歴史の授業で教わる十字軍とは何だったのか?
「十字軍物語2」(塩野七生)を読みました。中学生のとき教えてもらった十字軍の歴史とは、①1096年(十字クロスと語呂合わせで覚えましたね)の十字軍遠征によりエルサレムをイスラム世界から奪還、②その後の十字軍遠征はすべて失敗に終わった、の2点。キリスト教徒イスラム教の宗教戦争との印象です。
しかし、この本には遠征軍の話はわずか。ほとんどは第1次十字軍が創設したエルサレム王国などの十字軍諸国とイスラム世界との戦いを描いています。歴史の教科書にはない(少なくとも私の記憶にはありません)ことです。
この本を読んで初めて、中近東に城塞が多く建設された理由、テンプル騎士団、聖ヨハネ病院騎士団が創設された経緯を知りました。これらの存在とイタリアの都市国家が東地中海に制海権を確立した結果、エルサレム王国は100年近くも続いたのですね。
教科書は歴史の主要な出来事しか教えません。「なぜ(理由)」と「どのように(経緯)」があって初めて、私の前に「歴史」がいきいきと姿を現します。しかし、教科書で教える歴史にはこれらが欠落していてまったく面白くありません。
塩野七生が学会からどういう評価を受けているのか知りませんが、彼女の見解は非常にわかりやすく、面白い。だからこそ歴史を脳裏に刻むことができます。歴史から学ぶことができます(「歴史を学ぶことができる」ではありません。念のため)。
朝日新聞に百田尚樹をぼろくそにけなす評者がいます。先月は室町幕府足利義満の話でした。彼の主張は「小説家の百田は独自の解釈で学会の説の一部を変質しておきながら、それを伏せて学会の説として自分の本で紹介するのはけしからん」というもの。確かに剽窃(ひょうせつ)や歪曲(わいきょく)はあってはならないこと。しかしこの評者の論点は「小説家と学者は別の人種」に尽きます。塩野七生もこんな評価を受けているんでしょうか。
あまりりす妬(ねた)みごころは男にも(樋笠文)
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