「打者が嫌がる投球論 投手が嫌がる打撃論」を読む
「打者が嫌がる投球論 投手が嫌がる打撃論」(権藤博,二宮清純)を読みました。
私はプロ野球が好きで小学生の頃よくテレビ中継(当時は巨人戦のみ)を見ていました。特に好きだったのが中日ドラゴンズ。当時は近藤貞雄が監督。一番田尾(ライト),二番平野(センター),三番モッカ(サード),四番谷沢(ファースト),五番大島(レフト),六番宇野(ショート),七番中尾(キャッチャー),ピッチャーは都,郭源氏,鈴木正孝,三沢,リリーフが牛島。そろっていました。
このときのピッチングコーチが権藤博でした。今ではあたりまえの先発,中継ぎ,抑えの投手分業制も,このときの近藤貞雄,権藤博が確立したことだと,後に解説者になった近藤貞雄のエッセイで知りました。
近藤も権藤も管理という言葉が大嫌い。同時流行していた西武ライオンズの管理野球に反発して,選手を大人として扱う野武士野球で一世を風靡しました。権藤博は2年連続で30勝をあげた,今では信じられないような成績を残した投手。そのときの無理がたたって,投手生命はあっという間に終わりました。近藤監督も怪我を押して投球を続けた根性のある元投手だからか徹底していました。
しかし,選手を大人として扱っても試合の指揮ではまた別のようです。近藤監督は二番平野に徹底して送りバントをさせました。また,ツープラトンシステムとして,打撃力はあるものの,守備に難のある宇野やモッカをスタメンとして起用し,リードした終盤は守備固めの選手に交代させる戦法をとりました。
そして権藤もすごい,彼は中日の後は近鉄,ダイエー,横浜でコーチを歴任後,横浜の監督としてリーグ優勝,日本一に輝きました。そのときの話も本書の中に出ていますが,権藤はチームのピッチャーが投げる一球一球にベンチからサインを出していた!!!! これには驚きましたねえ。
もちろん,細かくサインを出しているわけではありません。アウトサイド,インサイド,高め,低めなどの大まかなものです。そもそも,ピッチャーは細かいコントロールは必要ない,それよりも球威や間が大事だというのです。本書もテレビ解説者が常々いうような「ヒットを打たれたくないなら,低め」や「アウトサイド」という考えを真っ向から否定しています。
清原がバッティングを崩したのもインサイドを打てたから。そして今やボールを打ち上げる打ち方が主流。低めのボールよりもピッチャーはインサイドや高めにボールを投げるべきだと。
非常に理論的で痛快な対談です。プロ野球ファン(特に50歳前後)であれば,近鉄のブライアントや横浜の佐々木など,往年のプロ野球選手が続々と出てきますので,当時の記憶がよみがえってきます。
それにしても本書を読んでつくづくパ・リーグファンでよかったと思います。私は南海ホークスが福岡ダイエーホークスになったときから,完全にパ・リーグのファンになっていました。あのころのパ・リーグは個性的な人材がそろっていたと両者が語り合っていました。うんうんそうだったよな。そして今もその伝統が続いてるんだよな。実感します。
伊良部の馬鹿が伊良部の馬鹿が環状線はつらい電車です(高瀬一誌)
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