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2022年5月 7日 (土)

「新しいがん治療の時代の夜明け ウイルス療法」を読む

令和3年6月11日、日本初のウイルス療法薬「G47⊿(デルタ)」の製造販売が承認されました。脳腫瘍に対するウイルス治療薬としては世界初のことです。

ウイルス療法とは、ウイルスを用いた新しいがんの治療法のことです。ウイルスががん細胞だけで複製して正常な細胞では複製しない。そういうウイルスを遺伝子組み換え技術で人工的に造り、ウイルスそのものを薬として使います。

ウイルスをがん細胞に感染させると、そこでウイルスが増える。増えたウイルスが一斉に細胞外へ散らばる際に宿主となっていたがん細胞は物理的に破壊される。散らばったウイルスは再び周囲のがん細胞に感染する。このサイクルを繰り返し、がんを治療するのです。

がん細胞においてウイルスがよく増えることは、がん細胞の特性として昔から知られていたようです。1971年に発行されたランセット誌には、麻疹ウイルスに感染したらがんが治ったという症例報告が掲載されています。

今回承認されたG47⊿はがん幹細胞を含めて、すべてのがん細胞を根こそぎ殺すことができます。がん幹細胞とは、細胞一つからでも缶をまるごとつくることができる細胞です。これまでのがん治療法(化学療法、放射線療法)ではこの幹細胞を完全に殺すことができなかったため、がん幹細胞が再発や転移の原因とされていました。そういう意味では、今回のG47⊿は画期的な治療法です。

しかも、気になる副作用は、免疫反応に伴う発熱や腫瘍の腫脹(からだの器官や組織がはれあがること)など限定的というから素晴らしい。

しかしながら、論者である藤堂具紀氏によると、ワクチン効果は個体差が大きいため、臨床現場での対応が今後の課題だとのこと。医学が進んでも、未解明の部分(遺伝的な体質など)があるということなんでしょうね。

ウイルスといえば連想するのは悪者ばかりですが、それを治療薬としてしていることに違和感を覚えるひとも多いことでしょう。しかし、元来、薬は毒です。「毒をもって毒を制す」なんて言葉もあるでしょう。これまでのがん治療法の化学薬品、放射線も、使い方を間違えると健康を害することになるのはみなさんもご承知のとおり。医者がすべて正しいとは思いませんが、医学の進歩を受け入れるところを受け入れないとね。

もゆる限りはひとに与へし乳房なれ癌(がん)の組成を何時より知らず(中城ふみ子)

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