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2022年1月

2022年1月27日 (木)

日本の半導体産業が衰退している 世界の半導体事情

『「NO」と言える日本』とは、日米貿易摩擦の中ソニーの会長である盛田昭夫と政治家である石原慎太郎によって共同執筆された1989年のエッセイです。当時の日本はバブルの絶頂期。日本経済がアメリカ経済よりも強いという自信をもっていた頃です。

この本のなかで石原慎太郎が、「日本は半導体で世界のシェアを占めている。半導体は産業の米といわれてる。この分野に秀でていることは日本の強みだ」という趣旨を書いていたことを今でも覚えています。

しかし、今や日本の半導体産業なんてまったく耳にしません。自動車の納期が遅れているのは半導体の世界的な供給不足によるものと報道されています。熊本にできる半導体工場も台湾の企業。30年以上前には圧倒的に強かった日本の半導体産業はどうしちゃったんでしょう。

小論「半導体戦略」(黒田忠広)を読みました。

令和3年6月に経済産業省が半導体戦略を発表していますが、このなかに「日本の凋落」という資料があります。それによると1988年に50パーセントあった日本企業の世界シェアが、その後坂道を転げ落ちるように低下して、今では10パーセントになっているとか。

この30年間、世界の半導体は年率5パーセントを超える高度成長を続けましたが、日本はまったく成長できなかったことをあからさまにしています。

小論を読むと、半導体産業では熾烈な技術革新が起きていることがわかります。

最初に起きたことは専用チップ時代の到来でした。

日本がシェアを圧倒していた頃の製品は「汎用チップ」という、どの産業でも使える製品を大量生産することでした。ところが爆発的に増大するデータをAIで処理する現代では、膨大なエネルギーが必要になります。そこで個々のメーカーは自社専用チップの開発に取り組むようになりました。汎用チップの無駄な回路を削ぎ落とし、エネルギーを桁違いに節約できるようにです。

さらに技術革新が起きています。ひとつがノイマン型(情報の逐次処理)から神経回路網(情報の並列処理)へ。もうひとつが微細化(情報の移動距離を平面上で短くする)から3D集積回路(情報の移動距離を上下の階層移動)へ、です。

日本はこれらの世界的な技術革新のなかで、シェアを失っていったのですね。

10年ひと昔といいますが、30年も経つとかくも競争力を失ってしまうのでしょうか。日本の技術はすばらしいというテレビを見てはマスターベーションを繰り返している国民をよそに、日本は確実に衰退の一途をたどっているようです。

かきくらし雪降る国を思えども雪降るなかに人は生きたり (柴生田稔)