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2020年8月 1日 (土)

李登輝元台湾総統の死去にまつわる報道 天声人語の不可解さ

台湾の李登輝元総統が7月30日に亡くなりました。97歳。台湾の民主化を成し遂げた偉人です。中国と台湾の関係を今の人は知らないでしょうから,私の記憶の範囲で記しておきます。

第二次世界大戦において,日本陸軍は中国大陸において,国民党軍と共産党軍と戦っていました。国民党を率いるのは蒋介石。共産党軍を率いるのは毛沢東です。今でこそ中国共産党は抗日を大々的にPRしていますが,日本陸軍が戦ったのは国民党軍です。共産党は日本軍相手ではかなわないと判断してゲリラ戦ばかり。共産党は日本軍との本格的な衝突を避け,日本敗戦後に国民党軍と戦うときにようやく大規模な戦闘を行いました。

国共内戦の結果,国民党軍は共産党軍に敗れ,台湾に逃(のが)れます。国民党率いる蒋介石は中国の正統な政権は国民党だと主張していましたが,結局は中国大陸を支配している共産党をアメリカなども支持することとなり,現在に至ります。蒋介石の死後,息子の蒋経国が台湾を支配します。

蒋経国の後継者が李登輝です。それまで台湾は国民党の支配下にありました。今の中国が共産党の支配下にあるのと同じような感じです。そこに李登輝は民主主義を導入し,台湾国民は選挙によって総統を選べるようになりました。私が中学生か高校生の頃の話です。

李登輝が生まれてから京都大学を卒業するまでは日本の植民地支配の時代でもありました。台湾国民の親日ぶりは有名ですが,李登輝の影響も少なからずあると思います。

さて,今朝の朝日新聞の天声人語は,李登輝を取り上げていました。「総統在任中も退任後も,李氏は日本支配に対する嘆きや恨みを公言しようとはしなかった」「好むと好まざるとにかかわらず,日本語を刷り込まれた歳月の長さを思わせて,やはり寂しい」

これを素直に読むと,李登輝は日本の植民地支配に恨みをもっていたが,台湾は中国共産党と対抗するために日本との同盟関係を良好に保つ必要があり,やむなく親日家の振りをしていた,と読者に思わせたいのでしょう。すごい偏向,というか,こじつけですね。

植民地支配は「悪」であるという朝日新聞の主義主張がその背後にあるのは間違いないでしょう。しかし,歴史はそんなに単純ではありません。だったら香港はどうなんでしょう。イギリスから中国共産党に返還されて,香港人は中国共産党に支配されて喜ぶべきだと朝日新聞は主張すべきではないかと思うのですが,こちらは香港の自主独立を前面に出しています。これって卑怯ですよね。力のない正義は無力です。それを無視している。

私からすれば,香港はイギリス植民地時代の方がずっとよかったと思っています。何より言論の自由がありました。

人権は侵してはならないものです。植民地支配はその人権を侵す典型的な例だと朝日新聞は考えているんでしょう。一方,中国共産党の香港における取り締まりのように,言論の自由を侵すことも甚だしい人権侵害です。では,言論の自由と植民地支配が衝突するとき,朝日新聞はどう考えるのか。いうまでもなく,支離滅裂な議論を展開します。見たくないものはなかったことにします。正義論を振りかざす朝日新聞のグロテスクな一面が露わになります。

正義を否定する気はありませんが,このような天声人語を読んで,「我が意を得たり」と喜ぶ人がいるのでしょう。それをいちいち現実化したら世界中は争いばかりになることでしょう。それが朝日新聞の理想郷なのでしょうね。

日輪を隠す日光日々草 (池田澄子)

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