春秋戦国時代をドラマ化した女の残酷物語とテレビ欄の記事との差
苦労を積み重ねた後の成功物語は見る者を引きつけます。たいていはその主人公は幸福な身の上であることがスタートです。一度どん底に落ちて、そこからはい上がっていくストーリーが多くの人の共感を呼ぶのでしょうね。
中国ドラマを欠かさず見ている妻が、最近は「ミーユエ」を見始めました。時代は春秋戦国時代。楚の国に生まれたミーユエが、さまざまな苦難を乗り越えて秦の王妃となるストーリーです。
今日の話は、楚の懐王に献上された魏美人が、懐王の妃の妬みを買い、策略に陥って鼻を削がれ、処刑される話だったと妻が教えてくれました。このドラマの第1回放送では、大の字になって手足をそれぞれ牛につながれた罪人の四肢が引き裂かれるシーンがありました。さすがに削いだり、引き裂かれたりする映像はありませんが、中国ドラマ(というか中国の刑罰)は残酷ですね。
ドラマを見ていた妻が「楚の懐王ってどんな人?」と訊くので、久しぶりに「史記列伝」(司馬遷:しばせん)を開き、屈原の章を読んで聞かせました。懐王は秦に騙されて幽閉され、隙をみて趙に逃げたものの亡命を拒否され、最終的に秦で最後を遂げます。暗君の代表的存在です。ちなみに屈原は懐王の有能な忠臣。周囲の讒言(ざんげん)によって解任され、最後は河に身を投げた人物です。
「史記列伝」を書き残した司馬遷も讒言にあって宮刑(男性器を切除する刑罰)に処せられ、その後は宮廷を去って執筆活動に専念した人物。それだけに、同じ境遇にあった屈原に対する入れ込み方は半端ではありません。身を投げるところの描写は、切々としたもの悲しさがあります。
今朝の新聞のテレビ欄、夜7時30分からNHK総合では「プロ野球 ソフトバンク×ロッテ」が放送予定とありました。その副題が「若鷹軍団の快進撃が止まらない!▽日替わりで活躍中の若鷹軍団!今宵のヒーローは果たして誰に?」だから笑わせます。
おととい、昨日とサヨナラ負けだったのに。まあ、それはともかくと思い直してテレビをつけると、試合は4回裏でロッテが8-0とリード。すでに勝負ありだったので5秒で消しました。
新聞の原稿は前日の夜が締め切りなので仕方がないとも言えますが、あまりにも現実との差が大きすぎる。この脳天気な副題を書いた記者は、よほど狂信的なホークスファンか、プロ野球に全く関心がなく、ただ九州地区の視聴率を引き上げることしか考えていない人としか思えない。
司馬遷と比較するのもおこがましいですが、現実と乖離している記事は滑稽です。
有名な歌人、石川啄木も心の叫びをいくつもの短歌に託しています。これって絶対に教科書には掲載されないでしょう。でも、カラ元気の振りして上滑りするよりずっといいと思います。
どんよりとくもれる空を見ていしに人を殺したくなりにけるかな(石川啄木)
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