村上春樹作品を読む女
先日、会社の同僚を飲みに誘いました。彼女は私と同じ50歳。お酒が好きだと言っていたので声をかけたのです。
待ち合わせの場所に30分ほど遅れて彼女は現れました。彼女には高校生と中学生の子供がいて、その食事の準備で遅れてきたとのこと。
彼女はカウンター席の私の隣に座るなり、「今日は残っていたパンをお昼からずっと食べていたからお腹が空いてないのよね」とぼやいてゆで落花生を注文。「最近は家で何をしているかわからないのに気づいたら12時をまわっているのよね」とこぼし始めました。
「テレビをみているとか?」「なんだろうね。ごはんつくったり、洗濯したり、おふろはいったり。何に時間を使ってるんだろう。最後に黒糖焼酎を飲んで寝るのは1時ぐらい。仕事が忙しいわけではないのに寝不足になってる」
どうやらご機嫌斜め。私と飲みたくないけど義理で来ているのを強調しているように感じました。が、ここで飲みをやめるのも大人気ない。とりとめなくおしゃべりを続けました。
男ばかりで飲むと仕事の話になりがちです。人事や政治などが中心になります。女性と話をすると家庭や趣味の話題が中心になります。この日は村上春樹作品について語りました。彼女は私と同様、彼の長編作品はすべて読んでいるようでした。
「私はエッセイや短編とか中編も読むんだ」「へー、私はエッセイは読んだことないな。好きなので『太陽の南、国境の西』って作品があったよね」「あれってアメリカの南にあるメキシコのことだから『国境の南』じゃなかったっけ?」「あはは。『太陽の西、国境の南』? あれ、なんか変だな。『国境の南、太陽の西』だったわ」「島本さんとの子どもの頃の恋心とかだよね」「そうそう、あれも不思議なストーリーだったわ」
「私が好きな長編は計算士が登場するやつ」「それ、『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』でしょ。私が高校生のとき、最初に読んだ村上作品。2つの世界が交互に登場するけど、ハードボイルドワンダーランドのところだけ最初に読んじゃった」
こんな話ができるから、つい誘ってしまうのかも。
サキサキとセロリ噛(か)みいてあどけなき汝(なれ)を愛する理由はいらず(佐佐木幸綱)
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