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2019年10月

2019年10月28日 (月)

鳥インフルエンザと豚コレラ この対応の違いはどこからくるのか?

出水平野に今年もナベヅルが飛来しました。最近は1万を超える羽数。現地に行くとギャーギャーとツルが騒いでいて,観光客とあわせて大変な賑わいになります。

この季節,戦々恐々なのが周辺の養鶏農家。出水市にはマルイ養鶏という鹿児島でも大手の養鶏組合があります。出水市では鳥インフルエンザが過去に発生したことがあり,そのときは鶏舎まるごと殺処分。渡り鳥が多数飛来する出水市はそれだけ鳥インフルエンザにかかるリスクも高いのです。

そしてツルが1万羽を越えるようになってからよく言われるのが,感染症によるツル絶滅説。ツルがこれだけ集団で越冬する場所は世界でここしかなく,感染力の強いインフルエンザが発生すると希少なツルが死滅しかねない。だから越冬地を分散させようと努力している人々もいるぐらい。

ところが,これらの善意の人々の多大な努力むなしく,ツルはあいかわらず出水平野で冬を越します。過去に高病原性鳥インフルエンザで死んだツルがみつかったこともありましたが,それでもせいぜい数十羽。百を超えたことはありません。野生はそれだけ病気に強いといえるかもしれませんが,今でも絶滅説を唱えて無駄金を使うひとがいるのはなんだか滑稽です。

話は変わって,豚コレラ。岐阜県から西へ東へ広がっています。野生のイノシシが感染を広げていき,豚舎で豚コレラが発生したら殺処分。こちらも相当大変です。

豚コレラに感染すると子豚の致死率は100%に近いとして,相当恐れられています。イノシシが豚舎に近づかないように物理的に柵を設けたり,豚に予防接種を打ったり,ワクチン入りのエサをまいたりと様々な対策をとっているようです。

でもこの報道で不思議なことがあります。野生イノシシに感染が広がっているということは,イノシシが絶滅する危険性も高いのですが,そういった指摘がありません。まあ,絶滅危惧種のツルと全国あちこちにいるイノシシと一緒にするなってことでしょうけど。

日本全国で過疎化が進展し,野生のイノシシやシカが人家に来るようになり,農業被害が甚大だという報道がこれまでありました。だから駆除した獣畜のジビエ料理も盛んに取り上げられています。こちらへの豚コレラの影響はどうでもいんでしょうか? これまで獣害を受けていた農家にとっては喜ばしいとか,ジビエ料理関係者にとっては大打撃とか。

表があれば裏があるように,物事は一面だけでは把握することはできません。被害者を取り上げることが視聴率を上げる,販売部数を増やすコツだから,どれもこれも被害者が養豚業者になるんでしょうか。ひねくれている私は,こういう金太郎飴型の分析がとても不快です。

もし豚をかくのごとくに詰め込みて電車走らば非難起こるべし(奥村晃作)