社会人になるための見えないハードル
数日前、会社のパート採用の面接試験で面接官を担当しました。
応募するのはたいていは子育てを終え、あるいは大きくなって手を離しても大丈夫になった女性。こういう人たちはかつて正社員として研修や実務を経験しているので、しばらく一緒に働けばすぐに職場環境に慣れてきます。即戦力として重宝しています。
報じられているように、ここ数年は人不足が深刻で、我が社でも1人パートを採用するのも四苦八苦。3人募集しているのに1人も応募がなくて、知り合いに声をかけて回ったこともありました。今やほとんどが1人応募。この2年あまり、面接は形ばかりの即採用決定でした。
ところが今回、2人の枠に3人の応募がありました。うち2人は過去に当社で経験のある40代の女性。二人とも人柄がよくて仕事でも頼りになりそうでした。
そして残る1人は二十歳の女性。面接室に黒いスーツで現れた彼女は、緊張した面持ちで席に座り、ひとつひとつこちらからの質問に答えていきました。誠実であろうとしているのでしょうが、答えぶりがとてもたどたどしくて不安げな表情。客観的に評価をすれば、この女性の評価はダントツで最下位です。
必要な質問を終えたあと、当社の仕事の内容を知っているのか、本人ではなくても知り合いに当社の仕事のことを知っている人はいないのか尋ねました。また、面接の経験や面接のハウトゥー本などを読んだことの有無も。彼女の答えはすべてノー。
社会経験が乏しいのは若い人には当たり前。しかし必要な情報を全く持たないまま挑戦するのは無謀であるということですら、彼女は知らなかったのでしょう。20代の私がそうだったように。
最後に「とにかくチャレンジし続けてください。経験を重ねることがあなたの力になります。これから何度も当社はパート採用をしていきます。頑張ってください」と声をかけました。おそらく、今回応募が普段のように1人だったら私は彼女を採用していたでしょう。彼女も職場も苦労するかもしれませんが、この経験が彼女にとって次のステップにつながると思うから。そういう意味で彼女には運が味方しなかったのかもしれません。面接終了時、彼女は泣きそうな顔をしていました。
採否の結果は翌日伝えました。私も若いとき、不採用の結果を聞いたときのショックは相当。でも、今はここで仕事をしています。彼女が立ち上がり、挑戦し続けることを期待しています。
十七歳八ヶ月の履歴書は三度まちがえられ完成す(俵万智)
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