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2020年8月17日 (月)

「国家はなぜ衰退するのか」を読んでいます 

今日は会社をサボりました。朝,妻の弁当を作った後,9時まで布団でごろ寝。起きてから銀行と郵便局で送金などの手続きを済ませ,その後はクーラーを効かせた自宅でゆっくりと過ごしました。このままずっとサボっていたいよ,本当に。

アマゾンミュージックの松田聖子を聞いたステーション(?)を選び,80年代から90年代の懐かしい日本の歌謡曲を聴きながら,sdinの将棋と囲碁を交互にして時間をつぶしました。その合間に「国家はなぜ衰退するのか」(ダロン・アセモグル&ジェイムス・A・ロビンソン)を読みました。最近のハヤカワはSFだけではなくこういった硬派の翻訳もしているんですね。

さてこの著書,知的興奮をかき立てる内容になっています。収奪的社会と包括的社会に分けて,国が発展したのは包括的社会であること,衰退するのは収奪的社会であることを,ローマ帝国やメソポタミア地域の石器時代の村の考古学のデータを参照しつつ論じていきます。

収奪的社会とは,一部のエリート層が国民の大部分から富を奪うことで成立する社会。ラテンアメリカの植民地がいい例です。一方,包括的社会とはおのおのの財産権が保障され,シュンペーターのいう創造的破壊を許容する社会です。アメリカが代表的ですね。

創造的破壊とはちょっと難しい経済用語かも知れませんが,簡単にいうと技術革新が起きれば旧態の産業は破滅的打撃を受けます。しかし,そういう技術革新を成し遂げていく社会こそ経済は発展していきます。最近ではGAFAが創造的破壊の中心的なメンバーですね。

この技術革新は科学技術の分野にとどまりません。株式会社や民主主義などの社会システムもそれに含まれます。

面白いなと思ったのはベネチア共和国のくだりです。ベネチアは地中海貿易で発展しました。この本によると伝統的家系が既得権益を保護するために,政治的なシステムから新参者を排除し始めたときから衰退が始まるとしています。政治的な収奪的社会がやがては経済的な収奪社会へと進み,経済は衰退し,国家は衰退していくというものです。

ベネチアと言えば塩野七生の「海の都の物語 ベネティア共和国の1千年史」を思い出します。ベネチアでは三十人委員会という国家の最高意思決定機関(くじ引きと投票を組み合わせて選出する複雑な政治システム)を導入していたことを,私はこの本で知りました。

ベネチアはナポレオンに降伏してその歴史を閉じるのですが,塩野七生はその衰退の原因を大陸進出だと分析していました。海洋国家であるにもかかわらず,大陸の土地を所有することで国家が変質していき,海洋国家としての進取の気性が失われたという主張だったと思います。

私は塩野七生よりもこちら本の説をとりたいですね。ソ連が衰退していったように,共産党という一党支配の国が発展し続けるというのはありえないと思います。今の中国はめざましい経済発展を遂げていますが,やがて社会の歪(ひず)みが顕著(けんちょ)になって,中国共産党の中国は内部崩壊を起こすだろう,と私は考えています。周囲の人々からは笑われるかも知れませんが,財産権が不安定な国が発展するのは限界があるというのは私の信念に近いのでこれだけは曲げません。

日本も既得権の保護ばかりが罷(まか)り通る社会になると必ず衰退してきますよ。あれっ,もう衰退の道を進み始めていましたかね。ゾンビ企業はさっさと倒産して新規産業分野に転換していくべきです。取り残された人をどうするかって? その人を救いたいのなら救ってもいいですけど,それは国家衰退の道と同じ道ですよ。早く気づきましょう。

二人してビデオを見るということのむなしさをついに言いだせざりき(俵万智)

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