« 「平常への復帰 大統領選挙後の米国政治と日米関係の行方」を読む | メイン | 知事が維新の会だから大阪はピシャーとしとる »

2021年4月 6日 (火)

「習近平体制の今後と日米中関係」を読む

學士會会報No.947の小論「習近平体制の今後と日米中関係」(國分良成)を読みました。

小論によると、中国には3つの矛盾が存在するといいます。以下はこの小論の私的要約です。

ひとつは富と強の矛盾。経済成長で増えたパイを適正に分配すると国民は豊かになりますが、負担の重い軍拡はできなくなり、強国的な姿勢はとれなくなります。

ふたつめは言と行の矛盾。いうまでも中国共産党の立派なスローガンは行動を伴わないことが多い。たとえば「新常態」。中国の高度成長は終わって鈍化したという意味ですが国民に不評で使用されなくなりました。また「核心的利益」もあらゆるものが「核心的利益」になって意味をなくしました。「一帯一路」も「国内に貧困地域があるのになぜリターンの少ない近隣諸国に投資するのか」と不評で最近は抑え気味。

みっつめは政治と経済の矛盾。経済成長が鈍化した今、社会矛盾や不満が大きくなり、党指導部を脅かすようになりました。しかし、中国共産党は所得の再分配についての議論は消極的で、国防費を増強させて結局は投資頼みの傾向があります。

いうまでもなく中国は、中国共産党が独裁を敷いている国です。その結果として、中国で最も発達しているのは人を管理する体制です。この体制のせいで人は伸びやかに能力を発揮できません。中国共産党の弱みは何かというと、やはり中国共産党は「日本の侵略から中国人を救った」「貧しさから農民を救う」という理念によって農民を組織に組み込んだのが、この独裁国家の根源です。そういう観点からこの国を見なくてはいけない。

習近平は当初は反腐敗闘争という名の権力闘争を繰り広げました。しかし、既得権益層の追い落としに失敗し、妥協を余儀なくされています。その一方で、共産党の独裁や思想統制の強化は進みました。これは結局組織の弱体化の裏返しに過ぎません。最大の原因は経済成長の鈍化です。

もやは中国経済は飽和状態にあり、中国の新規の大卒は毎年900万人近く。日本の10倍以上です。中国政府は彼らに起業させることで雇用を確保しようとしていますが、はたして吸収できるでしょうか。

中国には優秀な人材がいくらでもいますが、それを社会の発展に生かしているかは疑問です。たとえばアリババグループ。習近平派との間に太いパイプがあったからこそ急成長しましたが、中国共産党は民営企業に規制をかけ、利益を吸い上げようとして関係を悪化させています。

そして歴史問題について触れないといけません。歴史問題が本格化したのは、江沢民時代の1995年以降です。江沢民の父は汪兆銘政権の情報系統の幹部でした。つまり、日本の傀儡政権のために働いた「漢奸」だったのです。こうした出自からくる個人的な負い目が、彼の抗日学習の強化や反日的な態度に現れたのです。

しかし、歴史問題は本来おかしなところがあります。抗日戦争で主体的に戦ったのは蒋介石の国民等であって、共産党ではないからです。当時の毛沢東は山奥にいて戦場では戦っていないのです。

こういう欺瞞を中国共産党はいつまで続けていくのでしょうか。「20世紀少年」(浦沢直樹)の「ともだち自民党」みたいです。漫画ではなく現実というのが恐ろしい。そして今年、2021年は中国共産党100周年という記念すべき年です。歴史問題をどのように政治利用するのか、注意する必要があります。

なぜ銃で兵士が人を撃つのかと子が問う何が起こるのか見よ(中川佐和子)

トラックバック

このページのトラックバックURL:
http://app.synapse-blog.jp/t/trackback/716622/34228523

「習近平体制の今後と日米中関係」を読むを参照しているブログ:

コメント

コメントを投稿