奇妙な孤島の物語 私が行ったことのない、生涯行くこともないだろう50の島
「奇妙な孤島の物語 私が行ったことのない、生涯行くこともないだろう50の島」(ユーディット・シャランスキー)を読みました。
見開きの左側に島の地図(地名は領有する国の言語)、右側のページにその島の国、人口、面積、緯度経度などのデータと、代表的なエピソードが記されているシンプルな本です。とにかく島の地図が美しい。断崖絶壁の険しい島もあれば、珊瑚の輪(環礁)も。
エピソードも秀逸です。探検隊や観測所職員しかいない島が多いのですが、それ以外にも、新生児が次々と死んでいく島(セント・キルダ)、未確認飛行物体が出現した島(トリンダージ島)、人肉食の噂のある男2人だけの島(サン・ポール島)、島(環礁)全体がアメリカ軍の秘密基地(ディエゴガルシア島)、島に残された60人の奴隷が15年後には8人となっていた島(トロムラン島)、フランスの田舎町で生まれた男が夢の中で学んだ言葉を本当に日常語としていた太平洋の島(ラパ・イティ島)、水爆実験の島(ファンガタウファ環礁)、フリーセックスの島(プカプカ島)、ユートピアを夢見てヨーロッパから移住したものの次々と失踪し、最後は一人となった島(フロレアナ島)、島民の10パーセントが全盲という色覚異常の出現頻度が異常に高い島(ピンゲラプ環礁)、木一本ない自然破壊の島(イースター島)、島の男達が女性や子供を虐待することが慣習となっていた島(ピトケアン島)、島でたった一人の男性である灯台守が王となり、女達を愛妾にし、強姦し、殺し、2年近く支配した島(クリッパートン環礁)、財宝探しによって島中が堀り起こされた島(ココ島)、満潮時の海抜はわずか1mしかなく地球温暖化の影響で海没寸前の島(タウー島)、・・・。
残念ながらこの本の孤島のほとんどは楽園ではなく、笑えないエピソードがほとんど。人が生きていくことを拒絶する過酷な自然環境、そして外部の目が届かないために凶暴な人間性が露わになる恐ろしさ。美しい島の地図との対比がとても印象的でした。
「クロッカスが咲きました」という書きだしてふいに手紙を書きたくなりぬ(俵万智)
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