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2019年6月

2019年6月26日 (水)

LGBTにも法的な保護がある 戸籍上も性別変更が可能です

法律関係の仕事をしていたときに、戸籍謄本を見る機会が多々ありました。相続関係を確認するためにはどうしても戸籍を追っていく必要があります。

ある日、その中に「性別変更」との記載があることに気づきました。家庭裁判所の判決によって「長男」が「長女」に。えーーっと思わず声を上げてしまいました。

法律を詳しく調べてみると、「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」の第三条にある要件を満たしていれば、家庭裁判所の判決によって戸籍上も性別を変更できます。

その要件とは、1 二十歳以上であること。 2 現に婚姻をしていないこと。3 現に未成年の子がいないこと。 4 生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。5 その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。の5つです。

この5要件をすべて満たしていれば、戸籍上も男が女に、女が男になることができる。LGBTという言葉を耳にするようになりましたが、法律上もこのように保護されていることを初めて知りました。この法律ができたのは平成15年のこと。もう15年前の出来事です。

LGBTは私なりの簡単な理解では、Lはレズ(女性の同性愛者)、Gはゲイ(男性の同性愛者)、Bはバイセクシャル(両性愛者)、Tはトランスジェンダー(生物学上の性と心の性が一致していない) です。

ところが、ナショナルジオグラフィックの特集にあったように、LGBTにQ(クエスチョン)がつくほど性の意識は多様化しています。同誌の事例として、体は男性、心は女性、性的嗜好は女性、つまり外見上は男性が女性を好きになっているので普通は違いに気づきませんが、当人は自分を女性だと思っているからややこしくなります。自分自身の性をどう認識しているか、男性と女性のどちら(あるいは両方)を好きになるか、でいろいろなパターンがあることを同誌を読んで知り、衝撃を受けました。

一緒にこの本を読んでいた娘は、学校でLGBTのことを教わったと話していました。実社会でも8%程度はLGBTだとか。そうなると40人のクラスに2人程度はLGBTであってもおかしくありません。娘はそれをごく当然のように話をしていました。

私は海外の人と文通で交流をしていますが、数年前、台湾から届いた手紙にはLGBTに強い関心を持っているとのコメントが添えられていました。最近、台湾では同性愛者の結婚も認められるようになったとの報道に接し、アジアでも性をめぐる認識が大きく変わりつつあることを実感しました。

一方、日本では同性婚を認めない、あるいは結婚するときに夫の姓を名乗ることが一般的なことなど、日本はLGBTに対して冷たい対応ばかりだと認識していましたが、戸籍上の性別も変更できるようになっているなんて。自分が気づいていないだけで、少しずつではありますが対応してきているんですね。

ちなみに、結婚によって夫婦同姓とする戸籍制度は明治になってからの話。「日本国紀」(百田尚樹)によると、それまで日本では夫婦別姓だったと知って驚きました。同書には北条政子の事例が紹介されていました。政子は源頼朝に嫁いだわけですが、源氏の直系が途絶えた後に起きた承久の乱のときに、御家人に対して檄を飛ばしたことは有名です。彼女は「北条」政子。嫁ぐ前の姓のままですよね。そういえば日野富子も姓はそのままです。

私は体も心も男。女性が好きです。とても男性とセックスしようとは思いません。LGBTの人と理解し合えるか自信はありませんが、現実の社会ではただ気づかないだけで、普通に接しているのかもしれませんね。

さかのぼってあなたを否定するわけじゃないけど煮えすぎている白菜(俵万智)