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2021年4月 5日 (月)

「平常への復帰 大統領選挙後の米国政治と日米関係の行方」を読む

學士會会報No.947に掲載されていた「平常への復帰 大統領選挙後の米国政治と日米関係の行方」(久保文明)を読みました。

アメリカ大統領選挙が終わって半年が過ぎました。すでに忘れられた存在になりつつあるトランプ大統領に関する興味深い小論です。

あれだけマスコミの批判を浴びながら、確実に支持されていたトランプ大統領。マスコミがいかに世論を無視しているか、乖離しているかという現実をつきつけられて、戸惑った人が多かったことでしょう。以下は小論の要約です。

トランプ大統領は就任後支持が不支持を上回りましたが、以後一貫して不支持が支持を上回っている。また、在職の4年間は共和党支持者のトランプ支持は約90パーセントと極めて高かった。そしてトランプ大統領の支持率は最低38パーセント、最高47パーセントと振れ幅が歴代大統領の中で最小でした。それだけ強固な支持者がいたということです。

もちろんトランプが素晴らしい大統領だと持ち上げているわけではありません。「ポリティファクト」(政治家の主張の真偽を検証するサイト)によると、トランプ大統領の発言は7割が「ほとんど嘘」か「嘘」か「真っ赤な嘘」です。「ワシントン・ポスト」によるとトランプは1日平均15回の嘘をついたとのこと。

ではバイデンの勝利の理由はなにか。それは「トランプではないから」(56パーセント)。圧倒的多数です。つまりトランプが嫌われていたからバイデンは大統領になったというわけです。たしかに、現在のバイデンの存在感はうすすぎてニュースになりませんからね。

では大統領選挙の投票率を分析してみましょう。まず女性。女性は1980年から一貫して民主党支持者が多い。今回もバイデン支持56パーセント、トランプ支持43パーセントでした。でもこれは従来どおり。その意味で、女性はトランプ嫌いはおきていません。

一方白人。白人はアメリカの総人口の約60パーセントを占めます。そして投票率が高い。今回の選挙でも投票者全体の65パーセントが白人でした。白人のトランプ離れが民主党の勝利を決定的にしたといっていいでしょう。

黒人はバイデン支持が87パーセント。総人口の13パーセント。投票率も低いため、影響力は小さいのです。

この小論を読んで、つくづく報道ではそういう解説はほとんど皆無だったよなと振り返りました。集会の様子などのインパクトのある映像をテレビで流すだけ。迫力のある映像ではなく、緻密な解説ができるマスコミはいるのかしら。あっ、緻密な解説では視聴率がとれないということなのかも。テレビを見ている人ってそういう解説を理解できないから、なんちゃって。

さらにわれ生きねばならず夜の灯照る泥濘(でいねい)に無数に人行きし跡(田谷鋭)

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