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2020年9月

2020年9月29日 (火)

御楼門が豪華すぎる 一点豪華主義は昔も今も変わらない

仕事帰りにいつもの小料理屋に寄りました。

「ずいぶん秋めいてきましたね。この涼しさはいいですよね」と話しかけると,小料理屋のおばちゃんも「雲が入道雲から,筋雲になってきたでしょ。本当によかったわ。でも,この冬はすごく寒くなるらしいわよ。テレビが言っていたわ」

そんなたわいもない話から始まりましたが,しゃべりはおばちゃんと私は9:1ぐらい。圧倒的におばちゃんがしゃべり倒します。

話は鹿児島城の御楼門のことになりました。

「このあいだ,お友達が3人ぐらい遊びにきたのよ。そのとき,御楼門が見たいって話になってね。近くだから下見をして,それから案内したのよ。そしたら閉まってるの。お休みなんだって」

へーっとおつまみをつまみながら聞いている私を尻目にどんどん話が続きます。

「西側の裏口が開いていたから,そこから入って中をみたんだけどね。御楼門のほかに何もないでしょ。あれじゃあだめよね。私はあそこにお茶屋があればいいと思うのよ」

なんでまた,お茶屋なんですか?

「あのあたりは休憩するところがないでしょ。黎明館じゃちょっとねえ。それよりも番茶200円とか,抹茶500円とかで飲めた方がよっぽどいいわ。だいたい御楼門が立派すぎるのよ。それに比べてまわりになんにもないんだから」

黎明館にもレストランがあったと思うけど。あれじゃだめなんですか?

「鹿児島はお茶の産地でしょ。だからお茶なのよ。昔,ソムリエの田崎真也が城山観光ホテルに泊まった事があったのよ。そのとき,すごく怒ったことがあったんだって。ホテルの寝室に番茶のティーバッグがあったのがいけないって。それはそうよ。鹿児島はお茶の産地。茶葉が欲しいでしょ。ティーバッグなんて全国どこでもあるから」

なるほど。

「黎明館にもお茶のできるスペースがあるのよ。知ってた? でもあれはダメなの。御楼門からちょうど黎明館の反対側になるし,なによりあそこはガスがないから大変。黎明館が引火する可能性があるからと言ってガスの使用を認めてくれないのよ」

行政って本当に面倒くさいですよね。しかし御楼門は鹿児島の経済界の発案。民間の活力でお茶屋ぐらいはできそうですけどねえ。

「本当。お茶を習っている人っていっぱいいるでしょ。そういう人は人前で披露する場所なんてないじゃない。そういう人こそ,こういうお茶屋でお稽古をかねてやればいいって思うんだけど。あなたはどう思うね」

確かに何かをやろうとすると人件費が大変です。行政はハード整備はできても運営が負担になって失敗する例が山ほどあります。お茶を勉強されている方々にチャンスを与えるっていい考えかも。ところで,お友達は御楼門を喜んでくれましたか?

「それがね。途中でおしっこが漏れるって言ってそのまま黎明館のトイレに行ってね。御楼門なんて見てないのよ。いったい何しに来たんだか」

接待役は大変ですね。

無人駅ここに居らざる駅員を幻肢のごとく思ふたまゆら(高野公彦)