女性の髪と体が触れるくらい接近すると男は誤解します。
年度末はお別れの時期。今週月曜日に出勤すると私宛にメールが届いていました。送り主は3月まで当社で勤務していた30代の女性社員でした。
「ありがとうございました」というタイトルのメールを開くとこう書いてありました。
「私ができなかったことやわからなかったことを全部ひろっていただいてありがとうございました。私も上司であるあなたのようになりたいと思っていましたが,途中で挫折してしまいました。調整役として頑張っているあなたのお体のことが心配です。活躍を祈念します」
ざっと書くとこんなところでしょうか。
彼女は気に入らないことがあると勤務時間でも周囲に人がいても,かまわず私にくってかかるほど鼻っ柱の強い女性でした。30歳の独身。特に美人というわけでもなく,スタイルもいいわけでもありませんが,その一方でいつも明るい笑い声で職場の雰囲気を和(なご)ませてくれました。
私は寡黙な人間で,職場で雑談をすることはほとんどなく,彼女とは仕事の話しかしたことはありません。ましてやプライベートなことは彼女の体調管理など,管理職の責務として聞くだけ。
ただ,ときどき業務上わからないことがあると,私は専門職である彼女に教えを請いに行きました。そのとき私が持参した資料を見せると,彼女はいつも私の右隣に体を寄せ,私の方に頭を傾け,彼女の長い髪が私の右肩にかかり,彼女の左腕はいつも私の右腕にぴたりと接していました。
最初は驚きましたが,彼女は開けっぴろげな性格なので誰にでもそういう態度をとるのだろうと思い,私はそんな彼女の行為を受け入れて,いつもそのままの姿勢で彼女の話を聞いていました。
私とは20歳ほど歳が離れていて異性を感じさせる要素はまったくなかったのですが,いざ,こんなメールを読み,彼女とはもう会えないのかと思ったとき,なんだか急に寂しさがこみ上げてきました。
だからといってこの気持ちをそのままメールで送るとセクハラ親父みたい。それは嫌だと思い,私の気持ちを簡潔に箇条書きにしたメールを返しました。
「こちらこそお世話になりました。私はあなたともっと一緒に仕事がしたかった。新しい職場での活躍を祈ります。追伸,あなたと話をするとき,あなたの髪と体がよく私に触れていました。男は誤解しますよ(笑)」
私なりの精一杯の愛情表現ですが,彼女はどう受け止めたかしら? 彼女にそれを確かめる機会はもう二度と訪れないでしょうけど。
君を待つことなくなりて快晴の土曜も雨の火曜も同じ(俵万智)
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