キンモクセイの花が散っていくよ 年々歳々花相似たり歳々年々人同じからず
土曜日は実家に戻りました。両親はどちらも元気していますが,どちらも70歳をずいぶんよぼよぼになってきました。
お昼ご飯を母が用意してくれました。午後からは父と囲碁を3番打ちました。ただ,それだけなのですが,月に1回の親孝行だと思っています。
甥っ子の二人が私が戻ってきたと聞いてやってきました。兄の方は小学校中学年。数年前までは「おじちゃんチェスしよう」とせがんできたいたのですが,最近は将棋を覚えたらしく,将棋ばかりをおねだりするようになりました。
この子は癇癪(かんしゃく)持ちで,学校でも問題児として有名なようですが,私と将棋を指すときはしおらしくしています。私がお昼ご飯を食べ終えるまで静かに待ち,いざ将棋をするとなるときちんと座って駒を並べ始めます。
棋力は大きく差があって,私が六枚落ちの上手(飛車,角,桂馬,香車の6枚ない状態)。前回対戦したときは私の3戦全勝。今日はこの子なりに考えてきたようで,3勝3敗の五分の戦績でした。一手詰みに気づかないときには「本当にその手でいいの? もうちょっと考えてごらん」を本人に考えさせて,自分の力で勝てるように見守ります。
父との囲碁を終えたとき,今度は甥っ子の弟がやってきました。何かを話すわけでもなく,私の周りごろごろするだけ。「おじちゃんと一緒に畑を見に行こうか」と誘いました。
今年の初めには近所の荒れ地を耕作して野菜をつくろうと考えていたのですが,開墾を始めた途端にコロナ騒ぎでずっと中断。最初に10平方メートル程度に鍬(くわ)を入れて,10ヶ月以上放置していたことになります。
案の定,畑は一面,枯れたツユクサに覆われていました。しばらく畑をほっつき歩いてから実家に戻ると,「おじちゃん,キンモクセイが降ってきたよ」と甥っ子がささやくように,私に教えてくれました。地面には花筵(はなむしろ)。そこに,キンモクセイの花がパラパラと落ちてきました。茶色い,小さな花弁が無数に風にあわせて落ちてきます。それとともに,かすかにキンモクセイの香りが漂いました。まだ,香りをだせる花が少々のこっているようです。
このキンモクセイは隣の家の庭に,私が子どもの頃からありました。今ではこの隣の家は荒れ果て,屋根には穴が空き,上からのぞくと廊下の床まで見えます。この40年で隣の家の主はいなくなってしまいましたが,キンモクセイはあのころと変わらぬ花を咲かせているかと思うと人の一生ってあっと言う間に過ぎていくんだな,と思わずにいられませんでした。
私は50歳直前のおじさんですが,この甥っ子のような子ども時代がありました。あの頃は町は賑わっていて,多くのお客が実家の店を訪れていました。それが今や1日店を開けて1人も来ないことも。こんな時代になるなんて想像だにできませんでした。
木犀(もくせい)をみごもるまでに深く吸う (文挟夫佐恵)