「先生、日本銀行は国債を買ってるみたいですけど戦争にならないの?」
日本の国家予算は100兆円を越えています。そのうちの約半分は国債、すなわち借金です。一方、歳出も国債の償還(借金の返済)が約半分を占めています。日本は高齢化にともない社会保障費(年金、介護、保険)が急増。消費税増税で対応しているものの、借金漬けであることは周知の事実です。国民のほとんどはそれをなんとも思っていませんが。
この国債を引き受けているのはひと昔前はほとんどが銀行や証券会社などの金融機関でした。私たちの預金を元手に国債を買い、利回りを収益としているわけです。
ところが、いまでは日本銀行が国債を購入するようになりました。2020年末の日銀のバランスシートを見ると、国債保有額は過去最高の532兆円です。国債の発行残高は1000兆円。なんと半分以上は日銀が引き受けているのです。
私が中学生の時、社会の勉強(公民?だったかな)で「日本銀行は国債の購入は禁じられている。日銀は貨幣をいくらでも発行できるので国債もいくらでも買えるから。戦前、日銀がこのように国債を大量に引き受け、実体経済以上に軍事費を支出した。その反省に基づいて現在の日銀は国債を購入しないのです」と教えられましたけど。社会の先生の勘違い?
「中央銀行:金融安定を護る『最後の防衛線』」(中曽宏 前日本銀行副総裁)を読みました。
日本銀行は、これまでのさまざまな経済危機において、金融機関等に資金を投入し、日本経済が破滅するのを防いできました。
小泉内閣時代の金融危機では、山一證券などの金融機関が多数倒産しましたが、日銀は預金者を全額保護するために公的資金でその損失をカバーしてきました。この当時、倒産するような経営がいい加減な銀行等に公的資金を使うことは金融機関のモラルハザードを招くとマスコミは批判してきました。
しかし、金融機関を潰してしまうと損失は二度と戻りません。一方、銀行を存続させるために資金を投入した場合、経営が回復すると投入された公的資金を上回る金額を回収できます。結果的にはこのことによって国民の負担は生じなかったことになります。
実際、リーマンショックなど対応でも、結果的に破綻処理よりも救済処理のほうが国民負担が小さくてすみました。
振り返ってみると、私たちは「放漫経営をしていた銀行には破綻処理がふさわしい」と思っていませんでしたか? もう忘れた? こわいことをよく「忘れた」ですませられますね。
中曽の小論は最後に「1990年代の金融危機のとき、多くの金融機関が破綻寸前に追い込まれながら、職員は統率を失わず、業務を続けました。現金紛失のような事故はほぼ皆無でした。現場の職員を駆り立てたのは、金融人としての意地と誇りでしょう。こうした高い技量と職業倫理感をもつ人材こそ、日本の金融機関の最大の経営資源です」と結んでいます。
どうやら中学校の社会の先生は、戦争の歴史にとらわれすぎて、金融機関の現場を知らなかったようです。
奥村は源泉徴収でボーナスの四分の一を国に取られた(奥村晃作)
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