院にきていて,時間がいくらでもあるのです。その横で,私は苦しみ続けました。これが平等なんでしょうか?
娘がまだ1,2歳のとき。娘の耳から黄色い体液がこぼれてきたことがありました。仕事を休み,慌てて娘を近所の耳鼻科の病院に行きました。この耳鼻科は人気があって,お年寄りがたくさん来ていました。ずいぶん長いこと待たされて,医師の診察室に通されました。順番がひとつ前のおばあさんを医師が診察していて「どうしましたか」と声をかけると,「はあ,耳あかがたまってて,とってもらえますか」。それを聞いた私は「ふざけるな」と叫びたくなりました。これが平等なんでしょうか?
日本の病院は待ち時間が長い。それも専門性の高い病院,腕のいい医師の病院だとその傾向が顕著です。これは時間のある人には有利です。いくらでも暇つぶしができますからね。しかし,こういうのを平等というのでしょうか。私は,忙しい人,急患の人にはおそろしいほど不平等なシステムだと思います。
今回の新型コロナウイルス騒動もまったく同じ印象を抱いています。薬のない高齢者はどうして自分の主治医に相談しないんでしょう。携帯電話ぐらいあるでしょう。事情は不明ですが,だからといって自分の窮状をマスコミに見せびらかす神経が理解できません。それで解決したんですか?
同じくニュースでは「症状のない人のウイルス検査をせよ」という一般の乗客声も紹介されています。こんなことを言っている乗客はインフルエンザにかかっていないことを証明するために,いつも検査をしているんですか? そんなことしないでしょう。元気な数千人の人の検査をやり出したら,本当に必要な人の検査が後回しにされるって思わないんでしょうか?
マスコミは現地の切実な声を「垂れ流し」にするのはやめてはどうでしょう。どうしてそういう判断になっているのか,客観的な理由も添えて報道することが「冷静」な対応ではないかと思います。
煙にて虫歯を治す男いて治った顔して客は立ち去る(俵万智)
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