« 1ヶ月も誰とも話をしないとなると気がおかしくなっちゃうのよね | メイン | 棒銀,いちご囲い,塚田スペシャル,そして今はW戦法で勝負!  »

2020年5月17日 (日)

「抗体はたっぷりあります」これで何が悪いのか? 風しんとコロナの差

先週,鹿児島市から送られてきた無料クーポン券を持参して「風しんの抗体検査」を受けました。昨日はその結果を聞きに,近所のかかりつけ医のところへ行きました。渡された「臨床検査報告書」を見ると,数値は180(単位はIU/ml)を超えていました。基準範囲は「20未満」と記載されています。

医師の話では「過去に知らないうちに風しんに感染したんでしょうね。抗体はたっぷりありますから,風しんの予防接種をする必要はありませんよ。新型コロナウイルスに感染してもほとんどは無症状だと言われています。それと一緒ですね」

新型コロナウイルス感染症については,日本はPCR検査件数が少ないと批判されています。調べてみるとPCR検査とは遺伝子検査。現在,ウイルスを保有しているかどうかを検査します。一方,抗体検査はウイルスではなく抗体があるかどうかを調べます。

ウイルスは病原のこと。治癒すれば体から排出されたということになります。逆に抗体はウイルスに感染したときに,ウイルスを排出するためにできる体の防御反応。ウイルスを排出した後も残るので,さらにウイルスに感染したとしてもその抗体がウイルスを容易に排出(治癒)できます。

つまり,「PCR検査」は今感染しているかどうかが分かるし,「抗体検査」は過去に感染した(あるいは現在感染しているけど,感染から抗体ができるほどの時間を経過した)ことが分かります。「PCR検査」の検体は「喀痰(かくたん。「たん」のこと)」や「鼻咽頭拭い液(鼻の奥の皮膚上の粘液のこと)」であるのに対し,「抗体検査」の検体は血液です。

こう考えると不思議ですよね。「PCR検査ができないなら抗体検査を」という報道があります。大相撲でも希望者全員に抗体検査を受けさせるとか。でも,抗体があるとわかってもそれだけのこと。現在感染していることの証明にはならないのです。私の風しんの抗体検査をみても分かるでしょう。風しんの抗体があるからといって,感染したことが分かるのは過去のこと。現在感染している可能性なんてほとんどゼロですよ。

そういうことを知らない,ワイドショーばかり見ている人がいかに多いことか。私のいる会社ではワイドショーが終わる時間になると苦情電話が増えます。内容はワイドショーの受け売りがほとんど。先日は「なぜPCR検査の検体に喀痰を加えないのか」という苦情電話がありました。北海道大学が研究で実証したことをやらないのはおかしいとさんざんわめいていました。この苦情主はPCR検査を断られたようです。

PCR検査の検体に「喀痰」を加えても,一人から採る検体が二種類から三種類になるだけです。検査を受けられる人が増える訳ではありません。PCR検査機をなぜ増やさないのか,という苦情ならまだ理解できます。当社には関係ありませんが。

そういう背景を知っているだけに,苦情主に対して「この電話って結局あなたのうっぷん晴らしでしょ」と言いたくなります(実際はそんなこと言いませんが)。検査を受けられなかった不満をぶつけられても「検査を断られてから2ヶ月たってもあなた元気にしているでしょ。検査は必要ないという医師の判断が正しいじゃないですか?」と反論したいところです(実際はそんなこと言いませんが)。

苦情対応では相手方の主張を真っ向から否定しません。できるだけ相手が自分の誤りに気付くように対応していますが,それでも限度があります。彼らは理屈で行動しているわけではないのです。マスコミに踊らされているだけです。それを自覚せず,平気で他者を攻撃する人々に恐怖と諦(あきら)めを感じます。

冬蜂の死にどころなく歩きけり (村上鬼城)

トラックバック

このページのトラックバックURL:
http://app.synapse-blog.jp/t/trackback/716622/34208526

「抗体はたっぷりあります」これで何が悪いのか? 風しんとコロナの差を参照しているブログ:

コメント

コメントを投稿