シンギュラリティビジネスを読む
「シンギュラリティ・ビジネス」(齋藤和紀)を読みました。
私は何でも読む方ですが、この本は父がこれを読めと何度も勧めるので仕方なく読んだ本です。シンギュラリティとはテクノロジーの進化スピードが無限大になる現象のこと。カーツワイルが提唱した概念でこれが2045年に起きると予言しています。
確かに進化のスピードが加速度的であるのは認めますが、にわかには信じられません。というのもその例としてあげてるのがソーラーエネルギー。今は天候に左右される不安定な太陽光パネルですが、これがなんと太陽系全体に降り注ぐエネルギ-を調達できるレベルになり、事実上エネルギーコストがゼロになるとか(太陽を手に入れるに等しいですね)。もうひとつは3Dプリンター。今は樹脂で成型しますが、これがなんと原子レベルでできるとか(もう神様のレベルですね)。
すごい。太陽のエネルギーをまるごと手に入れて悪用すれば地球は簡単に吹き飛びそうです。そして、原子レベルのコピーができれば地球も簡単に再生できそうです(この本にはこんな意地悪なことは書いてありません、念のため)。
何の記事か忘れましたが、アメリカの人形劇「サンダーバード」のことがでていました。この番組では様々な人類の未来(最先端テクノロジーの成果品)が描かれていますが、ここには電子メールが存在していないことに注目し、未来予測の不完全性の証左としていました。ファン目線からすると少々難癖みたいな気もしますが、こういう批評も私は好きです。
ところがこの本の著者は、アメリカ発の未来に関する諸説の中から、日本人が驚きそうなことをかき集めているとしか思えません。先に挙げた事例以外にもいろんなことが紹介されているのですが全くまとまりがないのです。そして、先に紹介したサンダーバード批評のような第三者的な視点が欠けています。
デジタル化、潜行、破壊、非収益化、非物質化、大衆化から構成されるエクスポネンシャルな進化論はもっともらしいのですが「何かが抜け落ちている」のです。うまく言えないけれど。これに気づかずにもろに影響されている父が心配になります。幸い、最近はよく物忘れをするので、この本のことも忘れてくれるといいのですが。
外遊び終えたズボンを洗うとき立ちのぼりくる落葉の匂い(俵万智)
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