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2019年8月15日 (木)

報道されない非モテの存在 「インセルの反乱」と「大きく黒い犬の問題」

今日はお盆。台風の影響で悪天候。家にとじこもり「上級国民/下級国民」(橘玲)を読みました。

少子化問題がクローズアップされて久しくなります。50歳での生涯未婚率が女性が1割、男性が2割程度います。どうして差があるかというと男性が2回以上結婚する、つまりモテる男性が存在するからです。

橘玲はいつものように進化論で読み解きます。

男性は子孫をたくさん残すには多くの女性とセックスすることが合理的です(倫理的には問題があるという批判はここではしません)。一方女性は、出産・育児に時間とお金がかかります。そうなると頼りになる男性とずっと一緒にいることが合理的です。つまり男女で子孫を増やす方法が異なるため、未婚率にも差がでてくるというわけです。

もともと一夫一妻制とは近代以降にヨーロッパで始まった極めて特異な制度です。それが植民地支配とともに世界に広まりました。逆に一夫多妻制は、女性の権利を侵すとフェミニストから攻撃されて少数派です。ところが自由恋愛の社会はちょっと違いますよね。結婚しなくてもセックスはできるわけですから。

ここまでの話は「もっともではないか」と現代の人は思うでしょう。しかし、人類に本来備わる生殖行動と現実のギャップが恐ろしい歪(ひず)みを生じさせています。自由恋愛が認められている社会では、魅力的な男性は上位20%。そこに女性の80%を占める魅力的な女性が群がります。そうなると男性の80%には魅力のない20%の女性から選ばざるをえません。非モテにとってはつらい社会です。その結果、非モテの男性は性愛から排除されることで人生をまるごと否定されたと受け止めてしまうのです。経済的にゆたかになれば女性と恋愛(結婚)できるチャンスがあります。でもそれもなければ女性とつきあう機会すらやってこないでしょう。

恋愛と縁のない若い男性を日本では「非モテ」、アメリカでは「インセル」と呼ばれます。そのアメリカではインセルによる無差別大量殺人が頻発しています。これは韓国でも同じ。日本でも記憶に新しい大量無差別殺人は、若い独身男性(たぶん「非モテ」)による事件です。そしてネット世界では、彼らは「神」ともてはやされているそうです。

しかし現実社会ではまったく話題になりませんよね。非モテは社会から黙殺されています。評論家の御田寺圭はこれを「大きく黒い犬の問題」と名付けています。捨て犬の保護施設では、毛並みの明るい、あるいは小柄な捨て犬は比較的容易に引き取られますが、誰にも関心を示されない「大きく黒い犬」のほとんどは殺処分されます。現代社会では「非モテ」は、この「大きく黒い犬」だというのです。

非モテの彼らによる殺人事件が発生しても、報道ではできもしない加害者の動機解明や、被害者のお涙ちょうだい話にテーマがすり替えられています。そして先日の選挙報道でも、争点は「年金」や「憲法」という若い独身男性には無縁のことばかり。マスコミは団塊世代の関心の高いことに注目してばかりで、「非モテ」の問題は完全に無視しています。

学生時代に彼女が一度もできなかった「非モテ」の私は、この本にとても共感できました。何度も挫折したものの就職でき、そこで知り合った女性と幸い結婚でき、娘も生まれました。しかし、彼らとの差はほんと些細(ささい)なところではないかと思えてしかたがありません。ちょっとした差がこんなに開いてきたのだとすれば、私の幸運に感謝するしかありません。

愛人でいいのとうたう歌手がいて言ってくれるじゃないのと思う(俵万智)

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