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2020年1月 4日 (土)

歴史「を」学ばされ,歴史「に」学ぶ機会を奪われるのは人生の損失

「最強の教訓!世界史」(神野正史)を読みました。

著者は予備校で世界史を教えている講師。まえがきでこう記しています。「偉人達が口をそろえて言う言葉,それが歴史に学べです。嘆かわしいことに,現在の学校教育の現場では,歴史(用語)を丸暗記させることに終始しています。丸暗記は偏差値を上げるためだけに特化された訓練に過ぎないので,そうして得た知識は受験が終われば何の役にも立たない。そのため,多くの人は,学生時代に歴史(用語)を学んだことはあっても,歴史に学ぶ機会を奪われ,その悲劇に気付かない」

このことは,まさに私も同感するところです。歴史のエピソードの一つ一つに人生の指針となるべき知恵,経験を学ぶことができます。しかし,学校の歴史の授業では歴史的事件の概要や年代を教えるだけ。こんな授業はつまらないったらありゃしない。

著者は「逆境は飛躍の糧(かて)」としてナポレオンと劉備を,「天は自ら助くる者を助く」としてユスティニアヌス大帝と東郷平八郎を,「百戦百勝は善の善なる者にあらず」として韓信とハンニバルを,「戦術と戦略を見極めよ」としてビスマルクと上杉謙信を,「最大の危機こそ好機」としてミルティアデスとフリードリッヒ大王を,「方針貫徹か,転換か」で昭襄王とペタンを,・・・と,歴史上の人物が人生の岐路において,どのように振る舞い,どのようにしてチャンスをものにしたのか,あるいは失敗したのかを,エピソードを紹介し,教訓を導いています。

私が歴史の授業で学びたかったことは,まさにこの本で言い尽くしています。ところが中学校,高校の歴史ではこのようなエピソードを取り上げることはありません。なぜか? 答えは簡単。入試では出題されないからです。

私は歴史が好きですが,歴史の教科書の影響ではありません。小さい頃に親に買ってもらった伝記や司馬遼太郎などの歴史小説,塩野七生などの歴史エッセイを読んでいるうちに,興味をもつようになっていったのです。そこに描かれているのは歴史上の人物の一代記。一部は作者の想像も含まれているでしょうが,それでも物語として十分に楽しめました。

学校の歴史の授業が面白くないのは,教科書は知識の羅列に過ぎないから。そこに物語が存在しないからです。史記列伝のように,人物に焦点をあてて,その魅力的な生き方を授業で取り上げる方がよほど勉強になると思います。

さて,本書のことに戻ります。第一次世界大戦のヴェルダン要塞攻防戦でフランスの英雄となったペタン将軍が紹介されています。ペタンが勝利したのは縦深陣地戦術によってドイツ軍を包囲壊滅したから,となっているのですが,私は同意できません。西部戦線を消耗戦に持ち込んだのはドイツ軍。それが逆にフランス軍が包囲殲滅を企図したなんて初耳です。

惜しむらくはこの本には,これらのエピソードの出典が記載されていないこと。ペタンの戦術を確かめる術(すべ)がありませんでした。百田尚樹の「日本国紀」ではありませんが,きちんと掲載してほしかったなあ。そうですよね,呉座さん。この本にも出典がないから非難すべきですよ。ぜひ,朝日新聞のコラムに取り上げてください。 

シーザーを刺す星空の野外劇(辻田克己)

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