食欲の秋 スポーツの秋 読書の秋 今では死語になりつつある秋
私が子どもの頃は,秋になるとニュースなどで「食欲の秋,スポーツの秋,読書の秋」などのフレーズが決まり文句でした。別に季節とは関係ないだろうと思いながらも,子どもの頃はそういうもんだろう,と受け止めていたものです。
それが最近は,こういうことを聞かなくなりました。たまたま,そういうフレーズを聴く場面がないだけかもしれませんが,新聞やニュースにもないので,この傾向に間違いはないでしょう。
考えれば今は食事に季節感なんてありません。収穫したばかりのものをたべるかといえばそうではない。世界中から食材が集まり,ハウス栽培で季節に関係なく野菜がスーパーに並びます。
スポーツも然(しか)り。今や年中,プロスポーツが盛んです。夏にはプロ野球,Jリーグ,冬にはバスケットボール,ラグビーなどなど。運動会ですら春に開催するところもあるぐらい。
読書となるとますます季節とは関係ありません。なにしろ本を読まない人が増えました。大学生の半数はまったく本を読まない時代。読書量だけでなく,本の売り上げが落ち込んでいるのも当然でしょう。
こう書き連ねていくと,現代は娯楽やものにあふれているといっていいかもしれません。人の欲望の行き着く先には,季節感や日常・非日常の別が失われて,逆に感動を失っていくのでしょう。いいことなのか,悪いことなのか。
子どもらはゴミを宝の山と呼ぶ一キロで三十円のビニール (俵万智)