« 勝ちにいけーっ ルカオ! ルカオ! ルカオ! やっぱりルカオ! | メイン | ユナイテッドはファジアーノ岡山と静かにドロー まずは体調回復を »

2019年11月 1日 (金)

「地元チームがある幸福 スポーツと地方分権」を読む

「地元チームがある幸福 スポーツと地方分権」(橘木俊詔)を読みました。

私はサッカーJ2の鹿児島ユナイテッドFCとバスケットボールB3の鹿児島レブナイズの試合を欠かさず見に行っています。もともとのきっかけは会社で「試合を見に行こう,応援しよう」とのお知らせがあったから。

サッカーもバスケットボールも観戦するようになったのは2年前。どちらもファンクラブに加入しました。J3時代のユナイテッドは強かった。雨の日は観戦を見送ることはありましたが,基本的にはいつもバックスタンドで声を張り上げていました。鹿児島レブナイズは土日に連戦なので,どちらか1日には必ず鹿児島アリーナで応援しています。

そんな私は,思わずこの本を手に取りました。ファンの幸福感をどのように分析しているか興味を惹かれたから。

しかし,内容はプロスポーツが地方に展開していく事実の指摘と発展のための提言ばかり。他には経済学的な観点で,ホームスタジアムの建設費,スポーツグッズの販売などの影響が取り上げてある程度。完全にプロスポーツ会社からの視点で書かれていて,そこには地元ファンの「幸福」なんて切り口はありません。

「地方分権」もオリンピックが東京開催であることに異議を申し立て,競技会場を日本全体で分散しようと主張している程度。これは図らずもマラソンと競歩で実現しましたが,地方分権とは無関係だと断言できます。

プロ野球が地方に移転したことを著者は評価していますが,これは観客動員が増えたという事実を指摘しているだけであり,ファン目線の分析はありません。

羊頭狗肉(ようとうくにく)と言いたいぐらいの看板倒れ。そもそも「幸福」を感じているはずの観客に対するアンケート調査がこの本にはまったくなく,引用されるデータもあちこちのホームページが出典というお手軽さ。調査が浅いから内容も浅い。

本の帯に「遠くのオリンピックより近くのチームのほうが大切だ!」と大きく表示されていますが,その理由は本書を読んでもわかりません。これはひどい。

J2で苦戦している鹿児島ユナイテッド。10月30日のホームゲームではFC岐阜を相手に試合終了直前のルカオのゴールで1-0と劇的勝利。5千人の観衆が総立ちで歓声を上げました。あの震えるような感動を味わうことができるのは地元ならでは。テレビで一人で見ているのと,生であの場所で選手達と一緒にいるのとでは,感動の度合いがまったく違います。

B3で負け続ける鹿児島レブナイズもそうです。負け試合であっても,ダンクシュートを決める,スリーポイントを決める,ドリブルで切り込む。そんな迫力あるプレーを間近で見ることができるなんて,本当に幸せです。でも,そんな記述はまったく見当たりません。

思うにこの著者(橘木俊詔)は,生で地元チームの試合を観戦したことがないのでしょう。タイトルはファン目線なのに内容はプロスポーツ経営者目線。もしこの著者が観戦経験が豊富だとしたら,彼の精神構造がひねくれているとしか思えない。

この本の内容なら「地方で生き残るプロスポーツの条件 地元チームの経営戦略」というタイトルがぴったり。売れないと思いますけど。

花嫁の生花のブーケ褒(ほ)めやれば3万5000円也と言う(俵万智)

トラックバック

このページのトラックバックURL:
http://app.synapse-blog.jp/t/trackback/716622/34194621

「地元チームがある幸福 スポーツと地方分権」を読むを参照しているブログ:

コメント

コメントを投稿