1ヶ月も誰とも話をしないとなると気がおかしくなっちゃうのよね
「1ヶ月も誰とも話をしないとなると気がおかしくなっちゃうのよね」 なじみの小料理屋のおばちゃんがそう切り出しました。
新型コロナウイルス騒ぎでこのお店は1ヶ月近く店を閉めていました。14日の木曜日に鹿児島県は緊急事態宣言が解除。15日の金曜日が営業再開初日となりました。
私も忙しい日が続きましたが,この日はぽっかりと仕事が空きました。まわりの連中は残業をしていますが,私は今日は急ぎの仕事がないからと割り切って定刻どおりに退社したのです。
あらかじめ電話しておいたこともあり,すでに前菜の野菜サラダが準備してありました。平らげると鯛の白子のオリーブオイル焼きにすりおろした生姜添え,同じく鯛の筋子のさっと煮,インゲンのゴマ和え,鯖の照り焼きが一切れが長皿に盛られて出てきました。
「私はね,どうしても今夜は鯛が食べたくて魚市場に行ったのよ。後でお刺身もだすからね。そうそう,アラもあるんだけど持って帰らない。塩焼きもいいし,大根と煮込んでも美味しいし,出汁(だし)にとるのもいいわよ。帰るときに持たせるから忘れないでね」
私がしゃべる暇もなく,一方的に話すおばちゃん。一人暮らしの上に,ショッピングに行きたくてもいつも行く山形屋や東急ハンズは長期休業。息抜きで野菜作りをしていてもやっぱり一人。コロナウイルスが怖いからといいながらも,誰とも会わない,誰とも話をしない生活はストレスがたまったようです。
キープの焼酎がちょうど切れたので「伊佐小町」を一本入れました。ここの常連さんがすすめていたとか。飲兵衛の彼の選択なら間違いないでしょう,と二つ返事でこの銘柄にしました。夕方は土砂降り。肌寒くなってきたのでお湯割りでいただきました。
おばちゃんの話題は7月の知事選になりました。「伊藤さんはなんで出るのかね。もう過去の人よ。三反園が許せないんだろうけどダメだよ。そして三反園。事務所開きに東京の国会議員を呼ぶなんて呆(あき)れたよ。県民には都道府県をまたぐなと言いながら自分のことは例外だって言うのかね。この二人には絶対に投票しないわ。で,残る二人のうちどっちがいいのけ。私,どっちも名前も考えも知らないの」
お約束の鯛の刺身も新鮮。最後はオムレツ。セロリと牛肉の細切れが具という珍しいオムレツでした。卵で包むことで味をやわらかくしているんだとか。これで料理は2500円。焼酎一本が2000円なので,全部で4500円でした。私はこれでお腹いっぱい。おばちゃんも久しぶりに誰かと話ができたということで満足そうでした。
おみやげに鯛の筋子の残りと冷凍したアラ,自宅で採れたレタス,そして親戚の遺品で扱いに困っていたロープタイを6本ほど持たされました。ロープタイなんておじさんがするものと思い,断ろうと思いましたが,考えてみれば私もおじさん。まあ,いいか。
お店をでると,まだ雨が強く降っていました。いよいよ梅雨入りかな。
おろかゆえおのれを愛す桐の花 (佐藤鬼房)
コメント