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2022年1月22日 (土)

彼女が真珠のネックレスをつけてきた夜に

先週、職場の同僚とふたりで飲みに行きました。彼女は結婚していて、私と同じ50歳。私と同じように2人の子どもがいます。

彼女は毎晩、午前零時まで起きていて黒糖焼酎を飲んで過ごすのが好き。一方の私もひとり飲みが多いので、話し相手でよければと、しばしば飲みに誘っています。

この日は冷え込んだこともあり、鍋でもつつこうかという話になりました。ベトナム料理屋に入ってオリジナルの鍋を注文。私はベトナムのビールを、彼女は40度もあるスピリッツを注文しました。

彼女はコートを脱ぎ、セーター姿になりました。そのとき真珠のネックレスをつけていたのに気づきました。「はて、彼女ってネックレスなんてつけてたっけ?」と気にかかりましたが、それは口に出さず、お互いの仕事や家庭での出来事を淡々と語り合いました。彼女に笑顔がないのが気になりつつ。

お店の人がオーダーストップの時間ですと告げるまで、私と彼女以外、お客さんはゼロ。貸切状態でした。この日は金曜日なのに。オミクロン株の影響なんでしょうかね。

「もう1軒行く?」と声をかけると、彼女も「そうね。あんまり飲んでないからね」と応じてくれました。2軒目は近くの日本酒専門店にしました。

この店に入ったのは午後9時半をまわっていましたが、こちらもお客さんはゼロ。静まり返っていました。私と彼女は気になった日本酒を1杯ずつ注文。表面張力で盛り上がった冷酒。ふたりとも酒器をカウンターにのせたまま、前傾姿勢になって口をつけ、日本酒をすすりました。

「おいしいね」と彼女は隣の席で前を向いたままつぶやき、「ねえ、『にいさんごうごう』って知ってる?」といって、その番組を録画していたスマホを見せてくれました。

「にいさんごうごう」は深夜の11時55分から5分間、NHK教育で放送されている番組。見せてくれたのは東京タワーとスカイツリーが同じ高さに見える場所をつなぐと円になるという「アポロニウスの円」を解説した内容でした。

30分ほどそんな他愛もない話をしたあと、帰ることにしました。帰り際、私は「ねえ、私は毎週1,2日はひとりで飲んでいるんだけど、あなたもいっしょに誘っていいかな?」と次の約束を持ちかけました。「毎週は困るけど、そうでなければいいわね」 彼女は表情を変えずにそう答え、そのままふたり手を振って別れました。

この日、私は彼女と3時間ほどいっしょに過ごしましたが、私はそのほとんどの時間、彼女の真珠に視線を向けていました。なぜなのか私にもよくわからないのですが、男の性(さが)なのか、彼女が意図的にそうしたかったのか。

私にも秘密はあると思う午後真珠の白に爪を塗りつつ (俵万智)

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