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2020年9月14日 (月)

海外の著作を日本語に翻訳するときに原典を掲載するのはやめてよ

「国家はなぜ衰退するのか」(ダロン・アセモグル,ジェイムズ・A・ロビンソン共著)を読んでいます。今日読んだのは下巻です。オーストラリアの発展とフランス革命(その後のナポレオン戦争)が今日の経済的繁栄に大きな影響を及ぼしたところですが,その中に日本の明治維新が取り上げられていました。

そのとき気になったのが,坂本龍馬の船中八策が引用されていた箇所です。

「天下ノ政権ヲ朝廷ニ奉還セシメ,政令宜シク朝廷ヨリ出ズベキ事」など引用箇所が原典どおりの漢語の文章なのです。普通の人はなんとも思わないのかもしれませんが,私は嫌ですね。

この著書はもともとは英文です。それを翻訳するときになぜ現代語訳にしないんでしょうか?

ある程度の漢語の素養がある人なら大丈夫かも知れませんが,すべての読者がこれを読んですぐに理解できるとは思えません。英文を現代語訳したほうがよほど理解できるはずです。それをしないなんて。

同じようなことを「論語」でも経験したことがあります。

孔子が朝廷に仕えていたとき,客人を見送りにいった後,仕えていた王に「顧みず」と報告したという段があります。私は最初どういう意味だか分かりませんでした。

たしか呉智英の名著「現代人の論語」の中で,この箇所を解説した章がありました。

「顧みず」とは「お客さんは振り返りませんでした」という意味。お別れのときに,客人は振り返っては別れを惜しみます。その行為をしなくなるまで見送りましたよ,ということを報告したのです。

そしてこの解説は西洋の研究者の著書(英文)から引用したとありました。なるほど,論語もなまじ漢字で書いてあるので意味がよくわからない部分でもなんとなくわかったような気になります。しかし,英語となると厳密に理解しないと翻訳できません。そういう意味で英文の論語の方が理解が深まるというわけです。

さて,この著書を翻訳した鬼澤さん。あなたは教養があって原典でもそのまま理解できるすごい人なんでしょうけど,同様の箇所があるときには私のような浅学の読者のためにぜひ現代語訳にしてくださいね。

足もとはもうまつくらや秋の暮 (草間時彦)

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