「医療崩壊」の正体 日本全体の病床の2パーセントしか受け入れない現実
令和3年1月16日(土)の朝日新聞に,「病床確保 民間に迫る」の見出しで,「新型コロナウイルス感染症の患者が入院できる医療機関を増やそうと,政府は医療機関により強く協力要請ができるよう感染症法を見直す方針を示した」として,解説記事が掲載されていました。
私が望んでいた内容の記事がようやく掲載されました。
日本よりもヨーロッパの方が感染者数が圧倒的に(1日の感染者数は10倍以上)多いのに,なぜ海外の医療機関ではなく,日本の医療崩壊が叫ばれるのか,私にとっては非常に謎でした。解説記事を読むと「新型コロナの感染者は,米国で2300万人,英国320万人,フランス,イタリア,スペインは200万人を超える。それに比べて日本は30万人」
そして,病床数は「日本はベッド天国」と言われるほど多い。日本は人口1000人当たりのベッド数が13.0,フランスが5.9,イタリアが3.1,米国2.9,英国2.5。それなのに「入院が必要な患者が入院できない」と病床の逼迫が叫ばれるのはなぜなのか,と解説が続きます。
その原因としてあげられていることが,「民間医療機関が国内の医療機関の7割を占めていること」です。その民間医療機関をコロナ患者の入院を受け入れないのです。
民間医療機関がコロナ患者の受入に消極的な理由が,「感染防御のために人手が必要」「感染への恐怖や差別を理由にスタッフが離職」「ほかの診療ができなくなり減収」「規模が小さくて受入が難しい」です。
それを裏付けるように,厚生労働省が把握している急性期病院4255のうち,新型コロナ患者の受入実績があるのは1444(約33%)。受入実績のある民間病院は474だけ。
また,驚くことに新型コロナ用に確保した27,650病床(全国)。さきほどの解説のように日本には千人当たり13病床あるということは,日本の人口が1億1千万人とすると143万病床あることになります。つまり,新型コロナ用に提供される病床は日本全体の1.9パーセントしかありません。なんじゃこりゃ!
たった1.9パーセントの病床で新型コロナ患者を受入ができなくなるから「医療崩壊」? 「医療崩壊」の意味するところが,確保した病床だけでは新型コロナの患者があふれてしまうということであれば,「医療崩壊」は誇大表現ではありませんか? なにしろ98パーセントは通常どおり営業しているわけですから。この「医療崩壊」を防げと,コロナ患者の入院受入に消極的な民間の医療機関で構成される日本医師会が叫んでいることに強烈な違和感を覚えます。
眼をつむればまっくらやみが来るそんなことにも気づかざりけり(高瀬一誌)
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